応援物資
「‥‥‥分かった。私なりに覚悟はしていたけど。今現状はそれ程酷いの?」
「ああ。有紀が思っているより酷い。来なければ良かったと後悔するかも知れないぞ。それでも行くんだな」
真剣な有紀の表情に俺は
「毎日の連絡は朝がいい。勿論そっちのだ。夜は物騒だし夜の攻撃って多いんだ。だから、明るいうちに声が聴きたい」
俺は有紀にそっと口づけて言う。有紀も俺の首に腕を回して言う。
「マルクの体験した事を私も頑張ってみる。きっと泣きそうになる位の事もあるだろうけど、マルクの声を聞いたら頑張れる気がするの」
有紀を抱きしめながら、
「そうか。無理はするなよ。泣きたい時は電話越しでもいいから泣いてくれ。俺はその気持ちを分かってやれる。沢山悲惨な現場をこの目で見て来た。それを耐えろとは言わないし我慢をするなとも言わない。本当にやれる事は少ないんだ。この日本の医療の様に恵まれていない土地で悩む事も多いだろう。だが、有紀。その手で救える者はいるんだ。現場にはナースもボランティアもいる。しっかり英語を学んでこい」
「まあ! マルク。それではまるで私の英語力がないみたいないい方じゃない!」
「有紀の英語は優しいんだ。向こうに行ったら驚くぞ。喧嘩するなよ。それ位の罵声が飛び交うからな」
「そうよね‥‥‥pleaseなんて優しく言わないわよね」
「そうだ。分っているなら大丈夫だな」
二人で額を合わせて互いに笑顔で言う。
「幸運を」
♢♢
ところで、何故俺はここに呼びだされているんだ? 目の前にはこの病院の会長がいる。隣には院長がいる。二人で俺を見る。
「ドクターマルクス。君当てに沢山の物資が来ているのだが。何とかならんか? 倉庫には入らないから近くのドームに搬入して貰ったのがだ‥‥‥そこからもクレームが来ていてな。入りきらないから溢れて困ると」
そういう事か。何度か講義したからなあ。全国から集まっても可笑しくない量だろう。これは軍に頼もう!
「解りました! 今からアメリカ軍へ連絡して空輸して貰いますよ。ヘリの輸送費とかは気にしないで下さい。俺が責任を持ってあの物資を送ってきますから!」
その言葉に二人の顔が固まる。
「‥‥‥アメリカ軍!」
「日本は紛争地域には行けないでしょうから、アメリカ軍なら大丈夫です!」
「‥‥‥そういう事ではなくてだね‥‥‥軍を動かすとなるとそれなりの手順がいるだろう? と言っているんだよ。それに急に来られても誰が対応するんだ?」
とオロオロしている。
「俺が全てやりますよ。どの国でもやって来ましたから。日本だと自衛隊ですかね。荷物の運搬を手伝ってもらいましょう!」
二人はあんぐりしている。その場で俺はアメリカ軍にいる俺の兄マイキーに連絡をする。
「兄貴。悪いがまた、頼まれてくれ」
「またか。それはいいが、何処へ持って行くかは、こっちで決めさせてもらうぞ」
「いいさ、そのへんは軍事利用してくれても構わないよ。物資が届けば俺は何も望まない」
「オーケイ! 日本の自衛隊にも俺から連絡しておいてやるよ。また、沢山あるだろう?」
「沢山あるよ!」




