ヴァンパイアの弱点
「どうだった?」
有紀が心配そうに言う。そっと言う。
「大丈夫だ。アイツはヴァンパイアだぞ。すぐ回復する」
「そうだよね。心配したわ」
「だが、俺達は銀製品に弱い。触ったりする事に問題はない。だた、俺達にも急所はあるんだ。そこを純銀製品の物でその部分を突かれれば、命は危うくなる」
「そう‥‥‥なんだ」
有紀の瞳が泳ぐ。不死身だとでも思ったのか? 不死だがな。
「今日は疲れた。帰るよ」
確かに今日は休みだったからな。本当に疲れたよ。和也は明日には回復しているだろうが、このまま患者のふりをしていて貰おう。
「私も一緒に帰るわ」
と帰り支度を始める。
「まだ就業時間じゃないのか?」
「貴方を一人にさせられないもの」
医局に居た他のドクター達の視線が温かい‥‥‥。俺達の仲は公認ってやつか。それなら一緒に帰るか。
家に帰ってシャワーを浴びてソファーに寝転ぶ。
「ねえ。聞いてもいい?」
「聞きたい事は話すよ。紅茶を入れてくれ」
「うん!」
ダイニングテーブルに座り直して有紀と向き合う。
「有紀。先に言わせて欲しい」
「いいわよ」
「眷属についてだ。和也は俺の眷属になった。元は母マリーの眷属だが、血縁関係にいる者の眷属を従える事が出来るんだ。マリーはもういないからな。それに和也とは血の盟約を結んだ」
「血の盟約って?」
「まず主となる者が眷属になる者を吸血する、それから眷属が主の血液を貰うんだよ。主となった者は自分の眷属から吸血する、他の眷属からは吸血してはいけないというルールがある」
「へえ。そうなんだ。という事はマルクは和也くんを吸血したって事よね。男は嫌だ! みたいな事を言ってなかったかしら?」
「‥‥‥あの時は‥‥‥ちょっと興奮していて。それに俺の血族の眷属だっていったから‥‥‥」
「ふーん。それで血を吸っちゃたってわけ?」
「そうだよ! いいだろう! 流石に頸動脈からは無理だから頭骨動脈から吸血したがね」
と突然有紀が俺の腕に噛みつく。かぷっと
「何やってんだ! 痛いだろう?」
「私だってマルクに吸血されたのだから、貴方の血を飲めたら眷属になれるって事よね」
「有紀‥‥‥そんな簡単に眷属にはなれないよ。それに有紀を眷属にするつもりはない」
「何故?」
「有紀には人間でいて欲しい。ヴァンパイアになって欲しいとは思っていない」
「私の傍にいたくないって事?」
「そうじゃない! 俺だってずっと有紀と居たいと思っているよ。でも君には両親がいる。そんな君を奪ってしまうなんて出来ない」
有紀はその話を聞いて俯く。
「人間として生きて欲しい。有紀分かってくれ」
俺がそう言った後、有紀は部屋を出て行く。ばたん!っとドアが閉まる。と思っていたらバタンと音はせずドアに人影が見えた。
「いいのか? 後は追わなくても」
そこにレオナルドがいた。
「どうしてここに居る」
「和也に頼まれた。自分にもしもの事があったら主を頼むとな。それにあのお嬢さんにも護衛がついている。お前の眷属は優秀だな。この後の事も色々話をしたよ。お前さんが講義とやらをやっている間にな」




