ハンターに狙われる
東京に着いた。和也は満足そうに帰って行った。まあ、母の眷属だ。俺が面倒みてやるか。それにしても、どさくさに紛れて俺の血を吸うなど、迂闊だった‥‥‥。そうだレオナルドに礼を言っておかないとな。そこでスマホが鳴る!
「マルク! そこに和也は居るか?」
「いや。今別れた所だが」
「すぐ追いかけろ! アイツの事務所にハンターが居る!」
俺は和也の匂いを辿って走る。
「和也ー!」
そこで和也を見つけた。と、突然倒れる和也。キャー!と周りが騒く。無理もない。和也の頭から血が噴き出していたのだ。
「誰か! 救急車を呼んでくれ!」
俺は叫ぶ。これは、ハンターの仕業だ。頭部側面にしっかりと弾丸がめり込んでいる。それも銀製だ。救急車の中で、
「俺はドクターだ。俺の病院へ連絡してくれ」
と救急隊員に言う。それを聞き病院に連絡がいく。救急のドクターに代わってもらい、状況を説明する。病院へ向かう途中俺は、
「和也。すまない。もう少し警戒すべきだった」
俺は傷口や全身状態を見る振りをしながら和也に言う、
「俺を噛め! 俺の血はきっとお前の回復に役に立つ。待っていろ、その弾丸を取ってやる」
救急医療センターに着いた。そのままオペ室へ移動となる。神谷先生が指示を出している。
「神谷先生! 彼は流れ玉に当たって右側頭部に弾丸が嵌入している。多分弾丸は」
「解りました。後は任せて下さい。既にオペ室は押さえてあります。うちの脳外は優秀ですよ。大丈夫ですから」
あれからスタッフを集めてくれたのか‥‥‥。
「マルクス先生から容態は聞いていましたから、オペ室の用意も出来ていますよ。すぐに始められます」
そこに警察も来る。当たり前だが事情聴取をされる。俺は力を使う。暴力団の抗争で流れ玉による負傷だと。他に被害者はいない。犯人も出頭している。と。暗示をかける。
そこに慌てて有紀も来た。
「和也くん大丈夫? 酷い怪我だって聞いたけど」
「今オペをしている」
「気になるならモニターで見る?」
今はオペ中も記録に残す。患者が希望すれば映像を渡す。そんな時代だ。
「いや。いい。俺達にとってオペは自分の中のヴァンパイアの血が暴れるから見ないようにしている」
「‥‥‥そうなんだ‥‥‥」
暫く無言で医局で過ごす。そこで電話が鳴る。神谷先生からだ。
「オペは終わったよ。弾丸は2つ。脳挫傷はあるが、後遺症はないだろうと言っていたよ」
その言葉を聞いてすぐにICU に急ぐ。有紀はじっと俺の後ろ姿を見送る。
ベッドに横になっている和也に声を掛ける。
「和也。俺の血をあげたい所だが、明日まで絶飲食だ」
ふっと和也が笑う。まだ麻酔が効いているのかその後直ぐ眠った。




