父親
俺達はカラオケを後にした。‥‥‥疲れた‥‥‥違った意味でだ。和也やレオナルドにも驚かされたよ。
「今日は楽しかったー!」
有紀は満足そうだ。鼻歌混じりに歩いている。いつの間にやら和也とレオナルドも意気投合した様子で楽しそうに会話をしている。こうしてみていると種族の違いなんて関係ないように思える。そうだな、人間でいう所の国の違い位だけのように思う。それも解り合えてしまえばこうやって仲良くなる。
母さん。貴方が望んだ世界はこんな感じで種族などという垣根を取り除いた関係でいたかったのだろう。今の俺には理解出来るよ。だが貴方の様に俺は出来ないよ。
ハンターは教会に雇われているプロ集団だ。教会のトップとは何度も話し合っている。時代が変わりトップが変わる度に話し合いの場を設けて意見を交わして来た。母はその意思の強さと美しさで相手を納得させ魅了させてきた。上手くやっていたよ今まではね。
俺は母を殺された怒りで教会に乗り込み殺戮を繰り返した。もちろんハンターもこの手に掛けたよ。父が俺を止めていなかったら大惨事になっていただろう。
父は始祖の中でも特別で族長と呼ばれていた。見た目は若く見られると舐められると言ってそれなりの年齢に見えるようにしている。そうだな、今の女子でいう所のイケおじと言った所だろう。傍にいる眷属は皆違った年齢だったが主には若いなあ。こんなに長くいても親父のストライクゾーンが全くわからん! そういえば眷属に小さな女の子がいたなあ。子供は俺達男ばかりだからなあ。女の子が欲しかったのだろう。メチャクチャ可愛がっていたなあ、メチャクチャ‥‥‥いかん。頭の中でへんな妄想が!
「マルク? どうしたの? さっきから変よ」
有紀に言われて我に返る。
「大丈夫だよ。和也達に驚いてちょっと頭が混乱しているだけだよ」
まったくだ。あのパフォーマンスには俺は引いたぞ。有紀は楽しそうだったが。
「二人ともカッコよかったものねえ。うちのナース組なら簡単に落ちたわね」
「有紀はあんな感じの男が良いのか?」
「あら? ちょっと嫉妬したりしてる?」
と俺を覗く。
「私はマルク。貴方のものよ」
ああ‥‥‥本当に有紀は簡単に俺の心を乱す。そんな事を真っ直ぐした目で言うか‥‥‥。
俯いた俺の顔は真っ赤だろう。夜で良かった。和也やレオナルドには見えているだろうが‥‥‥。
チラっと見ると二人がニヤけていた。そんなこんなで夜は更けていく。有紀が俺と腕を組む。二人で夜の街を歩く。




