母マリー
カラオケの中に入る。薄暗い中俺達は歩く。
「この部屋を使ってくれ」
レオナルドが言う。
「結構暗いわね」
そう有起が言うと、
「では、この位の照明ではどうでしょうか」
と和也は慣れた手つきでスイッチを入れる。
「俺達は夜目が効くから問題はないがお嬢さん、どうかな?」
とレオナルドが聞く。そのレオナルドを覗き込み有紀が言う、
「貴方もヴァイパイアなの?」
とキラキラした目で言う。
「嫌、俺は種族が違う。俺はウルフマン。狼男だ」
「へえー! そうなんだあー。今は人間の姿なのよね。やっぱり満月になると変身するの?」
「こらこら有紀。初対面で早々その質問は失礼だろう?」
俺は有紀を宥める。
「変わったお嬢さんだな。俺達を怖がらないなんて、マルクスが惚れるのも解る気がするよ。こんなにキラキラした目で見つめられてそんな笑顔を見せられると不思議な気分になる」
「おいおい! レオナルド!」
俺は少し焦る。
「大丈夫だよ。そんなに心配する事はない。彼女をとったりしないさ。それに、俺にも番がちゃんといるからなあ。浮気したらその後の方が怖いよ」
「そうなんだ。知らなかったよ、まあ幸せにしてるんなら問題ないな」
和也が有紀に、
「有紀さん。歌いませんか? せっかくカラオケに来ているんだから」
「そうね。久しぶりのカラオケだから! 歌っちゃおう!」
ちょいとウキウキと嬉しそうに言う。
和也がアイコンタクトをする。有紀の相手は任せろと言っているようだ。俺はレオナルドにあの話をする。
「そっちではどこまで情報を掴んでいる?」
「ハンターは日本に来る。それも、プロを寄越してくる。俺達のいざこざがきっかけになってしまった。悪い」
とレオナルドが頭を下げる。
「そんなのは些細な事だ。アイツらは俺達のような種族を根絶したいと思っているからな。人間絶対主義者なんてどの時代にもいる。実際種族を抹殺されたものもいる。半獣もその内の一つだ。人魚も今では見なくなった。昔は海に沢山いたのだがな」
「そうだったな。人間に害する者では無かったが、人魚を食うと不死になれるとか言って、乱獲され今では見なくなったな」
そこで、歌い終え満足した有紀は和也に聞く。
「マルクのお母様ってどんな方?」
「おい。有紀!」
和也は笑顔で、
「いいではありませんか。私のお慕いされた愛しい方です。今でもあの方をお慕い申しておりますよ」
俺は話す。
「あの人は自由に何処へでも行っていたよ。俺が日本を気にいった事で日本に行ったんだ。何人か眷属を連れて行ったが、まあ、自分の身の回りの世話をさせる為でもあったが」
「そうですね。私から見てもあの方は眩しくて、子供の私を可愛がって下さいました。金髪の髪は美しく、澄んだ青空のようなその瞳は誰をも魅力させられていましたよ。眷属の者にもその愛情を等しく与えておられました。その当時の私は眷属とは知らず、身の回りの世話をする方達メイドや執事だと思っていましたよ」
と和也は思い出して言う。




