日本という国
ポリスに付いて行くとそこには、腹部に激しい損傷を負った遺体があった。女医の柏木は手袋をして遺体を確認する。
「これは、どういう事かしら‥‥‥」
首を傾げて唸る女医の柏木。俺も一緒に遺体の確認をする。これは! 人間がこのような事をする目的が解らないといった所だろうな。内臓の肝臓のみが無くなっている。
俺はこの状態の遺体を何度も見た。犯人は人間ではない。その事を話しても理解は出来ないだろうな。
「どう思う? マルクス。コレクター殺人っていう線も考えられるけど、ただ臓器だけが欲しいならこんな傷は可笑しいし、遺体も放置なんて事もあり得ないわ」
「そうだな、それに似たものかもな、きっとこれからこういった殺人は増えていくだろう」
ポリスは唸る。
「これは困った。本当にこういった殺人が増えているんだ」
「やっぱりそうか‥‥‥」
俺がそう言うと、女医の柏木は、
「その言い方からすると何か知っているのか、それか心当たりがあるのか、そのどちらかしら?」
と皮肉っぽく俺に言う。
「俺に解る事は犯人はサイコパスって訳ではないって事だ」
そう言って後はポリスに任せた。
俺達はさっきまでいたクリニックに戻って来た。
「ねえ、院長。今日は午後お休みですよ、予定がないのならマルクスさんを東京見物にでも誘って出かけませんか?」
「そうね」
と考えている柏木院長。先ほど事件現場を見たばかりなのだが。
「それじゃあ、皆で行きますか!」
ノリノリだな。
「流石院長! やったー!」
ここの連中は変わっている。
「マルクスさん! 行きませんか?」
「それじゃあ。甘えさせて貰おう。マルクでいいよ。親しい友人はそう俺を呼ぶから君達もそう呼んでくれ」
「それじゃあ、私の事も有紀でいいわ」
と女医の柏木が言うと、他の女性達も自己紹介を始めた。
「私は受付の七瀬里子、リコって呼んで下さい」
とウキウキと話す。
「私達はここのナースの久島愛美と藤野美加です」
「マナとミカで覚えて下さい」
とナース組が言う。愛美はショート、ミカは長い髪を束ねている。どっちも可愛い俺の好みだ。日本人は若く見えて可愛いんだ! 昔から変わらないなあ、きっとその流れている血液も美味しいのだろう。いやここでは、止めておこう。そんなこんなを考えていたら女子四人に連れ出され東京を案内された。本当にまあ、近代的な建物が多い。だが、神社などもありそんな所は昔を思い出す。楽しそうな彼女達には悪いが今、俺は猛烈に血が欲しい。うん? デパートがある。ここなら人間は多くいそうだ。彼女達には悪いが、ここにいてもらおう。
「悪いがトイレに行きたいので、そこのデパートに行って来る。だからここで待っていてくれないか?」
そう言ってデパートに入る。丁度バーゲンセールをやっていで混んでいた。そこでつまずいた振りをして女性にハグをする。その隙に首筋に牙を沈める。人混みの中、俺はやっと血を飲む事が出来た。ああ何時間ぶりだろう。身体に染みわたる!
「ソーリー」
と言って頬にキスをすれば相手は俺を忘れる。俺は満足して彼女達の所に戻る。
「すまなかったね。続きはどこに俺を連れて行ってくれるのかな?」
俺がいない間にどこに行くのか相談していたようだ。
「次はスカイツリーに行こうと思うのだけど、高い場所は大丈夫かしら」
「俺は大丈夫だよ。フランスのエッフェル塔より高いのだよね。楽しみだ」
エレベーターで上がりそこから見える東京の街、本当に随分と変わった。
女子達は何やら盛りあがっていた。初めて来た訳ではないだろうに。
「わあ! すごいです! 私こうみえてここ初めてだったんですよ。だっていつも混んでいるし一緒に行ってくれる人何かも居なかったから‥‥‥」
と、リコが言うとナース組は
「まあね、実は私達もよ」
とにっこり笑う。
「そうだったんですね! マナさんやミカさんなんてモテそうだからこういう所なんて男性によく誘われたりしたりしないんですか?」
二人は
「誘われるから来なかったのよ」
と一緒に言った。
「こんな所に誘うような男は下心見え見えじゃない」
と、マナとミカは言う。
「こうみえて私達って男運ないのよ。お互いの元彼の話をした時、お互い同情しちゃったわ」
と二人は顔を見合わせて言った。
「そうなんですね。意外と苦労されたのですね」
リコはと二人を優しく見つめる。
そんな彼女達を有紀は嬉しそうに見つめていた。