愛とは
「どうやって摂っているの?」
「期限切れの輸血パックなんか届けてもらっている」
「ああ‥‥‥だからあの時、俺噛んでないかって私に聞いたのね」
「そういや聞いたっけ」
「へんな事聞くなあって思ったけど、成る程」
フムフムと一人で納得して頷いている。
「有紀は俺の事怖くないのか?」
「どうして怖がる必要があるの?」
「だって俺は人間じゃない。君を襲って血液をすすってしまうかも知れないんだよ。あの時だって危うく噛みそうになった」
「‥‥‥血液が飲めれば部位は何処でもいいのよね」
「まあね。と言っても男性の首筋に牙は立てたくないからなあ、って普通に会話しているけど、有紀大丈夫? 可笑しくないか? こんな事を聞いたら普通怖がるだろう?」
「だから、どうして怖がる必要があるの? マルクはマルクでしょう? 私を襲って殺したりしないでしょう?」
「当たり前だ! 好きな相手を殺すなんてあり得ない!」
「なら、問題ないわ。私、マルクの事好きなんだもの」
「‥‥‥本当に?」
俺は有紀に顔を見る。
「こんな事嘘をつく理由が何処にあるの? こっちが聞きたいわ。それに貴方が私に言ったのよ。君が好きだって」
そう言って俺をいつもの様に弾ける笑顔で見る。そうだ、俺は伝えたかったんだ、この気持ちをそして、こんな俺でも受け入れて欲しいと願っていたんだ。
君は俺を受け入れてくれた。ああ、何て幸せな気分なんだ。これでリックに良い報告が出来る!
「ねえ、冷蔵庫に輸血パックないわよ」
‥‥‥ちょっと考え事していただけなのに。いつの間にそこにいるんだ。
「そうだった‥‥‥今切れていたんだ」
「こういう時ってどうしているの?」
おっと、有紀の顔が近い‥‥‥。
「ああ、友人から貰ってくるんだ」
「へえ~そうなんだ~」
有紀の顔が‥‥‥何か良からぬ事を考えている顔だ。
「ねえ! 私を噛んでいいわよ。噛まれたからってヴァンパイアになる訳じゃないんでしょう?」
「それはそうだけど‥‥‥」
「はい!」
と髪をかき分けて首筋を俺に向ける。
「噛まれると気持ちいいらしいが‥‥‥」
「そうなの?」
「今、俺は血液を欲している。今見たように輸血パックが切れて飲んでない」
「だから、どうぞ!」
「有紀‥‥‥噛まれる時の恍惚とした感じは、麻薬の様に危ないものなんだ」
俺は顔を背けて言う。
「貴方にならいいわ。私のヴァンパイア」
その言葉に俺は有紀を抱きしめる。そして、その首筋にキバを立てた。
「あっ! はあ~っ」
と甘い吐息が有紀の口から漏れる。俺は有紀の血を飲みながら有紀の服を脱がす。血液で汚さないように、口の端から血液が流れる。下着にその血液が染みついた。俺はその下着も外した。こんなに興奮する吸血は初めてだ。牙を抜き刺さった後を舌で舐める。そうやって止血する。有紀の顔を見ると違う意味で興奮して来た。
「マルク‥‥‥いいわよ。私を奪って」
俺は有紀を抱えてベッドに寝かせる。有紀の表情は恍惚とした表情のままだ。その姿に俺は‥‥‥我慢なんか出来るか! 好きな相手が望んでいる奪ってと。
「有紀。俺は謝らないぞ、このままお前を奪う」
高揚した顔のまま有紀は、
「馬鹿ね、謝らないで。私が望んだ事なのだから」
その夜俺達は身体を重ねた。愛し合う‥‥‥こんな気持ちなのか‥‥‥リック解ったよ。お前の気持ち。
『人間と愛し合うっていいぞ!』
リックの笑顔が浮かぶ。
♢♢
朝、起きると隣に有紀が居る。当たり前なのだが、何だか幸せな気分だ。
有紀も起きてお互いの顔を見る。あの弾ける様な笑顔で俺を見つめる。と、急に表情を変えて。
「ねえマルク。牙の痕って残るの?」
あっそこですか‥‥‥。
「今日一日は残るかな」
「そうなんだ。絆創膏貼って、自分じゃ解らないもの」
「はいはい、貼らせて頂きますよ。有紀の血液ってもしかしたらRHマイナスなのか?」




