リーダー決定
俺は自分の中のヴァンパイアの血が騒いでいるのが解る。こういう事には血が滾ってくる。レオナルドは数人の狼男の仲間を連れてその違う群れに向かって歩き出す。レオナルドは相手に連絡を入れていた。
その相手の群れのたまり場に着いた。レオナルドはこっちだと俺に顔を向けて合図をする。その部屋のドアを開け、まずレオナルドが入る。どうやらこっちのリーダー候補と話しているようだ。
「お前のような腑抜けた野郎に付いて行きたいと言う奴は居ないぜ! 出て行け! 力が強い者が上に立つべきなんだ!」
大声で怒鳴られた後、レオナルドは数人の狼男に蹴り飛ばされたようで、ドアの外までふっ飛んで来た。
「やれやれ困ったもんだ。お前達のせいで俺達にまで迷惑がかかっているんだが、そこの所どうしてくれるんだ」
俺はその中に入って行く。始祖オーラは出していない。まずこいつ等の本当の姿を知りたい。
「なんだお前! ヴァンパイアか。ここはお前達みたいな者が来ていい場所じゃない! 関係ない奴は出て行け!」
「何を言う、大いに関係はあるぞ。お前達の食事のマナーの悪さのせいでこっちは困っている。俺達は人間と上手くやっているんでね。日本のポリスは有能だ。このままだといずれお前達の存在がバレる事になる。それは俺達にとっても不都合なんだ。はっきり言って迷惑だ」
中にいるウルフマン達は血の気が多いようで唸り声を上げている者もいる。そこでこの群れのリーダーだろう一人が俺の方にやって来た。俺の顔を睨むように見る。が、何かを感じたのかさっと後ろに後退した。
「お前‥‥‥始祖か」
「ほう、オーラを出さなくても解るとは流石だな。で? 俺に文句を言いたい奴はいるか? 出て来いよ」
何人か俺の前に出ようとしたが近づけないでいた。そう俺は始祖であるオーラを放っていた。
「こんなもんか。俺は争い事は嫌いなんでね。そこで俺は、ここで言いたい事を言わせてもらう為に来た。お前達のリーダーはここにいるレオナルドになってもらう」
その群れのリーダーらしき者が俺を睨む。俺は、
「レオナルドはもう俺の友人だ。それにレオナルドの思想に賛成なんでね。力が強いってだけで群れを率いては行けない。群れを守って行かなければならないと、そういう覚悟がなければリーダーはやって行けない。だから今のお前はリーダー失格だ。仲間を危うくさせている。昔の魔女狩りのようにあぶり出され処分される。なんせお前達は人間を襲ったからな。人間にとってお前達は危険な存在となっているからだ。お前がリーダーになったらこの国のウルフマンは根絶されるだろうな」
その言葉にそこにいた狼男全員がざざっとその男(リーダー候補)から距離をとった。
「人間を襲いたいのであれば勝手にやればいい。だが、人間に捕まった時は狼の姿になっていないとお前達は終わる」
俺の言葉に他の狼男達は息を飲む。
「知っているか? 日本の警察はもう動いているぞ」
俺は、ニヤっと笑ってそこにいる狼男達を見る。そこで誰かが言う。
「最近、この周囲にやたら警官が多い」
俺はその言葉の後に付け加える。
「今の時代。いたる所に防犯カメラがあるからな、車にだってカメラが付いている時代だ。写っていない事を願っておいてやるよ」
さっきまでと明らかに空気が違っている。
「後はそっちの判断に任せる。レオナルドがリーダーになったら俺はお前達の力になろう、相談は聞いてやる。以上だ」
そう言って店を出た。車に戻りスマホを確認する。有紀からメッセージが来ていた。『話がある』とだけ。俺は直ぐメッセージに返信を送る。今から家に帰る。良かったら家に来てくれ、と。俺は急いで帰る。今回の事できっとレオナルドがリーダーになるだろう。ヴァンパイアの始祖がバックにいれば怖いものはない。俺達は不死だから経済界に有力な者もいる。この国の総理だって怖くないし、他の国の首脳や代表者と言われる者にもコネはあるんだ。もちろん大統領も同じだ、側近に我々の仲間がいる。




