表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/144

自分の気持ちを整理する時、どうしてますか?

 おはようございます、シラハです。


 なんか物音がするので目が覚めたんだけど、私の近くに誰かがいるみたいだ。


「アルフリードさん……?」


 寝ぼけた頭で、私の近くに立つ人物を認識する。


 あれ…私、部屋の鍵を閉め忘れたかな?

 と、一瞬思わなくもなかったけど、アルフリードさんが私の部屋を訪れる理由が思いつかなかった。


「……あれ? なんで私の部屋にいるんですか?」


 もしかして……夜這い?

 って、そんなわけないか。まだ外明るい…し……


「あっ!!」


 しまった!

 部屋に帰ってきて着替えようとしたけど、眠気に負けてベッドに倒れ込んだんだ……!


 私はベッドから飛び降りてアルフリードさんに慌てて頭を下げる。


「寝過ごしてしまって申し訳ありませんアルフリード様!」


 やってしまった……。

 ちょっと一時間だけ〜……と、ベッドに倒れ込んでからの記憶がない。

 今何時だろ……

 アルフリードさんを随分と待たせてしまったのかもしれない。


 アルフリードさんからの反応がないので頭を上げてみると、顔を真っ赤にした茹でダコが一匹出来上がっていた。


「もしかして、物凄く怒ってますか?」


 そんなに顔を赤くして怒らなくてもいいのに……。


「いや、その……」


 アルフリードさんが戸惑いながら一歩後ずさると、その場で片膝をついた。


「貴女様の寝所に許可無く入り、さらには貴女様のあられもない姿を見てしまったことをお詫び致します!」


 アルフリードさん急にどうした?!

 私は、そんなふうに膝をついてもらうような人間じゃないよ!?


 寝坊したことを謝っただけなのに、逆に物凄い勢いで謝られてしまった。解せぬ……


 そこで私ははたと気付く。

 下がスースーするな……

 いや、下と言うか、全身がなんか軽い。


 おや? アルフリードさんの後ろに落ちてるのは、どうやら私の服っぽいな。

 つまりはアレだ。

 私は今、全裸ってヤツだね。アッハッハ


「なんか、見苦しい物を見せてしまって申し訳ありませんでした」

「はっ?! え、そんな! そ、そのっ…とても美しかったです!」

「えっ…あ、そうですか……」


 ほんとアルフリードさん、どうしちゃったの?

 こんな貧相な体を見て、美しいとか……下手くそなお世辞だね……。

 私は自分の胸をふにふにと触ってみる。


「ぶふっ?!」


 すると勢いよくアルフリードさんの鼻から血が噴き出した。

 どうやら刺激が強かったらしい。

 そうか、アルフリードさんは小さいのが好きだったのか。


「大丈夫ですか?」


 私は鼻を押さえているアルフリードさんに近付きながら聞いてみたが、血を流しながらもアルフリードさんは私と一定の距離を保つようにして後ろに下がる。


「だ、大丈夫ですから……。あまり近づくと血で汚れます」


 また敬語だ。

 なんでアルフリードさんは急に私に対して敬語なんて使うようになったの?

 意味がわからない。


「はぁ……。何があったのかは知りませんが、急に態度を変えてどうしたんですか?」


 私がずずいっとアルフリードさんとの距離を詰める。


「そ、それは……って、服を着てください!」

「服は着ますが血が付いたら、なかなか落ちないので……なので、ちょっと動かないでくださいね」

「ぅ……?」


 鼻を押さえるアルフリードさんの鼻先辺りを目掛けて、私は人差し指を向けた。


(【血液操作】……っと、こんなもんかな?)


 私は、ささっと【血液操作】で血を止めてみる。


 鼻血は、どこぞの血管が切れて出血が止まらなくなるだけだから、適当に出血の多い所の血を固めて止めてみた。

 固めると言っても、もし指を鼻に突っ込んだら、ポロっと取れちゃう程度のモノだ。

 そんな事しないと思うけどね。


「これでどうですか?」

 

 アルフリードさんが、ゆっくりと手を鼻から離していく。

 大丈夫みたいだね。


「止まった……今のはいったい……」

「私の村で鼻血を出した子に親がやってあげる、おまじないですよ。本当に止まってよかったです」


 私、こうやってさらっと適当に嘘をつくのに慣れてきたね。慣れって怖いわぁ……


「おまじない……ですか。では、そういうことにしておきます」


 アルフリードさんが一人で納得している。ホントにどうしたんですか。


 私は様子の可笑しいアルフリードさんを尻目に着替えを始める。

 今の状況をファーリア様やヒラミーさんが見たら、アルフリードさんはどうなってしまうのやら……。

 もし、そんな事態に陥ったら無事だけは祈ってあげよう。


 私が着替え終わると、着替えを見ないようにとアルフリードさんの背中がこちらに向けられていた。

 私がいきなり着替え出したから、ドアを開け放つわけにもいかなくて、部屋から出られなかったみたいだね。


 未だに着替えが終わった事に気付いていないアルフリードさんは、そわそわと落ち着かない様子で、それが少し面白かった。


 そんな背中に少しイジワルをしたくなった私は、アルフリードさんの背中に飛びついた。


「うわっ?!」


 私がアルフリードさんの首に腕を回した時は一瞬ビクリと体が跳ねたけど、そのあとはピクリとも動かなかった。


 アルフリードさんの首を絞めるかたちで背中にぶら下がる私。

 でも、そこはさすが騎士、と言うべきか大して苦しそうではない。

 それでは、つまらな……ぃゃぃゃコホン。イジワルにならないので、腕に力を込めて私の顔がアルフリードさんの耳に近づくようにする。


 アルフリードさんの緊張が伝わってきた。

 荒くなってきた息遣いに、止まっちゃうんじゃないかってくらいにバクバクいってる心臓の音。


 こんなにしっかり聞こえるなんて、これは【側線】のせいなのかもしれないね。


 心音が伝わってきて、私も少しドキドキしながらアルフリードさんの耳に口を近づけて――――


 息を吹きかけた。


「ふーっ」

「うおわぁ?!」


 その瞬間アルフリードさんが飛び跳ねた。

 私は巻き込まれないように、すぐに手を離して難を逃れる。


 アルフリードさん、今日は騒いでばっかりですね。


「アルフリード様。ここ以外にも宿泊している方はいるので、お静かにお願いします」

「き、君のせいだろ?!」

「叫んでいるのはアルフリード様です」

「ぐぅ…!」


 悔しそうに唸るアルフリードさん。面白い。


「シラハは男性に近寄られると、動けなくなるって言ってなかったか? 僕は平気なのか?」


 たしかにそうだね……

 アルフリードさんとは何度も二人きりになってるから、今さら、って思ってるのかも。

 それに、この前もアルフリードさんを背負ってるしね。

 はっ! もしや……


「アルフリード様……実は女の子だったりは――」

「しないよ!」

「ちぇー」

「残念そうにするなよ……」


 しかし、アルフリードさんもツッコミが早くなったね。私が鍛えているからかな?


「それにしても、ようやく元に戻りましたね」

「え? なんの話?」

「なんのって……さっきまで私に気持ちの悪い態度をとっていたではないですか……」

「あっ……って、気持ち悪いは酷くない?」

「全然酷くないです。むしろ急にあんな態度で距離を作ったアルフリード様が酷いと思います」

「つまり僕達は、少しは距離が縮まったという事……なのかな?」

「…………今日は、おしまいです。お疲れ様でした」

「えっ、あ、ちょっ?!」


 墓穴を掘った私はアルフリードさんの背中を押して部屋から出す。


「シラハ、開けてくれ!」

「帰らないと、寝ている妹の服を剥いで鼻血を噴き出していた、と騎士の方達に伝えますよ?」

「僕の騎士生命が終わる中傷はやめて?!」


 さすがに、そこまではしないけどね。

 私がホントに、そんな事すると思ってるのかな?


「シラハ、その……また君を怒らせてしまったのなら謝る。だから……」

「違いますよ。もしアルフリード様に悪いところがあったとしたら、なぜか態度が変だったところです。それを元に戻そうとしたら、ちょっと私もやり過ぎました。今はアルフリード様の顔を見れそうにないので帰って下さい」


 さっきの距離が縮まったの言葉で変に意識してしまった。

 ちょっと、これは今日一日ゆっくり考えて落ち着かないとダメだと思う。

 だから今日はこの部屋から出ないと決めた。


 私がドアを閉めても、アルフリードさんが離れる様子はない。けれども、私にはアルフリードさんに構っている余裕はない。


 まさか私に、こんな女の子らしい部分があろうとは……

 いや…驚くほどのことでもないね。

 似たようなことは何回かあったし。


 ただ、私がどうしたいのかがハッキリとしていないから、こんなにも迷うんだ。


 私は色恋沙汰は無縁だと、どこか他人事みたいに考えていたけど、今のままじゃアルフリードさんに悪いと思う。

 なので、その辺について考えを纏めておこう。


 まずは私がアルフリードさんの事をどう思っているか、という部分については好意は持っていると思う。

 あの人に触れても固まることないからね。あ、でも魔薬で変になってた時に詰め寄られた時はダメだったな……


 あれかな…本能的に身の危険を感じるとダメなのかもしれない。


 それにしても、好き……か。


 どうしよう。

 余計に意識しちゃいそうだよ。

 顔が熱を帯びていくのがわかる。


 あー! ヤバイ! 明日どんな顔して会えば良いんだ!


 私はベッドに飛び込むと布団を頭から被ってジタバタと暴れる。


 でも私は貴族と関わることは極力したくない。

 だから、アルフリードさんとの関係をこんなふうに悩むのかもしれない。

 ……それに、父さんと母さんがいる。


 私は、あの二人とも一緒に居たい。

 これは別にドラゴンパピーの魔石を取り込んだからってわけじゃない。

 私が親の愛情に飢えているからだ。


 ナヴィの話を聞いてからは、もしかすると私の中に眠る魂達が親の愛情に飢えているのかもしれない、と考えたりもしている。

 ただの推測でしかないけどね。


 あとは私の異能だ。

 さっき目の前で力を使って誤魔化したけど、いつまでも誤魔化しきれるものじゃあない。

 もしもバレた時、アルフリードさんはなんて言うのかな……

 バレる前に私から伝えた方が良いのかもしれない。


 でも露見した時に、もしも化け物、と言われたら……そんな考えが過ぎる。

 周囲から後ろ指を指されるのは怖い。

 好きな人に拒絶されるのは怖い。



 ああ……私はこんなにも弱かったんだね。

 弱くて、臆病で、怖がりな私に恋なんてできるのかな……


 あーやだやだ!

 私はポスポスと布団を叩く。


 やっぱり私はどこか可笑しいんだよ。

 裸をアルフリードさんに見られても全然平気なのに、ちょっとくっ付いただけで意識しちゃって馬鹿みたいだ。


 乙女かよ私!

 そういえば乙女だったわ……私。


 結論から言えば、アルフリードさんとは一緒にはなれない。

 私の異能を受け入れて貰って、あの人に貴族をやめて貰って、なんて都合の良い未来なんか期待するべきじゃないし、なによりフェアじゃない。


 彼だけに全てを負担してもらおうなんてムシのいい話だ。

 そんな独りよがりな考えしか持たない私は、やはり誰かと一緒になるなんて良くないと思う。


 うん。

 この気持ちが知れただけでも良かった。

 これで、明日からは少しは落ち着いて話せると思う。


 切り替えは大事だよね。


 

 考えが纏まり私は再度、布団に潜り直す。

 寝直せば少しは落ち着くはずだ。


 と、そこへコンコンとドアをノックする音が聞こえた。


 誰? と一瞬思ったけど考えるまでもなくアルフリードさんだ。

 というか、ずっとドアの前で待ってたの?!



 私がドアに近づいて、ゆっくりと開けていく。

 その向こうには、宝石のような碧い瞳を真っ直ぐ私に向けているアルフリードさんが立っていた。


「シラハ……」


 アルフリードさんに名前を呼ばれゾクリとする。

 ああ……自覚しちゃうと、これだけでヤバイなぁ。


「シラハ、僕は君がどんな秘密を隠していたとしても、君が困っているのなら僕は身命を賭して君を助けると誓う」

「アルフリード…様?」


 もしかしてアルフリードさんは私の秘密に気付いている?

 何かを隠しているというのは、最初の頃から匂わせていたけれど、そこには踏み込んでくるなよ、と牽制もしていた。


 でも、このタイミングでこんな事を言ってくるのは、私の秘密に何かしらの確信を得ているのかもしれない。


 今の言葉は魔薬調査の間だけですよね? という返しが頭の中に出てくる自分が嫌になる。


「別に秘密を打ち明けて欲しいわけじゃないんだ。僕は、今の君との関係で十分なんだ。だから、そうやって僕から逃げないでくれ……君と一緒に居たいんだ」


 アルフリードさんが私の髪に触れる。

 今回は魔薬の匂いはしない。という事は今のアルフリードさんはまともな状態だ。


 つまり今のはどういう意味だろう。

 今の関係、というと調査仲間のままで良いってこと?

 それはつまり、お友達のままでいましょうってことですか、そうですか。


 でも、そのあとの言葉を考えると、どうなんだろう。


「それは私を異性として守りたい、一緒に居たい、という事ですか……?」

「そうだ」


 結構、都合の良いことを言ったつもりだったけど肯定されてしまった。どうしよう。

 でも、このまま私が変な空気を持ち込んだままにしたら、調査もまともにできなくなってしまう。

 それはダメだよね。


「……それなら、私が王都に滞在している間は一緒にいてあげますよ」


 私はアルフリードさんの手を掴むと、ニコリと笑いかける。


「ああ……良かった。また改めてよろしく頼む」

「こ、今回だけですからね。特別ですよ……!?」


 安心した様子のアルフリードさんがフッと笑う。

 その笑顔に動揺しまくりになってしまう私。



 くそぅ。負けないんだからね……!





ナヴィ「お姉ちゃんがデレた!?」

シラハ「そういうこと言うのやめよ? それで素直になれなくなっちゃう子も、いると思うんだ」

ナヴィ「お姉ちゃんみたいに?」

シラハ「お黙り」

ナヴィ「怒った?」

シラハ「怒ってない。怒ってないから、この話題は終わりね」

ナヴィ「はーい。って、噂をすればアルフリードさんが……」

シラハ「あわわ……」

ナヴィ「赤面して慌てるお姉ちゃん、可愛い……」

シラハ「ナヴィのバカー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 恋愛っぽいのは辞めましょう。 この作品の良さが全て吹っ飛んでしまいます。 ますます評価が上がらなくなります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ