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 目を覚ますと、私は母さんに抱きかかえられていた。

 もう辺りは真っ暗で、母さんの体温が心地良かったので、そのまま寝直そうかな……とか考えたけど、眠る前の事を思い出して、なんとか思い止まった。


「あら? シーちゃん、おはよう。よく眠れたかしら?」

「うん、暖かくて気持ちよかったよ。ありがとう母さん」


 私がモゾモゾと動き出した事で、目を覚ました事に気付いた母さんと挨拶を交わすと周りを見回した。


 父さんは私と母さんの近くに座っていてチラチラとこちらを見ていた。


「おはよう、父さん」

「ああ…おはよう、シラハ」


 私が声をかけると、フッと優しい顔になる父さん。

 父さんのこういう反応は可愛いんだよね。


「シーちゃん、もう怪我の方は大丈夫?」

「んー……まだ、肩は痛むかな? でも血は止まっているし大丈夫だよ」

「そう……良かったわ」


 私がそう言うと、母さんがホッと息をついた。

 心配かけてゴメンよ……


「そうそう。シーちゃん、あの子達はどうするの?」

「あの子達?」


 私の怪我の具合を確認すると、ふと思い出したように母さんがそんな事を言い出したけど、あの子って誰の事だろう。


 母さんが見ている方に私も視線を向けてみると、焚き火を囲っているライオスさん達が目に入った。

 あの子達って、ライオスさん達の事だったのね……


 ライオスさんとディアンさんが二人で話をしていて、ルーアさんとサシャさんは、すぐ側で眠っていた。

 交代で休憩しているのかな?


「あの子達がシーちゃんの治療をしようとしていたけれど、あの子達も消耗していたようだったから断ったわ。ゴメンなさいね」

「ううん。私は大丈夫だから気にしないで」


 母さんが申し訳なさそうな顔をしているけれど、ルーアさんはずっと皆の治療をしていただろうから疲れているはずだ。

 だから、母さんの判断は間違っていないと思う。


「あの子達ね、シーちゃんのスキルが気になって仕方がないみたいよ」

「だよね……今回は、人の目を気にしてる余裕なかったもん……」


 戦闘時は開き直ってスキルを使ってはみたものの、終わってみると、その辺についてどうしようかと悩んでしまう。

 説明する必要はないんだけどさ……


「それと治癒魔法が使える子が言っていたのだけれど……シーちゃん、いつの間に傷を一瞬で治せるようになったの?」

「え?」


 母さんがよく分からない事を言い出した。

 傷を一瞬で?

 そんな事できるのなら、肩の傷だって今すぐ治したいんだけど……。出血はしてないけど、地味に痛いんだよね。


 ルーアさんが治癒魔法を使ってくれたのは、変異種に最初に吹き飛ばされた時だけだ。あれってルーアさんが治してくれたんじゃないの?


「シーちゃんのスキルじゃないの?」

「ルーアさんが治したんじゃないのならスキルだとは思うんだけど……私も効果を把握できてないスキルがあるから、それなのかも……」


 そういえばバタバタしていて忘れていたけど、王都で騎士団長に喉を斬り裂かれた時も気が付いたら治ってたっけ……

 何のスキルが発動したか分からないから、今度ナヴィが出てきてくれた時に聞いてみよう。


 でも、そうなると二回とも死にかけた時にスキルが発動した事になるんだよね。

 もしかして、私って不死身?

 とはいえ、気軽に試せる事じゃないしなぁ……

 実験してみたら、そのまま永眠とか笑えない。


「それで、シーちゃんはあの子達をどうしたいの?」

「どうって……」

「私達だけなら、あの子達を置いていくのだけれど、シーちゃんはイヤでしょう?」

「……うん」


 少しとはいえ一緒に戦った仲だし、今のライオスさん達の状況を考えると無事に森から出られるとも考えにくい。

 それなのに放っておけるのなら、最初から助けてはいない。


「シーちゃんがあの子達を助けたいのなら、家に連れて行くなり、あの子達の帰る場所に送り届けるなりすればいい。でも、その為には私かガイアスの正体を明かす必要があるわ」

「そう……だよね」


 父さんや母さんを連れて、ライオスさん達を護衛しながら街に行くという方法もあるけれど、ライオスさん達の消耗具合を考えると、森を抜けるまで耐えられるか分からない。

 変異種との戦闘がなければ、また違ったとは思うんだけどね。


「それに、あの子達は森の調査に来ているのでしょう? 森の異変についてなら、私達の存在を明かした方が色々と説明が楽なんじゃないかしら」

「母さんは、正体を明かす事になっても平気なの?」

「ええ」


 母さんは即答した。

 竜に危害を加えられる人間なんて、そこらにいないから気にもならないのかもしれない。


 ここまで言ってくれるのなら母さん達の正体を明かすのもアリだと思う。


「なら、ライオスさん達を街まで運んでもらおうかな……父さんも、それで良い?」

「ああ、構わないぞ」


 父さんも全く気にした様子はない。

 本当に二人とも娘に甘すぎない?




 こちらの方針を決め終えると、私はライオスさん達の所に向かう。

 すると、すぐにライオスさんが私に気付いた。


「シラハ、目が覚めたのか」

「はい。ご心配をおかけしました」

「無事ならいいんだ」

「ルーアが心配してたぞ? 本当に平気なのか?」

「まだ多少痛みますけど、大丈夫ですよ」

「たしかに、これといった傷は見えねえな。服は血みどろだが……」


 ディアンさんが、私の体をジロジロと見てくる。

 いやらしい目付きではないけれど、服がボロボロだからなんかヤダなぁ……ディアンさんエロそうだし。


「ディアン、見過ぎだ。シラハの服もあんなだし、少しは遠慮しろ」

「ああ、悪りぃ悪りぃ」

「ホントですよ」


 とりあえず文句を言っておくけど、ディアンさん気にしなさそうだな。



「サシャ、ルーア。悪いが起きてくれ、シラハが目を覚ました」


 少し言葉を交わすと、ライオスさんも急に寝ていた二人を起こし始めた。

 何時かはわからないけど、遅い時間だし休ませてあげようよ……


「お疲れなら寝かせておいてあげた方が……」

「そうしたいところだが、俺達にはあまり時間がないからな……」

「それに、あの変異種の取り分について話もしなきゃならねぇからな」

「取り分……ですか? 話し合うもなにも皆で倒したんですし、等分で良いのでは?」


 私の言葉に、ライオスさん達は驚きの表情になる。

 なんか変な事言いましたかね?


「あのね、シラハ。僕達も戦いはしたけど、とても倒せそうになかったでしょ? そこへ君の両親が参戦して、倒してくれたんだから、本来なら君の両親の物なんだけど……」


 起きたばかりで眠そうな顔をしたサシャさんが説明しながら父さん達に視線を向ける。


「あの二人は魔石だけ欲しいって言ってて、それだけじゃ僕達が貰いすぎになるって伝えたら、所有権をシラハに譲るって言いだしてね……」

「ああ……なるほど」


 たしかに父さん達にとって、魔物なんて肉としての価値しかないよね。

 そこに私が使う魔石を追加してくれたみたいだけど、他には興味ないよね。


「私は魔石が貰えれば他は要らないですけど……」

「いやいや……。それだと僕達が貰いすぎなんだってば……」


 サシャさんが困った顔をしているけど、私は当分は街に行く予定もないから、素材なんて貰っても困るんだよね。


「私はお金には困ってないですし、サシャさん達は変異種を丸ごと持ち帰れば調査報告が楽になるし、お互い損はないと思いますよ」

「ど、どう考えても、シラハさんが大損していると思うのですが……」


 ですよねー。私もそう思いますー。

 でも、貰っても邪魔なんだよね。


「たしかに、変異種を丸ごと持ち帰れるなら俺達も助かるが、そもそもあんなデカイ変異種を持ち帰る術がない」


 そこにライオスさんが問題点を挙げてくる。

 まぁ、普通はそうだよね。


「持ち運びなら父さんに任せてくれれば大丈夫ですよ」

「いや無理だろ……」


 呆れた様子のライオスさんだけど、私は本当の事しか言っていない。


 そこへ、父さんが前に歩み出てきた。


「シラハ。実際に見せなければ信じられないのではないか?」

「そうだよね……。父さん、お願いしていい?」

「当然だとも!」


 父さんが提案してきたので、頼んでみると嬉しそうに笑った。

 なので、少し父さんから距離をとる。


「ライオスさん達も少し父さんから離れてください」

「なにを……」


 ライオスさん達は困惑しながらも、その場から少し退がる。


 私達がある程度離れると、父さんが人化を解いた。

 ぶわりと風が起こり砂煙が舞う。


 そして砂煙の中から竜の姿になった父さんが現れた。


「な……」

「嘘……」

「マジかよ……」

「まさか……」


 ライオスさん達は、全員が驚いている。

 誰でも驚くよね。


「改めて紹介しますね。私の父、ガイアスです」


 私が前に出て父さんを改めて紹介してみたけど、ライオスさん達の耳に届いているかは微妙だね。


 放心状態な四人の様子をしばらく見ていると、ルーアさんがハッと我を取り戻した。


「あ、ああの……し、シラハさん?」

「はい?」


 いつもより吃っているルーアさん。


「わ、私も伝え聞いただけなのですが……もしかして、目の前にいらっしゃるのは、あのソードドラゴン……ではないですか……?」


 恐る恐る、といった感じで尋ねてくるルーアさん。

 よく知ってるね。

 もしかして帝国領でも、父さんが暴れた事あったのかな?


「そうですよ」

「あのソードドラゴンが嬢ちゃんの父親?!」

「え…じゃあ、シラハも竜なの?」


 私がルーアさんの言葉を肯定すると、ディアンさんとサシャさんも驚きの声をあげる。

 その辺の説明もしなきゃだよね……


「ええっと……私は人間なんですけど、訳あって父さんと母さんに拾ってもらったんです」

「その辺の話は聞かない方がいいのかな?」

「そうですね。ライオスさん達も早くウィーナッドに戻りたいでしょうし、そこは省かせてもらいます」

「気にはなるけど、了解だ」


 ライオスさんが余計なことを聞かないと約束してくれたので、話もスムーズに進みそうだ。


「つまりシラハの両親が、この近辺に住んでいるという、夫婦の竜という認識で合っているのか?」

「そうなりますね」

「そうか……。シラハ…確認だが、君の両親は今回の森の異変には関わってはいないのか?」

「父さんも母さんも不必要に魔物を狩ったりはしないので、今回の異変とは無関係だと思います」


 あくまでも私の考えだけどね。


 私の話を聞いて、何やら考えているライオスさん。

 身内である私の証言だから判断し難いのかな……。


「シラハ、変異種は君のお父さんが運んでくれるで良いんだよな?」

「お父さんとか呼ぶな」

「大丈夫ですよ。ただウィーナッドに着いたら、父さんに攻撃をしないように呼びかけてくださいね」

「分かっている。竜に攻撃を仕掛けるほど命知らずじゃあないよ」


 私とライオスさんは、父さんの文句をスルーしながら会話をする。


「あと、父さんに討伐隊とか差し向けないでくださいね」

「恩人にそんな事はしないし、どこかの街みたいに襲われたら堪らないし、領主様はそんな事はしないよ」

「その話、知っているんですね」

「ウィーナッドでは有名だよ。昔この近くにソードドラゴンがやって来た時に、絶対に刺激するなと領主様からのお触れが出たみたいだし」

「そうなんですね」


 それなら、変にちょっかいを出される心配はなさそうかな?


「そろそろ我の背に乗るがいい」


 父さんが待てなくなったのか、ライオスさん達を背中に乗るように促す。

 けど恐れ多いのか、なかなか踏み出せないでいるみたいだ。


「乗っていいの? 噛みつかない?」

「サシャ、ビビってねぇで早く乗れよ」

「そんなこと言いながらディアンも乗ろうとしてないですよね」

「さすがに勇気がいるね……」

「何やってるんですか……」


 ライオスさん達が乗らないといつまで経っても出発できないんだけどな……

 仕方がないので私が先に父さんの背中に乗ることにした。


 私が父さんの上に乗ると、母さんが一緒について来た。


 それを見たライオスさん達も、恐る恐るといった感じで父さんの背中を登っている。


「ようやく乗ったか……。では行くぞ」


 父さんが翼を羽ばたかせながら、変異種を足で掴むと空に飛び上がる。


 ライオスさん達が悲鳴をあげているけど、そこは慣れてもらうしかない。

 私は母さんに抱きしめられながら空の旅を楽しむことにする。


 こうしていると、なんか帰ってきたって感じがするなぁ。









シラハ「あとはライオスさん達を街に送り届けるだけですね」

ライオス「手間をかけさせて、すまない」

ガイアス「シラハの頼みだからな」

サシャ「娘には甘いんだねー」

ディアン「そういうところは、人と変わらないんだな」

シラハ「父さんですから」

ルーア「たとえばの話ですけど、もし街の人達が攻撃してきたら、どうしますか?」

ガイアス「殲滅させる」

ルーア「あわわわ……」

シラハ「そうならないように頑張ってくださいね」

ライオス「善処する……」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 実の子の竜核を持ち、同じ魔力に感じ、愛情かけてもらってるのだから、簡単に素性を明かす場合、人間だけど二人の子どもです、くらい言って欲しいな。
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