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ポロリしちゃいました

 本日は快晴。どこまでも広がる雲一つない青空の下、私はアルクーレ周辺の草原へ魔物退治に来ている。さすがに短剣だけ買って魔物退治に行くのは目立つと思ったから、武器屋を出てそのまま行くのは自重しました。私は普通の冒険者を目指すのです!


 なので注文した革防具が仕上がるまでは、ミューゼルおばあちゃんのところに入り浸っていたりした。あと体調も崩していたりしたのだ。実は初潮がきて身体が怠くて辛かったのです……出血した時は焦ったし、どうしたらいいのか分からなかったけど、調子悪そうにしていたらミューゼルおばあちゃんが察してくれて、色々と教えてくれたので助かったよ。本当にありがとう。


 そんな事件もあったけど防具も仕上がったので、Fランクとしての活動を始動したわけなのだ。と言ってもFランクの魔物退治依頼は基本的に常設依頼で、街から少し離れたところにいる魔物を間引くというものになる。


 私が今拠点にしているアルクーレの街は、定期的に領兵が討伐を行っているらしく、それ以外は冒険者の活動で魔物退治が行われていくので、近場にはあまり居ないのだとか。


 依頼ボードを確認していて知った事なのだが、私が森で狩っていた魔物はフォレストマンティス以外はEランクに該当するらしい。デカいカマキリの魔物フォレストマンティスは、両手の鎌の殺傷能力の高さからDランクに位置づけられているみたい。


 油断するつもりはないけれど、今まで戦っていた魔物より弱いのなら、今日は買ったばかりの短剣を使って討伐していこうと考えていたりする。もちろん危なくなったらスキルは使うけどね。


 歩いていると岩陰に角の生えたウサギ、ホーンラビットを見つける。書庫で魔物の挿絵が入った図鑑を読んでいるので予習はバッチリだ。気をつけなきゃいけないのは、角を使った突進攻撃くらいなので、不意打ちをされなければ怖くない。


 ホーンラビットがこちらに気付き私目掛けて突進してくるが、ギリギリまで引きつけたところで、突き刺そうと飛び上がったホーンラビットの首を短剣で切りつけて終わり。スキルを使わなくてもあっさり倒せて拍子抜けである。


「魔石魔石〜♪ あと角もね」


 討伐証明部位としてホーンラビットの角と魔石を回収する。以前、魔石を換金したが取り込んでいないフォレストゴブリンとレッドプラントの魔石は手元に残してあったりする。今は領域が不足しているが取り込めるようになった時のために、新しい魔石は一つは手元に残しておくつもりなのだ。


 今日の初戦闘が終わると私は【獣の嗅覚】で次の獲物を探しはじめる。ニワトリのような……というかまさにニワトリな魔物コッコウ。私を丸呑みにした大蛇と比べると可愛いらしいサイズのヘビの魔物クネーク。サッカーボールくらいの大きさのダンゴムシの魔物ゴロンゴを見つけた端から倒していく。


 倒した数が二十を超えたあたりで数えるのをやめて無心で狩っていった私だったが、ふと冷静になる。


「もしかして狩りすぎかな?」


 Fランクの魔物はこの広い草原に多数生息しているが、一匹も遭遇せずに帰ってくる事も珍しくないのだとか。そのため折角Gランクを卒業したというのに、薬草摘みに勤しむことになり長い下積みをする事になるんだって。


 じゃあ私はどうか。今日一日で魔石がひぃ…ふぅ…みぃ…三十四匹だね! あれ普通の冒険者目指してたのにどうしてこうなったのかな……魔石は大丈夫だとしても討伐証明部位は時間が経ったら腐るものもあるので、小分けにして提出もできないし……どうしてこうなった!


「とは言え誤魔化すために捨てるなんて、勿体ないし……」


 森の中で生活していた時は無駄な狩りはしていなかった。なので捨てるなんて論外なので、そうなると答えは決まっている。


「よし! 普通の冒険者を目指すのを止めよう!」


 私はさっさと決意を覆す。そもそも私は小さい冒険者として既に目立っている。素行の悪い冒険者に襲われた事も知られているし、昇格の時には新人冒険者にさえ絡まれている。よく考えたら既に普通の冒険者ではなかったのかもしれないんじゃなかろうか。


「なら、ここからは薬草採取でもして行こうかな〜」


 私は魔物退治から薬草採取へと切り替える事にして、薬草を採取しながら帰ることにする。討伐証明部位や魔石が入った袋を背負い直して歩き出す。


 そうそう、この世界にはポーションがあるんだって。私が今採取しているエイチ草は体力回復薬になるし、あっちのエムピ草は魔力回復薬になるんだって。自分が採取した薬草の使い道が気になって調べて見たら所謂、魔法薬になるって知ってそこから色々調べてたの。


 そこで気になったのが魔力回復薬や魔法薬って言葉で、やはりこの世界には魔法が存在するんだ! と思わず興奮してしまったのは記憶に新しい。あの時は私も若かった……いや今も若いんだけどね。


 魔力は誰にでもあるらしいんだけれど、魔法が使えるかはまた別みたいで、それは魔道士ギルドへと赴いて適性の有無を確認してもらわなきゃいけないんだ。適性の種類は火、水、土、風、無属性の五つで、適性があればその時点で魔道士ギルドに登録されるらしい。


 私も魔法を知ってすぐに魔道士ギルドに行ったんだけれど、ガックリして帰ってきたよ……宿に戻って枕を濡らしながら寝たよ。その日は適性あり! って夢を見ちゃうくらいには悲しかったよ。


 無属性は結界だとか治癒魔法とかが使えるんだってさ。魔法薬は適性がなくても作れるらしくて、適性がなくて魔力が多い人が魔法薬を作るんだって。


 魔法薬は錬金ギルドが取り扱っていて、魔道士ギルドとはとても仲が悪いみたい。それも魔道士ギルドから爪弾きにされた人達が、自分の魔力を有効に使おうとして魔法薬を作りだしたのが起源だって言うのだから、仕方がないんだけどね。その話を聞いた私は心情的に錬金ギルドの味方をしたくなったのはここだけの話だ。私も爪弾きにされた側だからね。


 まぁ、話が色々と逸れた気もするけれども、適性がなくても全く魔法が使えないわけじゃないんだとか。その一例で最も有名なのが身体強化で、魔力で身体能力を一時的に強化するというものだ。


 私も試してみたんだけれども魔力を使うというのは、かなり感覚的なものらしく私はまだスタートラインにも立てていない。魔道士ギルドや錬金ギルドも魔力を使う感覚は魔道具を使って覚えさせるみたいで、危険も伴うらしく簡単には教えられないんだって。錬金ギルドにも行ったんだけれど、街出身の人間か領主様の推薦でもないと駄目なんだって。

ムリじゃん!


 でもBランクの冒険者くらいになると、身体強化が使える人がチラホラと出てくるんだっていうから、私にもチャンスはあると思っている。それに私にはスキルがあるから他の人よりは恵まれているしね。


 なので魔力使えないかなーと考えながら、色々と試していたりはするのだ。「はぁー!」とか「みょんみょん〜」とイタイ子みたいな事をやってるくらいだけどね……


 プチプチと薬草を摘んで、腰が曲がって辛くなってきたあたりで街に帰ってきた。アタタ……


 戦利品を持って冒険者ギルドに入り受付へと並ぶ。順番を待っているとエレナさんがいる受付が空いたので、私はそこへ進むと背負い袋を背から下ろして袋を開けようとするが、


「シラハちゃん待って下さい」


 エレナさんがストップをかけてくる。なにかしただろうか? 私はよく分からず首をコテンと傾げると、エレナさんが胸を押さえながら一歩下がり深呼吸をする。調子でも悪いのかな?


「シラハちゃん、今日は別室で提出を行なってもらいます」

「別室……ですか?」

「はい」


 有無を言わせないエレナさんの態度に私は冷や汗が出てくる。私がなにかしてしまったのだろう、きっとお説教だ。だから別室へと通されるに違いない。私は気落ちしながらエレナさんについて行くことにした。


 通された部屋にはテーブルとソファーが置いてあり、テーブルには皮だろうか? シートのような物が敷かれていた。エレナさんは私をソファーに座るように勧めエレナさんも私の対面へと座る。嫌な汗が背中を伝い、俯くと視界がぼやけてくる。


「さて、シラハちゃん」

「ご、ごめんなさい……」

「え? ……ちょ、ちょっとシラハちゃんなんで泣いてるんですか?!」

「だって……なにか悪い事をしちゃったから呼ばれたんですよね?」

「ち、違いますよ!」

「ふぇ?」


 エレナさんに嫌われるのでは? と思ったら涙が溢れそうになったが、すぐにエレナさんに否定された。どうにも肉体年齢に引っ張られているのか、ポロリと涙が出てきてしまった。


「シラハちゃんのその背負い袋の中身って全部提出品なんじゃないですか?」

「そうですけど……」


 鼻をスンと鳴らしながら私が答えると、エレナさんがこめかみを押さえる。私は別室に呼ばれた理由が分かった気がした。


「どれだけ魔物を倒してきたんですか……」

「よ、よくなかったですか?」

「いいえ。大変素晴らしいですよ」


 エレナさんが腰を少し浮かせて私の頭を撫でてくれる。心がホッコリとしちゃうな。とりあえず嫌われている訳ではなくて安心したよ。


「これだけの魔物を薬草採取と並行してどうやって退治したのか、という疑問はありますけど……シラハちゃんの実力はこの目で見ましたからね。ただ他の冒険者の方に比べると採取速度、退治速度が桁違いに速いので今後も別室での提出をお願いする事になるかと思います」

「分かりました」


 私が頷くとエレナさんは軽く微笑み、一言断ってから他の職員さんを呼びに出ていった。分かっていた事だったが、やはり私の戦利品は量が多いらしい。実際にエレナさんに言われては惚ける訳にもいかない。普通でなくても構わないが面倒ごとは避けたいので悩みものである。


 その後、応援に駆けつけた職員さんとエレナさんで査定を行なってから報酬を貰いギルドを後にした。



 程よい疲労感があり、宿に帰ったら気持ちよく眠れそうだ。お湯を貰い身体を拭いたら食事をしてベッドに潜り込む。



 あぁ……お風呂に入りたいなぁ……





シラハ(コテンと首を傾げてみました)

エレナ(なんて愛らしい仕草!)

シラハ(ぐすん……)

エレナ(泣いてるシラハちゃんも可愛い!)

シラハ(また胸押さえてる、調子悪いのかな……心配だなぁ)

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