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5話

簡単な説明回

 お金については、必要経費は領主様持ちという話ではあるが、色々と雑貨を買いたいなら持っていくといいという話になったので、毛皮を一匹のみ剥ぎ取り、残りは燃やすことに。

 ソーニャの魔法でまとめて燃やした後、残った魔石だけを確保した。

 魔石は魔物のみに生成される堆積物らしい。

 これが魔物を狂暴化させているとかないとか本で見たことがあるが、魔力が貯め込まれているため、魔石は魔道具を動かす触媒となっている。


「そこそこの値段で売れるんですかね?」


 持ち帰っても村ではそこまで需要がなかった――というより、取りすぎて余っていた――からか、あまり売れるイメージはなかった。


「ハウンドドッグの魔石は、一日分の宿代ぐらいの価値はあるわ。だいたい一万ゴルドくらいね」


 俺の質問にウィンディさんが答えてくれる。


「ならここには二〇個あるから、二十日分か……」

「そこそこ無駄遣い出来そうだな。旨いもんが食えそうだ」

「確かに! これぐらいあれば、パフェも食べられるわよね」


 ソーニャの発言で思い出す。

 なるほど、パフェ代は必要経費ではないだろう。

 路銀はある程度持たせてもらっているが、そこまで多くもない。

 ここで魔物を狩っておいてよかった。


「魔石はどこでも売れるんですか?」

「雑貨屋で売ってもいいけど、君たち冒険者証は持っているわよね?」

「はい。ここに」

「冒険者ギルドでも売れるわよ。雑貨屋だと安く叩かれる可能性もあるから。それに、冒険者ギルドだとそのままランクの査定にもなるし」

「なるほど」


 ペンダント型の冒険者証。

 命の次に大事だから失くすなと先輩達から口酸っぱく言われているが、活用したことはない。


「……あら、まだ君たち銅級(カッパー)じゃない」

「作ってから全く更新してねーからなぁ」


 ウィンディさんの質問にナギが答えた。

 そう、最初作ったのが三年前。

 第八魔物討伐隊を組む前、必要になるという話でドレスベルグに取りに行った以来、階級は上がっていない。

 開拓村での戦果は、冒険者ギルドでの受注クエストではない――領主様の直接雇用となっている――ので、階級は上がらないのだ。

 つまり、この階級は三年前の実力の証ということである。


「今なら私たち、どれくらいなんだろうね?」

「うーん、流石に鉄級(アイアン)くらいにはなれると思うけど……。あれから結構強くなったと思うし」

「それって上からどれくらいなんだ?」

「うろ覚えだけど、確か六番目くらい……だったかな」


 冒険者のランク的には、青銅級(ブロンズ)からスタートし、銅級(カッパー)鉄級(アイアン)――という順番で上位になっていく。


「そうだ。上からそれぞれ、王金級(オリハルコン)神銀級(ミスリル)金級(ゴールド)級銀(シルバー)鋼鉄級(スチール)、そして鉄級(アイアン)


 俺の回答に、コンラッドさんが補足をくれる。


「ちなみに私たちは銀級(シルバー)よ」

「そうだな」


 鈍く光る冒険者証。

 ウィンディさんとコンラッドさんのものを見て、思わず「おお……」と声が漏れてしまう。


「あれ、シバさんはどうだったっけ?」

「親父は確か神銀級(ミスリル)だったな」

「他の冒険者たちは?」

「あと村の冒険者(やつら)のは知らん」

「だよね……」


 開拓村で冒険者階級の話になることはなく、みんな、誰がどれをどうやって倒したか、くらいの自慢ぐらいしかなかったと思う。

 ただ、流石シバさん。かなり高ランクらしい。


「シバさんは領主様にスカウトされて、開拓村のリーダーになったけど、元々王都でも名の知れた冒険者だったのよ」

「そんなこと親父言っていたな」


 なるほど。

 俺のグレン(とうさん)とクレハ(かあさん)はどれくらいだったのだろうか。

 興味がなかったので、全く訊いていなかった。


「ソーニャの両親は?」

「どうだろう? 聞いたことないなぁ」


 やはりそういうことらしい。


「とりあえず、伯爵様に会う前に、素材は冒険者ギルドで売りましょう。それと、これより先の魔物の討伐はなしとします。見敵必殺してたら一日立っちゃうわよ?」

「えっと……勝手に突っ走ってすみませんでした」

「いやいや、別にさっきの行動を非難してるわけじゃないのよ?」


 ウィンディさんはそう言ってくれるが、協調的な行動を乱したのは間違いないだろう。

 やはり、あの行動は直情的すぎたか。

 ただ数が多かったので、あとあと村や街に影響がないか、少し心配だったのだ。


「まあ、本来なら私たちが先にああいう時の対応とか、言っておかないいけなかったからね。それに、君たちの実力を見せてもらういい機会だったし。コレなら王都でも十分にやっていけるわ、確実に」

「本当ですか?」


 それなら安心だ。


「ただ、言葉遣いは伯爵様に会うまでに矯正しとかないとね。特にナギ君」

「……うっす」


 ウィンディさんにそう言われ、ちょっと照れたように頭を撫でるナギ。

 ナギ(アイツ)、年上の女性に怒られるといつも照れてるような……。

 ……サーニャがすごい目でナギを見ている。

 その様子を見て、苦笑いしながら、ウィンディさんが言う。


「とりあえず、移動を再開しましょ」




*****




 あれから三時間。

 途中辺りから、ちらほらと別の冒険者が見えるようになった。

 街に近づけば、他の街との行商している商人らしき人もうかがえる。

 そして、


「着いた」

「着いたなァ」

「着いた着いた~!」


 辺境伯領の中心地ドレスベルグ。

 王国の東部地域では特に栄えており、そして魔物進行を抑える防壁の役割も果たしている。

 見た目は完全に城塞である。

 門番はウィンディさんとコンラッドさんの顔パスで入ることが出来た。

 何やらコンラッドさんを見て門番の人が緊張していたようだが……。


「ここはいつ見てもガヤガヤしてんな」

「いいじゃない? 街っぽくて。ただ、ちょっと人多い感じがするというかぁ……」


 周りからの視線に顔を顰めているサーニャ。

 まあ、ここらでは数少ないエルフであり、かなりの美貌だ。

 そりゃみんな見ちゃうだろう。俺とかナギは慣れてるけど。

 ただ、ナギの方も見た目はかなりの好青年だし、ウィンディさんやコンラッドさんもかなり美形だ。注目を集めるのも無理はない。

 ……あれ? もしかして普通っぽいの俺だけ。


「二人とも。ここでそんなこと言ってたら、王都じゃやっていけないわよ」


 ナギとサーニャの発言に、笑いながらしゃべりかけて、ウィンディさんが先を進む。

 この道は覚えている。この突き当りが確か冒険者ギルドだったはず。

 途中露天で売っていた食べ物を買ったりしながら、歩くこと一〇分。


「それじゃ着いてきて」


 ちょっと入るのに怖気づいていた俺たちに気付いてくれたのか、先に冒険者ギルドに入ってくれる二人。

 中は活気に冒険者が数人屯っていう。その視線がぐいっとこちらに向き、思わず身構えてしまう。


「こんにちはサリーちゃん。元気?」

「あれ、ウィンディ様じゃないですか。珍しいですね。コンラッドさんも」

「ちょっと野暮用でね」

「……ご無沙汰、だな」


 仲良さそうに受付嬢さんと喋るウィンディさん。

 そして会釈してコンラッドさんも挨拶。

 その様子を周りの冒険者が見ている。


「何かありましたか? 騎士様がこちらに来れるとは。ご依頼とかですか?」

「野暮用はそれじゃないのよね。ほら、三人ともこっち来て」


 呼ばれたので近づく。


「この子達。ドレスベルグ(ここ)に来る前に、魔物狩ってきたのよね。素材取ってきたから、ちょっと買ってあげてくれない?」

「はあ、そういうことですか」


 そう言って、サリーと呼ばれていた女性がこちらを見る。


「こんにちは。素材ということですけど、貴方の後ろにある……それはハウンドドッグの毛皮ですか? そちらになりますか?」

「あ、えっと……」


 ナギが照れたように声をあげる。

 それを横目で見て、溜め息を付きながらサーニャが


「魔石もあるんで、それも一緒に。ほら、さっさと出しなさいよ」

「お、おい。そう急かすなって」


 そう言ってナギは魔石を入れていた袋をドカッとサリーさんの前に置く。


「……えっと、これは?」

「だから、魔石です。さっき狩ったハウンドドッグの」


 そう言って袋開けて、ゴロゴロと魔石を出すサーニャ。

 うわぁ、デスク埋まっちゃった。


「――――えっと」


 困ったようにウィンディさんを見るサリーさん。


「嘘じゃないわよ。この子達が三人で取った魔石よ。ちなみに私とコンラッドは手伝ってないから、この子達の手柄。受注されていたクエストじゃないから、その報酬はないと思うけど」

「……でもこの子達、まだ――」

「開拓村の子なの」

「――なるほど」


 それまで困ったような表情を浮かべていたサリーさんが、納得したように頷く。

 ていうか、今ので何を納得したのか……。


「それじゃ買取します。階級の査定にもしますから、それぞれ冒険者証を出してください」


 サリーさんにそう言われたので、それぞれ出す。


「……銅級(カッパー)、ですか」

「そうね。……言いたいことは分かった。ライル君、ハウンドドッグってどういう魔物かしら」


 ウィンディさんがそう言ってこちらに向いてくる。

 ハウンドドッグっていえば……。


「群れますが、個体としての性能は低いと思います。連携攻撃で錯乱してきますが、何匹か範囲攻撃で倒せれば、かなり焦って連携崩れるので、そこが狙い目かと」

「うーん、そういうのも大事だけど……実際戦ってみた感じ、どうだった?」

「オルトロスよりは弱いですね」


 俺の発言に、合わせてくるナギとサーニャ。


「あいつらすばしっこい癖に魔法も使ってくるからな。ウザイったらありゃしないぜ」

「そうだね。耐性も高いからなかなか魔法も通りにくいよねぇ」

「――――ちょっと斜め上の回答出ちゃった。これでいい、サリーちゃん」

「あ、はい。分かりました。査定します」


 適当に喋っていたら、査定してもらえることに。

 ……今のやり取りは必要だったのか。


「まあハウンドドッグくらいなら、俺なら一人でもどうにかなると思うぜ?」


 そしてナギは格好つけるようにサリーさんに向けて謎のアピール。

 コイツ、綺麗なお姉さんに目がないな。


「私一人だと何匹が逃がしちゃうかもね~? そうなったら嫌だから、ライルは私と一緒に戦ってね?」

「……何で俺は抜かすんだよ」

「ナギは適当にお姉さんでもひっかけて、バサバサ魔物斬ってればいいじゃない」

「このくそ女……」


 いがみ合うサーニャとナギ。

 それを見ていたサリーさんの、困ったような表情を浮かべていたのが、やけに記憶に残った。



 ゴルド:王都でのお金の単価。

 冒険者ギルド:みんなが想像してるやつ

 冒険者ランク;みんなが(ry


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