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第94話 再び招かれざる人


 千春が俺と直樹に施したエンチャントが、全ての攻撃に対してではなく魔法限定でしか発動しないことに対してしょんぼりしていると、西條さんが


「ホント不思議よね。魔法による行為に対して身を守るって思いを込めて、加藤君が刺繍をしてたから効果が現れなかったんだけど、魔法にしろ超能力にしろ私達の思いに反応したモノ達が引き起こす現象なのに、考え方や捉え方、解釈の違いで私達の思惑とは全く違う結果になるんだから厄介よね」


 と言い、俺と直樹を見て


「でも、とにかく二人とも無事に回復出来たんだからオッケーでしょ」


 俺と直樹は同時に拳を握って親指をグッと突き出した。


千春はしょんぼりした表情から、少し柔らかい表情に戻り、西條さんは俺達を見て微笑んでいた。俺は直樹に


「俺の激しい頭痛と直樹の呼吸が出来なかったのが、ヤツ等の能力だったとして、俺と直樹はあいつらとどうやって戦ったら良いんだ」


 直樹が沙織と麗奈を見ながら


「だな、このままヤツ等が諦めて帰ってくれれば良いんだが、野放しにしてはダメな連中だろうしな」


 すると西條さんが


「そ~ね、人としての記憶や意志は残ってるみたいだけど、アレはもうヒトデナシとして、私達は対応するべきだと思うわよ」


 沙織と麗奈が連中と睨み合っている間に、ヤツ等から向けられる敵意に対して何か良い戦い方を考えないとマズイなあ。って思っていると西條さんが赤い目の集団を見ながら


「でもさ、何かあの連中って能力が使えなかったら、ただの雑魚なんじゃないのかしら。沙織ちゃんと麗奈ちゃんが何体か駆除しているうちに、自分達の能力が効かないって分かった途端に、遠巻きになって二人をただ睨んでるだけで何もしてこないじゃない」


 と言って、俺達をみると


「とりあえず、私もあいつらの能力は無効に出来てるから、沙織ちゃんと麗奈ちゃんの援護に行っとくわね」


 と言い、沙織達の方へ歩きだしたと思ったら立ち止まり


「あら、降って来たかも」


 すると、西條さんは空を見上げて降ってくる雨粒を確認すると


「早いとこ駆除して学校に戻らないとね」


 と言って、小走りで沙織達の方に向かって行った。


 う~ん、降って来たかあ。降り出しそうな雲行きだったけど学校までは持たなかったかあ。って思っていると、千春が


「もうさ、特大火力で物凄いのを喰らわせて、一気に全滅させちゃうってのはどうかな」


「あ~、それいいかもな。煩わしい攻撃を喰らう前に物凄いのをお見舞いして、早いとこ終わらせるか」


 って言うと、直樹が焦っている感じで


「おい、アレって」


 急いで沙織達の方へ向かって行った。沙織達の方を見ると、西條さんが沙織達の頭上に浮いていて手足をバタバタ動かしていた。沙織と麗奈が異変に気づいて、宙に浮いている西條さんの足を掴もうと手を伸ばすが届かなかった。西條さんは


「えっ、えっ、ちょっと。なんで~」


 と叫びながら、沙織達を遠巻きに見ている赤い目の集団の方に空中を移動して行く。赤い目の集団も何が起きたのか分からない様子で、空中を移動する西條さんを目で追っていた。


 俺も千春と直樹の後について、沙織達の方に駆け足で向かって行く。西條さんはゆっくりと空中を移動して行くと、赤い目の集団の端の方で立っている男性の目の前で止まった。


「まだ、高校生達なんかと一緒にいたんだね。でもそのお陰でまた会えたよ。コレってもう運命なんじゃないかな。君とはどんなに離れていても巡り逢う運命なんじゃないのかな」


 西條さんを真っ赤に充血した目で見つめていた。えっと、あの男性はどっかで見た事があるような。って思っていると、千春が


「うげぇ、あの人ってヤギ予備軍だった人じゃん」


 そうだった、小学校で西條さんをナンパしていた人だ。まさかここの集団にいたとはな。すると西條さんが宙に浮いたまま


「この間、お断りしましたよね。他を当たって下さい」


「いや、俺はあの日、学校で君に声を掛けてからずっと君のことが頭から離れなくって、毎日ずっと君のことを考えてたんだよ。そしたらこうしてまた君に出逢えた。そして今日、君を見て知ってしまったんだ。俺は君のことを初めて会った時から好きだったってことをね。もうコレって運命なんじゃないかな。ねえそうだろ。君もそう思うだろ」


「いえ、全くそうは思いませんし、迷惑です。早く私をみんなの所に戻してください」


「君は何を照れているんだ。大勢の人前だから恥ずかしいのかな。でも俺は全然気にならないよ、運命の君とずっとこれからは一緒にいられるんだからね。仮にまだ君が俺のことを好きじゃなかったとしても、これからずっと俺のそばにいれば、君は俺のことが絶対に好きになるよ」


「ですから、全くそういう気持ちはありませんし、本当に迷惑です。早く私をみんなの所に戻してください」


「高校生達と一緒にいても不安だろ。俺の力でこれからは君をずっと守ってあげるから何も心配しなくて良いよ」


 何だかスゲー気持ち悪いぞ。身勝手で相手の事なんてお構いなしに、一方的な感情を押し付けてる人を見ていると気分が悪くなるな。って思っていると、直樹が眉間に皺を寄せて


「つまり、あいつは好意で西條さんに対して能力を使ってるから、エンチャントの効果が現れなかったって事になるのか」


 千春が目を見開いて


「あ~、そういう事か。西條さんに危害を加えるつもりが全く無いから、敵意でも何でもないんだもんね。ホント考え方や捉え方、解釈の違いでこっちの思惑とは全く違う結果になっちゃうから厄介だよね」


 う~ん、確かに振り返ってみると、良かれと思ってやった事だったり、相手を励ますための声掛けだったのに、相手がこっちの思惑とは全く違う受け止め方をしてしまった為に、それが原因で相手を怒らしてしまったり、喧嘩にまで発展してしまって、相手との仲が悪くなるパターンもあるもんなあ。


 こっちは相手の事を思って善意で行ったのに、相手は悪意として受け止めてしまって、解釈の違いで結果がまったく異なっちゃうんだから、厄介だよな。


 でも、そんな事よりも、とにかく今の状況を何とかしないとマズイんだった。雨も段々強く降って来てるから早く帰りたいし、この場も早く切り抜けないとだしな。どうする。どうやって西條さんを助けるって考えていると、俺達から西條さんを遮るように五味と久津が立ち塞がった。


 ニヤニヤしながら久津が


「川内と森下に打撃は通じてたみたいだからな。仮に能力が効かなくても、打撃なら通用するんじゃね~のか」


 五味もニヤニヤしながら


「お前ら一切抵抗するなよ、もし歯向かったらこの女がどうなっても知らね~ぞ」


 沙織と麗奈が一瞬身構えたが両手をおろした。直樹も構えを解いてゆっくりと両手をおろした。不味いダラダラ話しなんて聞いていないで一気に全滅させておけば良かった。ヤツ等が動く前に一気に仕掛けるか。って考えていると、沙織と麗奈を遠巻きに見ていた男達がザワザワし始め、男達の中の誰かが


「お~、お前らでかした。さ~て、お嬢ちゃんに酷い事をされたくなかったら、お友達たちはジッとしとくんだよ~」


 ゆっくりと男達が沙織と麗奈ににじり寄って行く。沙織と麗奈はゆっくりと後ろに下がり始める。


 赤い目の男達が


「逃げちゃダメだよ~」


「要は捕まえちまえば良いんだろ」


「単純に腕力だったら俺達には敵わないだろ」


 男達が、沙織と麗奈にゆっくりとジワリジワリとにじり寄って行く。突然、集団の中から勢いよく男が一人飛び出して来た。そして、まるでそれが合図だったかのように、一斉に男達が沙織と麗奈に飛び掛かった。マズイって思ったその時、斜め前にいた直樹が一瞬消えて、直ぐに俺に向かって麗奈が背中を向けて飛んできた。


 麗奈を何とか受け止めたが、男達が奇声を上げながら凄い勢いで群がって来る。俺は男達から守るため、麗奈に覆い被さるようにしてその場に屈む。と同時に、体中に打撃を受け衝撃で一瞬ひるむが、魔法で肉体を強化し物理的な攻撃から身を守ると、麗奈に


「膝を抱えて体を小さくしとけ」


 と言い、男達の打撃が麗奈に当たらないようにさせて、俺は群がる男達の好きに攻撃させておいた。抵抗するなと言われているけど、ヤツ等は気づいていないみたいだから、このまま魔法で身を守りながら切り抜ける方法を考える。


 俺を囲んで蹴ったり殴ったりしているヤツ等が邪魔で、しっかり確認が出来ないけど、直樹が沙織と千春を群がる男達から抱え込んで守っている感じだった。直樹の機転でとりあえず何とかなったけど、これからどうする。


 誰か助けに来てくれないのか、警察や消防の人達が上手い具合に巡回していないのか。赤目の集団が諦めて退散してくれるのを待つか。でも、西條さんがヤツ等に捕まったままだ。どうする、どう切り抜ける。って考えていると、地面で横になり胎児のような姿勢で頭を抱えている麗奈が


「かっ克也君。大丈夫なの」


「とっとりあえず、そっそれなりに衝撃は受けるが、いっ痛みはないから平気だぞ」


「そうなんだ」


 麗奈は俺の胸の辺りで頭を抱えているので、表情は見えないが何となく安心はしてくれたみたいだ。ただ、雨がだいぶ強く降って来ているので、地面で横になっている麗奈の服が濡れてしまって可哀そうだった。


「さっ西條さんの状況って、みっ見えるっか」


 痛みはないが打撃による衝撃を体に受けているから、会話が途切れる。


「五味君と久津君に連れられてこっちに歩いて来てて、仲間割れでもしたのかしら、かなえさんに粘着してた人は、後ろで男達に殴られてる」


 う~ん、どういう状況なのか分からないけど。とりあえず五味と久津が近づいたら、先ずは西條さんを何とかするか。あるいは群がっている男達を瞬殺してそれから近くに来た西條さんの救出か。ってな事を考えていると、俺に群がっている男達の攻撃が止んで


「なあ。お前ら何かしてるだろ」


 俺の後ろの方から五味の声が聞こえた。すると


「おい、全然気持ち良くないぞ」


 と久津の声がして、強く手を叩いたような音が聞こえて


「きゃっ」


 西條さんの悲鳴が聞こえた。と同時に


「くずっ、やめなさいよっ」


 沙織の叫ぶ声が聞こえ、俺の胸元で


「かなえさーん」


 麗奈が西條さんの名を叫んだ。


「さっき五味はお前らに一切抵抗するなって言ったよな」


 久津の声がすると


「やめなさいって言ってるでしょっ」


 沙織が怒鳴り、強く肉を叩いたような音と一緒に


「んっ、くっ、ぐっ」


 痛みに耐えているような感じの、西條さんの声が聞こえた。


「かなえさんっ」


 麗奈が西條さんの名を大声で叫んだ。俺からの位置だと五味と久津は見えないが、察するに久津が西條さんを殴ったんだろうな。マズイ早く何とかしないと。って思っていると、五味と久津が俺からも見える位置に現れた。


 西條さんは両手首を後ろで五味に掴まれいて、久津には髪の毛を掴まれていた。西條さんは下を向いて俯いている。ニヤニヤしながら五味が


「お~、これだよこの感じだよ。なあ、やっぱお前ら何かしてるだろ」


 と言い、俺を見ていた。すると久津が、西條さんの髪の毛を左手で引っ張り顔を上げさせて


「さっき五味はお前らに、歯向かったらこの女がどうなっても知らねえって言ったよな」


 ニヤニヤしながら俺達に西條さんの顔が見えるようにした。西條さんは涙を流していて、顔は赤く腫れて鼻と口からは血が流れていた。俺が久津を睨むと、久津はニヤニヤしながら右拳を肩まで振り上げた。


「くずー、やめなさいって言ってるでしょ」


 沙織が怒鳴るが、久津は西條さんの顔に何度も拳を叩きつける。


「かなえさん」


 麗奈が西條さんの名を大声で叫ぶ。西條さんは顔を何度も殴られ


「んっ、くっ、ぐっ」


 泣きながら痛みに耐えているような感じだった。沙織と麗奈が西條さんの名を何度も叫んでいる。自分の痛みなら耐えられるが、仲間が苦しんでいる姿を見るのはイヤ過ぎる。早く何とかしてあげたい。どうする、どう動けば最短で西條さんを助けられる。


 五味が首を傾けながら


「なあ、何してるのか知らねえけど。川内と森下がやられてる時は全然気持ち良くなかったのに、この女をいたぶると気持ち良いってどういう事なんだ」


 西條さんを殴ることを止めた久津が


「もう、何もするなよ。じゃないとこの女の顔がもっとひで~事になるぞ」


 久津に髪の毛を引っ張られて、西條さんが顔を上げた。まぶたは赤くパンパンに腫れてしまって瞳が見えていない。鼻からは血がドクドク流れている。殴られて口の中を切ったのか、唇が切れてしまったのか口の周りは血だらけだ。そして、鼻と口の周りの血が雨と涙で流されて、白いパーカーの首元から胸元辺りまで、赤く血で染まっていた。


 沙織と麗奈が西條さんの名を一際大きな声で叫ぶと同時に、俺を囲んでいた男達が奇声を上げて殴り掛かって来た。





 男達は終始奇声を上げながら俺に打撃を与え続けている。


 少し離れた場所では沙織と千春が直樹の名を叫んでいる。五味と久津がゲラゲラ高笑いしている。西條さんは泣いているのか痛みに耐えているのか、ずっと地面を見て俯いていた。麗奈は四つん這いになっている俺の下で、自分の体が俺の体の外に出ないように、膝を曲げ頭を抱えて静かにしている。


 俺は麗奈が怪我をしないように、体全体を使って男達からの打撃を防いでいるのだが、時折麗奈にも打撃が届いてしまっているようで、何度か麗奈が呻き声を上げていた。


 男達は何故か凶器は使わないで、素手で俺に打撃を与え続けている。なので何とかまだ男達の打撃に耐えていられていた。今は痛みよりも殴られ続けた打撲の影響で、体が熱かった。打撃に耐えてはいるけれど、たまに頭に打撃を喰らって何度か意識が飛びそうになった。だから、まだ意識がハッキリ保てているうちに、早くこの状況を何とかしたい。そして、とにかく早く西條さんを五味と久津から助けたい。体力があるうちに早く何とかしないとって思い、気持ちが焦る。


 こいつらは諦めて退散したりはしないのか。タイミング良く巡回している警察や消防の人達が助けに来てはくれないのか。俺がまだ耐えられているって事は直樹もまだ大丈夫なはずだから、直樹達の方で何か動きがあればチャンスがあるはずだ。どうする、どう動くべきだって事を考えていると、沙織と千春が直樹の名を叫んだ。


 すると男達が


「バカヤロー。刃物は使うな」


「あっさり殺っちまったら、あっという間に終わっちまうだ~が」


 あ~、そういう事。こいつらは俺達をいたぶって楽しんでるのね。直樹は大丈夫なのかって思っていると


「私の事は放っといて良いから。戦って」


 西條さんが叫んだ。五味と久津が突然叫んだ西條さんに驚いたが、すぐに五味が西條さんを殴った。でも、西條さんは大きな声で


「言ったでしょ、こんな状況はイヤなの」


 と叫ぶ。そしてまた五味に殴られるが、俺達を見て


「私の事は放っといて良いから」


 と叫び、五味と久津に殴られ地面に倒れた。それでも、西條さんは地面に手を着き、体を起こし声がかすれるほどの大声で


「たたかってー」


 と叫んだ。西條さんは地面に手を着いた状態で久津に顔面を蹴られて倒れた。沙織と麗奈が大声で西條さんの名を何度も叫んだ。西條さんはまた地面に手を着き体を起こすと


「私の事は放っといて良いから」


 かすれた声で言うと、俺達を見て


「たたかってー」

 

 大声で叫んだ。


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