第92話 再び呼び出すモノ
レーナさんが少し表情を硬くして
「そして環境が変化した事により、今まで遠くの場所で存在していたモノが私達と同じ場所に存在するようになりました。つまり、川内さん達が召喚魔法とおっしゃっている行為が、環境の変化により容易に出来るようになりました」
召喚魔法かあ。レーナさんからは呼び出すのに必要となる対価が、相手の文化や価値観の違いで、色々と想像を超えることを要求されるから止めた方が良いって言われてからは、興味がなくなったんだよなあ。それまでは召喚魔法って多少憧れてはいたんだけどな。
「例えるならば、今までは呼び出すモノ達がマンションの四階で生活しおり、私達は同じマンションの三階で生活してました。なので、呼び出すモノの部屋を確認し在宅ならば声を掛けて下の階まで来てもらってたのですが、環境が変化した事により、今は三階の住人である私達が、四階に引っ越した感じになっておりまして、呼び出すモノ達と同じ階層で生活している感じになっております。ですので、私達が肉眼で認識出来ていないだけでモノ達と同様に、至る所に今まで呼び出していたモノ達も存在してる状態となり、今までよりも身近な存在になってしまいました」
う~ん、それって何が問題なんだろう。今まで呼び出すのにわざわざ四階から三階に来てもっていたのが、同じ階層になったんだから色々とラクになって良かったんじゃないのかなあ。
「四階の住人達は意思の疎通が出来る存在もおりますが、私達とは物事の捉え方や考え方が異なりますので、何かとトラブルが発生しやすいのです。例えば、生まれた国や育った環境によって常識が異なるように、こちらが当たり前と思っていることが、相手にとっては当たり前では無い事が多々あります。そして、何よりも私達と違って肉体を持たない存在ですので、価値観がまったく異なります」
肉体を持たない存在ってどんな存在なんだ。やっぱ幽霊みたいな感じなのかな。
「人の感情によって発生するモノ、感情の昂りを抑え切れない人物に感情的な行動を取らせるモノ、本人の強い願望を叶えるモノ、そして四階の住人達、それらの全てが肉体を持たない存在ですので、私達の目で見て確認する事が出来ません。人は光が物体に反射する事で初めて肉眼でその物体を認識する事が出来るのですが、漂っているモノ達や四階の住人達は光を反射したり光を遮る肉体を持っていないので、私達の目で見ることが出来ないのです。ただし、私達に反応して感情を煽っている時はモノ達が私達に存在を認識出来るように変化させてますので、暗闇で光が無くて周りが何も見えなくても、そのモノだけは見えるようになります」
あ~、よく怖い話しとかで、暗闇の中でぼんやりと老婆が見えただとか、髪の長い女性が立っていたとかって聞いたりするな。
「そして肉体を持たないということは、私達のように食事をし肉体を維持する必要もございません。肉体を動かすために必要なカロリーの摂取も不要となります。なので、肉体を持たない存在達が欲する物が、私達の感情から生じる思いだったり、願望を実現させるために必要となるはずだった出来事だったりするのです。先ほどもお話ししましたが、モノ達には善悪の判断は出来ませんし、四階の住人達は意志の疎通が出来る存在もおりますが、私達とは価値観が違いますので、こちらの都合はお構いなしに頭に思い浮かべてしまった願望を、何の躊躇も無く即座に実行したりもします」
う~ん、何が問題なんだろうか。自分の思い通りに物事が実現するのならば、それこそ夢みたいな話しで良い事だと思うんだけどなあ。リサッチさんが俺を見てニヤニヤしてるけど、何が可笑しいんだろうか。多少リサッチさんのことは気にはなるが、レーナさんの話しに耳を傾けよう。
「なので、先ほどもお話ししたように、全ての人達が環境が変わったことに気づけば、川内さんや小学校で避難してる人達のように、意思の力を上手に使って生活に役立てる人達もいらっしゃるでしょうが、物事を深く考える機会に恵まれなかった精神年齢の低い愚かな者達が、何かを行った事でその先どんな状況になるのかを考慮せず、好き勝手に自身の思うがままに欲求を満たすためだけに、四階の住人達に願望を称えたら、更に世の中が混乱する事は避けられない事態となります」
あ~、そうだった。世の中の全ての人達が手を取り合って協力して、生活しようとする人達ばかりじゃなかったんだった。話しを聞いてると色んな物事がラクになるし、感情を上手くコントロールすれば特に問題ないじゃんって思っちゃうけど、毎回自分勝手なヤツ等の存在を忘れちゃうなあ。すると、リサッチさんが俺を見て
「気づいたみたいね、つまり、三階で生活してた私達が四階で生活してた違うコミュニティーの人達と、急に一緒に生活することになったんだけど、こっちの常識は通用しないし、価値観も違うからトラブルは避けられないでしょ。そんな住人達と仲良く共存する為には、四階の常識に詳しかったりむこうの価値観を理解してる存在が必要になるじゃない。だから、私達が今までとは異なる環境に社会が馴染むまでは、何かしらの介入をすることに決まったのよ」
なるほどね~。目に見えないモノの存在は厄介だし、自分の思い通りに魔法も使えるようになっちゃったんだよなあ。それに、自分勝手に振る舞うヤツ等のことも厄介なのに価値観の違うモノ達まで現れたら、そりゃ~世の中がしっちゃかめっちゃかになっちゃうよなあ。って考えていると、リサッチさんが
「レーナから聞いてると思うけど、四階の住人達とはどんな些細な事でもやり取りしちゃダメだからね。むこうがこちら側に求めて来る事って私達からしたらロクでもない事ばかりなんだからね」
流石に気になるのでリサッチさんに
「参考までにどんなことを求めて来るのかって聞かせてもらう事って出来ますか」
すると、リサッチさんがシチューに浸したパンを一口食べると
「さっき、レーナが魔法って言われてる行為について話してたじゃない、思い浮かべた事を実現させるために、起きるはずだった出来事を、モノが奪って結果を実現させてるって話しね」
魔法で建物を燃そうって思ったら、俺達が建物を燃やすために起こす色んな出来事を、モノが一遍に奪って火を発生させるってヤツだな、建物を燃やすための準備や時間は省略されるし、人手も不要になるからラク出来きて良いじゃんって思ったんだよなあ。
「例えばさ、あなたに薪はこっちで用意するから、後で焚火を庭に作って欲しいってお願いするとするじゃない。そしたら、あなたは一人で焚火を作るかもしれないし、お友達の誰かと一緒に作るかもしれない、あるいは友達みんなと一緒かもしれないし、レーナと作るかも知れないじゃない、ちょっと考えただけでも焚火を作るのに色んなパターンが発生するでしょ。でも、魔法を使ったら薪に火をつけたら直ぐに終わるわよね」
レーナさんと焚火かあ。焚火の準備をしながら色々とお話ししたいなあ。そう考えると、魔法は使わないで自力で焚火を作りたいな。
「要は魔法って言われる行為って、実現させるまでに発生すると考えられる、全ての出来事を奪い取ってるんだけど気づいてたかしら、言い換えるならば、色んな可能性を全て奪われてる行為なのよね」
そう言われると何となく、何でもかんでも魔法で済ませるのは勿体なく思えて来るなあ。
「それと同じ感じで、あなた達がヒトデナシって呼んでるモノ達がいるでしょ。環境が変化する前なら強い感情に流される程度だったんだけど、今は環境が変化したことで、モノ達の特性が制限なく発揮できるもんだから厄介なんだけど。アレって生きていれば死ぬまでの生活の中で起こっていたであろう色んな出来事の中で、発生するはずだった様々な可能性を全てその人から奪い取って、その人の存在その物を変化させてるのよね。魔法は自身の求める結果を実現させる行為だからまだ都合は良いんだけど、自身の存在の変化はまさに命を奪われてしまう行為なんだから、私達からしたら迷惑な話しよね」
う~ん、深く考えてなかったけど、可能性って言うか要はこれから先に起こる予定だった、未来を奪われているって事なんだよな。そう考えると、どうでも良い感じの未来の出来事なら、遠慮なくモノ達に奪われても構わないって感じだけど、これか先に楽しかったり嬉しかったりする出来事が待っているかもしれないのなら、奪われたくないって思っちゃうよなあ。
「ヒトデナシって呼ばれてるモノ達は、存在がもう私達とは全く異なってるから、ある程度のダメージを与えると消滅しちゃうのよね。でも、動く死体に関してはとり憑く相手が既に絶命してるんだから、その人にはその先の生活で何か起きる出来事なんて発生しないでしょ。だから、その人の存在を十分に変化させることが出来ないから、腐敗を止めて動き回って抱き着くことくらいしか出来ないのよね。ただ、人の首の後ろ辺りにモノ達の出入口があって、そこを破壊してしまえば、そこからモノが体外に出るから、もう死体を動かすことが出来なくなるのよね。例えるなら、水で満たされた風船に穴をあけると、そこから水が全部出ちゃうって感じかな」
息を引き取った人達を静かに眠らせておいて欲しいって思うのは、こっちの都合で、モノ達からしたら恐怖や悲しみの感情を得られるんだから、死体で動くってのは効率の良い行動だったりもするんだろうな。本当に迷惑な話しだよなあ。
「四階の住人達はこちらの要望に対して、魔法を引き起こす時と同じ感じで、これから起きるであろう色んな可能性を対価として求めて来る住人も存在してるのよ。全ての可能性を奪う事で、この先起きるはずだった多くの出来事の中で、発生するはずだった様々な感情の全てを奪えるからなんだけど。あまりよく分かって無いみたいね」
ちょっと難しくて首を傾げていると、リサッチさんが俺の心境を察してくれた。するとレーナさんが
「私は業務に支障が出ないように味覚を対価にしたので、今までもこれからも、飲食行為で得られはずだった様々な感情をすでに奪われています」
えっ、レーナさん。何を食べても味がしないってことなの。それって食事が楽しくないじゃん。何でそんな思い切ったことをしたんだ。って驚いていると、ダーシャお嬢様が
「私は見ての通り両足の機能を見返りにしたって感じよ。でも、何処に行くにも車椅子が必要になるから、常に誰かしら私について来ないと行けなくなでしょ、そうする事で煩わしい連中が近づいて来ても、適当に追い払ってくれるから、何気にラクさせてもらってるわよ」
ダーシャお嬢様は笑顔で話しているけど、俺は小学校で車椅子利用者を見て、自分の足が何不自由なく動くことに安堵してたのに。それって物凄い決断なんじゃないのかな。流石にみんなで追い掛けっことかして遊んだりはもうしないけど、みんなと何かしている時に、テンションが上がってチョット走ったりしたくなる時とかに、自分だけ置いてけぼりとかって寂しいんだけど。ちょっとって言うか、俺には絶対に真似できない事だな。でも、自分の足で行う全ての行為を対価にしてまでして、ダーシャお嬢様は何を四階の住人から得たんだろう。するとリサッチさんが
「まあ、私達は対価に見合った恩恵を四階の住人達から受けてるって思ってるから、問題は無いんだけど、人によっては自分に都合の良くない対価だったりするから、私達と同じ住人とのやり取りだったにも関わらず、悪い存在って思ってる人もいるわね。古い文献やおとぎ話でも、国と地域によっては同じ人物が良者だったり悪者だったりするでしょ。そんな感じよ」
と言って、片目をパチッと閉じた。へ~、古い文献ねえ、ちょっと気になったので
「その、四階の住人達は昔っから存在してたのですか」
リサッチさんが片方の眉をピクッとさせて
「ええ、私達よりも確実に昔っから存在してるわよ。それに、私達三階の住人に関心を持ってる存在もいるし、興味を示してる存在もいるわよ。そんな住人達は私達の文化や生態についても詳しかったりするから、話しが通じやすいのよね。ほらあなただって何処かの国のことや生き物のことだって、興味や関心のが無ければ調べたりなんてしないでしょ」
確かに、自分に興味があったりテストで覚えておかないとダメってこと以外は、わざわざ調べたりはしないわな。でも、古い文献やおとぎ話に登場する存在ってことは
「今回みたいな環境の変化って、今までも頻繁に起こってたんですか」
リサッチさんがグラスに注がれた、水なのかお酒なのか分からない、何かの液体を一口飲んで
「そうね、チョコチョコ発生してたわよ。昔っから局地的に色んな地域で、三階から四階に引っ越し騒動ってあったのよね。それに、呼び出し方を知ってる限られた一部の人達は、引っ越しが発生するタイミングが分かってるから、場合によっては住人と取引をしたりもしてたしね。ただ、今と違って昔は情報の伝達が恐ろしく遅かったから、突発的な引っ越しが発生したって噂を聞いて、仮にその地域を訪れても、すでに事態が収まって全てが終わってたって感じで、結局住人には会えなかったりしてたみたいね。ほら今と違って昔は移動手段が少なかったし、物凄く遅かったでしょ」
あ~、車や電車がない時代って、隣町に行くのだって朝から出発して帰ってくる頃には、下手したら日が暮れてたんだろうしなあ。そうなると、引っ越しが発生した噂だって耳に届くまでにかなりの時間が生じるんだろうし、噂を耳にしてから現地まで移動するってなっても、到着する頃にはさらに時間が経過しているんだろうから、引っ越し騒動も終わっちゃってたかもしれないよなあ。
「だから昔の引っ越し騒動での出来事は、たまたまその時に四階の住人と接触した人達が文献に残してたり、その地域の民話として残ってたりするのよ。それで、あなた達が言う召喚魔法ってのを試みた人達は、残された文献や伝承で住人の姿形を認識してるから、色んな人達が実際は自分の感情から生じたモノが反応して見えてる現象なのに、その事に気づかないで自分が呼び出したモノと勘違いしたりもしてるわね」
となると、おとぎ話とか色んな文献に登場してくる精霊とか、召喚魔法で呼び出したモンスターとかって、あながち空想って事でもなくって、実際に存在しているモノもあったのかもしれないなあ。
「ただ、今は情報の伝達が恐ろしく早いから、偶然住人を目撃した人達が情報を発信したりするから、隠蔽作業が大変だったりもするのよね。たまに作業が遅れて情報が世に出回ったりもするんだけど、そんな時はフェイクニュースを意図的に拡散させて情報操作してたわよ」
と言って、片目をパチッと閉じた。そうだった、リサッチさんは超有名企業のご令嬢だった。すると、ダーシャお嬢様がナプキンで口元を拭うと
「何となくだけど今の世の中の状態を分かってもらえたかしら、世の中が色んな意味で混乱してるから、今までみたいに様々な企業が足並みそろえて復旧作業なんて出来ないのよ。だからこの先いつまで経っても電気は復旧しないわよ」
そしてリサッチさんが
「ちなみに太陽フレアが原因で電気は全世界で使えない状態よ、そして、停電から三日過ぎくらいで、社会システムを作った者達がマンションの三階から四階へ強制的に引っ越しさせたって感じね。電気が使えなくなったから、せっかく築き上げた社会システムが崩壊した事で自棄を起こしちゃったのかもね」
社会システムを作った者達からしたら、電気の使えなくなった社会だと、今まで通りに負の感情やネガティブな感情が発生しなくなるから、深刻な食糧問題に発展する事案なんだろうけど、俺達からしたら物凄く迷惑な話なんだけどなあ。って思っていると、リサッチさんが
「私達は病院で家族のお見舞いに行ってたんだけど、停電しちゃったから先ずは病院内で色々と状況の整理をしてて、ある程度状況の確認が出来たからそろそろ家に帰ろうって思ってたら、強制的に環境を変化させたせいで、私達全員が弱体化しちゃったのよね。体が急激な変化に耐えられなくて高山病みたいな感じでヘロヘロになってったのよ。そんなヘロヘロ状態だった時に、四階の住人に体をいじられたヤツが現れたから、アリョーニャとレーナが調査に行ったんだけど、あなたも知っての通り捕まっちゃったでしょ」
なるほどね~。アレさんの話しだとダーシャお嬢様が一番強いって言ってたし、お見舞い中に、他にもボディーガードはいたはずなのに、アレさんとレーナさんは囚われていたのが不思議だったんだけど、全員が弱体化してたんなら仕方がないよね。
「病院に滞在していた時は、まだ世の中の状況を把握しきれてなかったから、あの時点ではまだうちらは色々と動けなかったのよね。そんな時にあなた達が動いてくれたから本当に助かったのよ。改めて感謝するわ。ありがとうね」
リサッチさんが丁寧にお辞儀をした。俺もそうだが他のみんなもつられてお辞儀をしていた。すると、ダーシャお嬢様が
「あの病院にいた赤い目の人物と、昨日あなたに声を掛けてた赤い目の集団ね、アレは四階の住人の仕業なの。体の一部を寄生させて本人の意志で、ある程度は行動出来るようにして操っているって感じね。そうする事で乗っ取ってる体の全てを操作する必要がないからラクだし、ある程度自由意思で複数人を一遍に行動させたほうが、沢山の感情を様々な場所から集められるでしょ」
う~ん、何だか怪しいと言うか、イヤな感じはしていたけど、五味も久津も既に人ではないモノになちゃってたのかあ。俺達からしたらスゲー迷惑な話しだけど、四階の住人からしたら、ただ好きな感情を集めているだけなんだよなあ。う~ん厄介な話しだなあ。
「そして、その住人の好む感情は、自分より弱い立場の人達を助ける事で得られる優越感だったり、周りから称賛される事で得られる感情だったり、要は自己顕示欲になるのかしらね。ただ良い方向で働いてくれたら問題ないんだけど、人を陥れたり相手に力を誇示して得る優越感だったり、周りからしたら迷惑な自己顕示欲だったりすると厄介だったりするのよね」
病院にいたスウェットのお兄さんは、怒りや恨みの感情を相手から向けられるとたまらないって言っていたけど、アレって弱い立場の人を虐めて優越感に浸っていただけなのかもしれないなあ。そう考えると、体中をボロボロにされていた人達に対して胸が痛むなあ。それと、自己顕示欲だったり優越感は、五味と久津自身が好きな感情でもあるなあ。あいつらは迷惑な方向に突き進んで行くからなあ。やっぱ、あいつらとは絶対に関わりたくないなあ。って思っていると、リサッチさんが
「あなたもお友達も、赤い目の集団の考えに賛同はしてないみたいだけど、もしかしたら今後どこかで関わるかも知れないから、用心はしとくようにね」
だよね~、あいつら当分病院を拠点にして活動するって言ってたよなあ。今日は小学校で、エンチャントするための刺繍や駅周辺の情報収集だけど、明日は駅周辺に行くんだようなあ。変な集団と接触しなければ良いなあ。って思っていると、ダーシャお嬢様が
「私は正直な話し、世界の平和はどうでも良いんだけど、私の周りの人達が傷ついたり悲しんだりするのは見たくないし、そうはさせたくないの。だから、私の周りの平和を維持する為に、取り巻く環境を整えなといつまで経っても、私は安心する事が出来ないの。それで、私は社会がある程度安定するまでは、世の中に介入する事にしたんだけど」
と言うと、少し表情を柔らかくて
「今迄の社会システムが崩壊したって事は、これから先、当たり前だった大学へ進学したり、どこかの企業に就職したりってシステムすら存在しなくなってしまった訳なんだけど、でも、今迄は学校で知識や教養を学んで社会に出て、更に自分を成長させるってことが出来る社会でもあったのよね」
すると、ダーシャお嬢様は両手を広げて
「そこで、あなた達に提案なんだけど、私のところでこれからの新しい環境を生き抜いていくために、必要な知識や教養を学ぶつもりはないかしら。あなた達の家族のことが気になるのならば、私達が責任もって確実に保護するし一緒に生活したいのならば住居も用意するわ。私の大切なアリョーニャとレーナを助けたくれた感謝の気持ちでもあるんだけど、もちろん即決しろとは言わない、じっくりと考えてから決断すれば良いからね。私達はここの住居を拠点として当分は動かないから、いつでも良いから訪ねて来てね。もちろん遊びに訪れたとしても、私達はチャンと歓迎するわよ」
と言うと、片目をパチッと閉じた。




