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第90話 手を差し伸べること

 リサッチさんが真剣な表情で


「そもそも、何であなたは、私達が苦しんでいる人達を助けないといけないって思ったのかしら」


「えっ、世の中のことっていうか、負の感情が発生する社会システムのことを知ってるんだし、それによって世の中の人達が苦しんだり悲しんだり、色々と迷惑な行為を受けてるってことを知ってるんだから、精神年齢の高い人達と一緒に色んな人達を助けたら良いんじゃないのかなって思いまして」


 俺って何か間違えた事を言ってるのかな。リサッチさんも何気に目力が強いから、何だか責められている気持ちになるなあ。


「こう見えて、私はレーナと一緒で困っている人がいたら、できる限りは手を差し伸べて早く問題を解決させてあげたいって思う性格なのよ」


 いや、別に目つきが鋭いからってリサッチさんが冷たい性格なんじゃないかとは全然思っていませんですし、なぜ急に性格の話しなんだ。って思っていると


「昨日、私達もある程度の事柄には介入しても良い事になったから、明日からは学校に漂ってるモノを掃除したり、モノに纏わりつかれて苦しんでる人達を、レーナとあなたが紹介してくれた山口さんと一緒に、色々と困っている人達を助けに行く予定よ」


 あ~、なるほどね~。昨日はまだ世間の事柄に介入しないって取り決めがあったもんだから、校舎の四階でモノに纏わりつかれていた人達がいても、レーナさんは手出しが出来なかったから悔しそうな表情をしていたのか。明日は麗奈の家に行く予定なんだけど、出来ればレーナさんと一緒に学校の手伝いをしたいなあ。って考えていると、リサッチさんが


「でも、ダーシャの考えは違うの、今回は学校で多少なりともお世話になったから、そのお礼として私やレーナが助けに行く事にオッケーが出たけど、いくら私達の方針が変わったからって、明日の私達の行動は今迄にないくらい物凄く甘い判断なのよ」


 なんで困っている人を助けちゃダメなんだ。助けられるのなら助けちゃえば良いのに、そんで困ってる人は問題が解決するんだから、ラクになって喜ぶんだろうし、こっちは相手が辛い表情から笑顔に変わった事で嬉しく思うし、感謝もされるんだろうから、ありがとうって言われたりして、気分も良くなるじゃん。って思っているとダーシャお嬢様が


「人を助ける行為って、見方を変えると困難な問題を目の前にしてる当事者から、どのようにして問題を解決したらよいのか、何か良い方法や手段はないのか、どうすれば最善と言えるような結果になるのか、そんな色々と考える機会を奪ってしまってる行為だって事に気づいてるのかしら」


 いや~あ。そっち目線で考えたことは今まで一度も無いな。そもそも、誰かが困っていたら難しい事なんて考えないで、自然と手を差し伸べちゃうもんだもんなあ。


「目の前にある困難を自力で解決することが出来ないからって、第三者にお願いして問題を解決しても、また同じ困難に遭遇した時に周りに誰もいなかったらどうするの」


 えっ、そしたらまた助けてくれる誰かを探すんじゃないのか。


「目の前の困難に、どうやって立ち向かって行けばよいのかを真剣に考えれば、別に人の手を借りなくても解決出来る事もあったんじゃないのかしら。人の優しさに甘えているだけで、考える事を放棄してラクをしてるだけなんじゃないのかしら。真剣に考えることをしないから、いつまで経っても同じ問題で苦しんで、誰も手を差し伸べてくれなければ、周りの環境のせいにして、自分の問題なのにも関わらず、自分で勝手に周囲を憎んでる。そんな残念な人って沢山いるわよね」


 あ~、それって俺が一番キライなタイプの人物像だ。弱い立場を利用して強い立場の人達を自分の都合よく使ってラクしてるヤツだ。


「人って色んな面で余裕が出来ると、自分より弱いと思う相手に対して手を差し伸べてしまうものなの。でも、その行為が相手の成長を妨げてるって事に気づいている人は少数なのよ。困難な問題に対して誰の手も借りないで、自力で立ち向かって解決出来るようになれば、また同じ問題が発生しても、既に解決済みだから、その人はもう同じ事で苦しむことは無いでしょ。成長を見守ることも相手の事を思っての行為だって理解出来れば、それも優しさだって思えないかしら」


 う~ん、ダーシャお嬢様みたいに物事を考えたことが今までなかったけど、言われてみると確かにそうかも知れないよなあ。相手のこと見放すとか見捨てるとかじゃなくて、あえて考える時間を与えると言うか、向き合ってもらおうとしてるんだもんなあ。そもそも、困難から逃げないで正面からしっかり受け止めて、真剣にじっくりと考えることも必要だよなあ。じゃないと、いつまで経っても成長はしないもんなあ。


 そう考えると、相手のことを思っての行為なんだから、確かに優しさと言えるよなあ。ってな事を考えていると、リサッチさんが


「さて、ダーシャの話しを聞いたあなたは、どうやって世の中の苦しんでる人達を助けるのかしら」


 えっ、急にそんな事を言われても分かりません。としか言いようがないんだけど、そのまま答えたら怒られそうだしなあ。


「じゃあ、どの程度の苦しみや悲しみで困ってる人達を助けるのかしら、失恋のショックで苦しんでる人、最愛の人を失って悲しんでる人、学校の成績が悪くて苦しんでる人、仕事の業績が悪くて悲しんでる人、まさか全ての人達の苦しも悲しみも助けようって思ってないわよね」


 いや、だから急に言われても何て答えたら良いのか分からないし、なんでそんな事を俺に聞いて来るのって感じで、俺が困っている状態なんですけど。


「そもそも、本当にその人達は苦しんだり悲しんだりしてるのかしら、優しい人から手を差し伸べてもらうのを待ってたりとかしてないわよね。苦しみや悲しみの原因って何なのかしら、本人が至らなかった事によって、あるいは考慮が足りなかったために引き起こされた事が原因だったりはしないわよね。苦しんだり悲しんだりしなくて済む方法や、手段をしっかり考えて取った行動なのかしら。起こりうる色んな可能性をしっかり考えて、最善と思われる行動を取った結果だったのかしら」


 う~ん、さっきダーシャお嬢様が話してたことだよなあ。


「困難な状況になると人に頼って何とかしようとするのは、単純に人に甘えてるだけの子供でしょ。苦しみや悲しみの原因が本人の考えや思慮が足りなかったのなら、それは誰のせいでも無く、自分のせいでしょ。なのに、苦しんだり悲しんだりして嘆いてるんなら、それって頭の働きが鈍い愚か者でしょ。そんな人達もあなたは私達に助けろって言うのかしら」


「いや、流石にそんな人達は放っとくって言ったら怒られるかもですが、自分自身で何とかして解決しなさいって思います」


「でしょ、だから精神年齢の高い人達が行う働きかけの中で、精神年齢の低い人達が自分自身で色んな物事に気づいて理解してもらう為に、私達は精神年齢の高い人達を援助したり支援してるのよ」


 あ~、なるほどね~。色んな考え方はあるかもだけど、俺は個人的には共感できる話しだったので


「すいませんでした。やっぱり俺ってまだ色んな事を知らないので、色々と深く考えもしないで、簡単にお嬢様達が苦しんでる人達を助けないのかって聞いてしまいました。でも、話しを聞いて納得しました。俺もその考え方に賛成です」


 するとリサッチさんが口元に笑みを浮かべて


「でしょ~ね。だってあなた、自分の周りが平和ならそれだけで十分で、世界の平和とかってどうでも良いんでしょ」


 俺は昨日の校長室での話しが出て来たので、驚いて


「なんで、その話しを覚えてるんですか」


 リサッチさんがダーシャお嬢様を見ていた。レーナさんは俺を見てニッコリ微笑んでいた。すると、ダーシャお嬢様が少し頬をピクピクさせながら


「そのセリフね、私が普段からよく言うセリフなのよ」


 頭を抱えて俯いてしまった。それを見たリサッチさんがゲラゲラ笑いながら


「あなたが昨日そのセリフを言った時は笑いを堪えるのに必死だったわよ、まさかこの国でダーシャと同じセリフを、真顔でサラッと言っちゃう人物がいるだなんて思ってもみなかったからね~。あ~、お腹痛い~」


 と言って、お腹を抱えて高笑いしながら


「でさ、うちの上司と同じ雰囲気を醸し出してたからさ、てっきり上司と話しをして色々と考え方が感化されちゃったから、ダーシャと同じことを言ったのかって、あの時は思ったりもしてたのよね。でも、聞けば上司のことなんて忘れちゃってたじゃない。となると素でその考え方な訳でしょ。そう思うと笑いが止まらなくてね。ひ~、お腹痛い~」


 う~ん、どうしよう。リサッチさんはお腹を抱えてヒクヒクしてるし。レーナさんは何が嬉しいのか俺を見て微笑んだままだ。でも、やっぱレーナさんの笑顔は素敵だ。ってな事を思っているとダーシャお嬢様が


「同じ志を持つあなたに私からのアドバイスよ。これからも自分の周りの平和を維持し続けたいのなら、色んな力をつけなさい、そして日々その力を鍛えなさい」


 俺のことを睨んではいないと思うのだが、今日会った中で一番目力が強いので目を逸らしちゃいそうだったが、黙ってジッとダーシャお嬢様の目を見つめ返していると


「ここで言う力っていうのは、腕力もそうだけどそれだけじゃないのよ。語尾に力ってつく言葉は全て本人次第でいくらでも鍛えて伸ばせることが出来るの。だから、自分の周りの平和を望むのならば、力をつけなさい。体力、知力、財力、影響力、包容力、洞察力、色々と力のつく言葉は沢山あるでしょ。だから力を鍛えて望みを叶えるために励みなさい」


 すると、少し表情を柔らかくて


「構わないわ始めちゃって。準備が整ったみたいなので食事にしましょう」


 言われるまで気づかなかったが、お姉さん達が部屋の壁際で、レストランとかでよく見かける料理を乗せたワゴンの前に、静かに立って並んでいた。


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