第88話 社会のシステム
俺達の様子を静かに見ていたダーシャお嬢様が
「料理が出来上がるまで時間があるから、その間に少し話しをするわね」
すると、ゆっくり俺達を見て
「昨日の夜に決めた事なんだけど、今迄は水面下で目立たないようにして、何でもかんでも世間の出来事に介入しないようにしてたんだけど、今後は私達もある程度の事柄には介入する事にしたの」
なんだ、話しを聞く限りだとダーシャお嬢様達が秘密の組織みたいで格好良いぞ。千春も沙織もこの手の話しは好きだから少しソワソワしている感じだ。
「それと、あなた達は期待してるのかもだけど、この先いつまで経っても電気は復旧しないわよ」
ダーシャお嬢様がそう言うと、みんな同時に「えっ」て顔をしていた。
いつもなら、千春か沙織が真っ先に質問しそうな感じなんだが、お嬢様を前にして緊張しているのか、電気の復旧について聞いて良いのか迷っている感じだった。なので俺が
「えっと、ダーシャお嬢様。電気が復旧しない理由を聞いてもよろしいでしょうか」
「う~ん、説明すると長くなるのよねえ。でも、あなた達は電気がいつになったら復旧するのかって知りたかったはずだから、結論だけスパッと伝えておこうと思ったのよ。でも、やっぱ理由とかって気になるわよね」
と言い、顎に手を当てて考え込んでしまった。すると、リサッチさんが
「ねえ、例えばだけど小学生にいきなり、関数とか微分積分の問題を解けって言っても理解してないからムリよね。仮に小学生に関数を教えるとなると、函数についての説明も必要だし、大前提として四則演算をマスターしてないと先ずムリよね。そうなると、第一段階とて足し算、引き算、かけ算、割り算を教えることから始めるでしょ。でも、あなた達は既に四則演算は理解してるし関数も学んでるんだから、仮に問題を出されても、答えを導き出せるレベルに学力は達してるから問題ないわよね」
まずい、俺は数学が物凄く苦手だ。もし、何か問題を出されても正解する自信が無いぞ。俺達の中で数学が一番得意なのは沙織なんだよなあ、いざとなったら沙織に答えてもらうかな。ってな事を考えていると、リサッチさんが少し笑いながら
「大丈夫よ問題を出すわけじゃないから、そんなに硬くならないで良いわよ。つまりね、あなた達が解ける問題だったとしても、相手があなた達と同じくらいのレベルに知識や教養が達してないと、問題は解けないでしょって言いたかったのよ。それと同じで今、世の中で起こってる事を説明しようにも、あなた達が知らない事だらけだから、先ずは知らない物事について理解してもっらてからじゃないと話しが通じないのよね。だって、あなた達に色んな事を教えながら、順を追って説明して行くのって大変でしょ。だからダーシャは結論だけ、要はあなた達が気になってる事の答えを簡潔に伝えたのよ」
何か数学の問題とかを出されるのかと思ってヒヤヒヤしたぜ。でも、俺達が世の中を知らなさ過ぎるか。まあ、その通りだから反論する気も起きないわな。って思っていると、ダーシャお嬢様が
「既に知っている話しもあるかも知れないけど、とりあえず簡単に世の中の話しをするわね。「え~、そんな話しは絶対にないですよ」って思う話しもするけど、それはあなた達が今まで知らなかっただけの事だから、話しの内容を否定したりしないで「へ~、世の中ってそんなんだったんだ~」って感じで、先ずは私の話しを聞いてて欲しいんだけど、良いかしら」
う~ん、ダーシャお嬢様は普通に真面目な表情をしているだけなんだろうけど、目力が強すぎるから、俺達にウダウダ言わないで静かに聞いとけよって、強要している様に思えて来るなあ。そんな目力溢れるダーシャお嬢様の目を見つめながら
「俺はどんな事でも、まずは否定しないで受け入れようってスタンスですので、ぜひともお嬢様のお話しを聞かせてください」
ちょっと大人っぽく答えてみたけど「ぜひとも」って言葉の使い方は間違っていなかったよな。ムリしないで普通に「お願いします」って言っとけば良かったかなあ。少し見栄はって背伸びした事に後悔していると、ダーシャお嬢様は俺以外の連中を見て一度頷くと
「世の中には色んな決まり事があるわよね。法律、法令、規則、条例、条約とか、他にもその時の状況や個人の知識や価値観、それと教養によって多少のズレは生じるけど、周りの人達と譲り合ったりする、一般常識とかもあるわよね。じゃあ、何でそんな決まり事があるのかって言うと、周りの人達と集団生活を営むうえで、争い事や揉め事を起こさないようにする為に必要だから。なんだけど、世の中の人々は色んな決まり事を守りながら、日々の生活で世のため人のためって感じで、家族や大切な人達と楽しく生活を送ることが、理想の社会だったりするでしょ」
確かにお嬢様のおっしゃる通り、煩わしい事もなく生活が出来るのは良い事だし、両親や仲間達と楽しく過ごせる社会は素晴らしい事だと思うから、俺も世の中はそうあるべきだって思う。
「でもね、世の中には私達が戒めるべき感情から発生するモノを、エネルギーにして生存している生物が太古の昔っからいるのよね。ここで言う感情から発生するモノや、モノをエネルギーにして生存している生物って言うのは、分かりやすく説明するために使っている表現で、厳密に言うと色々と定義とか概念とか難しい説明が必要になるから、あくまでそう言うモノや生物が存在してるんだって感じで聞いててね」
ふむ。俺は既に山口さんから、世の中には感情を好んで吸収するモノが存在しているって事を聞いていたから、否定的な意見や定義だの概念だのって難しく考えなくっても、ただ俺達がその事を知らなかっただけで、昔っからそういうのって存在していたんだなあ。って感じだけどな。
「それで、私達が戒めるべき感情って沢山あるんだけど、先ずは、世の中の決まり事を破った人物の行為によって、周りが受ける感情ね。家族が誰かに酷い事をされれば、被害者の家族は悲しむだろうし加害者を憎むし恨むでしょ。お金を盗まれたら悔しいし、盗んだ相手をやっぱり憎むし恨むでしょ」
あ~、確かに犯罪行為をされて相手に対して良い感情は生まれないよなあ。でも、物凄く寛大な人だって家族が酷い事をされたら、とてもじゃないけど、相手を許す事なんて出来ないよなあ。
「一般常識的な決まり事だったら、みんなで順序良く列に並んでるのに急に横入りされたら、相手に対して「何でみんなでちゃんとルールを守って並んでいるのに、あなたは何やってるのよ。ズルいんじゃないの」って怒るでしょ。あるいは、お店で食事中に大声で話したり、騒いだりしてる人がいると「何でこの人は周りに配慮が出来ないんだ」ってイライラするでしょ。要は常識から外れた人に対して抱く、快く思わない感情ね」
そりゃあ、一般常識って言われている事って、その時の状況で相手や周りの人達と協力したり譲り合ったりして、お互いに多少なりとも我慢しながら、みんながイヤな思いをしないようにって感じで、相手や周りの人達に対しての思いやりだったり、善意でやっている事ばかりだったりする。だから、自然と周囲の状況や雰囲気で何となく、こうしましょう、そうしましょうって感じで、その時だけの暫定的なルールみたいなもんが決まったりするんだけど、そのやり方に従うのって、人それぞれの倫理や道徳に委ねられていたりもするし、全ての人達が一般常識を絶対に厳守しなければダメって取り決めも無いんだよな。
だからと言って、いい大人が他人の事を顧みず、自分勝手な行動をしたりすると、どうしてもイライラしちゃうんだよなあ。
「他に戒めるべき感情としては、自分と他人を色んな物事で比較する事によって生じる、劣等感だったり妬み、僻み、嫉妬とかね。他には、目に見えないモノに対する恐怖や不安、子供の未来や家族の将来への不安とかもね」
つまり、ネガティブな感情ってことかな。まあ生きてたら必ず誰しも抱く感情だよなあ。でも、何かしら誰かと比較しないと、自分が今どの程度の水準に達しているのか確認が出来ないんだよなあ。
「要するに、生活して行くうえで抱いてしまう、一般的に負の感情とかネガティブな感情って言われてる類の感情が、彼らのエネルギー源になってる訳なんだけど、物凄く簡単に言っちゃうと、物事への執着を捨てちゃえばネガティブな感情って抱かなくなるのね。でも、もし世の中の人達がその事に気づいてネガティブな感情を抱かなくなったら、感情を糧にしてる生物達はモノが発生しなくなるから、エネルギーを補給できなくなって生存出来なくなるから大問題なわけ。だから、彼らは昔っから色んな手段を使って、人々が物事に深く執着するように、執着せざるを得ないような社会のシステムを作り上げて来てるの」
ふむ。ここら辺からダーシャお嬢様が言っていた、「え~、そんな話しは絶対にないですよ」って感じの内容になるのかな。
「でも、人々から負の感情やネガティブな感情を煽るための社会のシステムを作り続けるのって、彼らからしたら効率良く食料を集めるための行為なだけであって、全然普通に当たり前の事をしてるだけなのよ、だって彼らは感情からエネルギーを補給しないと死んじゃうんだから」
う~ん、つまり俺達だったら食料を効率良く確保するために、牛や豚を牧場で飼育するとか、魚を養殖したり養鶏場から卵を生産する行為と同じってことになるのか。つまりどういう事なんだ、ここら辺からリサッチさんが言っていた、相手と同じくらいのレベルにまで知識や教養が達していないと、理解が難しくなるって言ってた話しになるのかな。すると、リサッチさんが
「私としては、争い事が絶えなくて、色んな所で色んな人達がいがみ合っている社会なんて、辛いし悲しくなるだけなんだから、そんな社会を作ってる迷惑なヤツ等は早いとこ排除しちゃって、平和な世の中にしちゃえば良いじゃんって思うんだけど、ダーシャから言わせると、それも一つの手段かも知れないけど、もっと様々な観点から多角的に物事を捉えないとダメなんだってさ」
俺もダーシャお嬢様の話しを聞いていてソレは思ったな、俺達に対して迷惑な行為を仕掛けて来てるって分かっているのなら、そんな連中は野放しになんてしないで、早く何とかしないとダメだろって思ったんだが、何で排除しちゃダメなんだ。
ダーシャお嬢様が少し困った様な表情を浮かべて
「人ってさ、物凄く辛かったり悲しかった出来事を乗り越えたら強くなれるの。最愛の人と別れて辛かったけど、今にして思えば彼との別れが私を強くした。とか、悲しかった出来事を体験したからこそ、人に優しくなれた。とかって話しを、聞いた事ってあるわよね」
俺はまだそんな経験は無いし、まわりの実体験でもその話しは聞いたことはない。けど、映画やドラマ、コミックとか小説とかでなら、しょっちゅう目にする話しではあるな。
「負の感情に囚われてた人が物事の捉え方や考え方を変える事で、悩んでいた時よりも心は強くなるし、精神的にも強くなって成長するのよ。ネガティブな感情から脱出した人達は、同じ出来事に対しても『今にして思えば何であんなことで悩んだりクヨクヨしてたりしてんだろう』って笑えるくらいに強く成長するでしょ。もちろん個人差があるから、全ての人が過去の出来事を笑い話にしたりはしないけどね」
ふむ。誰かと比較して劣等感を感じて悩んでいた人や、自分とは違う環境の人に対して妬んでいた人とか、色んなタイプのネガティブな感情から抜け出せた人達って、個人差はあるけど、自分と同じ悩みを抱えて落ち込んでいる人達に対して、手を差し伸べたり相談にのってあげたりしてるよな。あるいは、自分の体験をもとにして、多くの悩んでいる人達に、前向きに生きて欲しいって考え、書籍を出版したりネットを利用して悩み事の相談とかしてたりするな。
「でね、感情を糧にしてる彼等が作る社会システムって、私達の生活の質を確実に向上させるの。あなた達は生まれた時から既に何不自由なく育って来てるから、実感できないでしょうけど、高齢の人達の子供時代と現在を比較すると、毎日お腹いっぱい食事は取れるし、出掛けるってなっても移動手段は沢山あるし、不治の病とされいた病気に対しても、予防薬ないしは治療薬が沢山開発されてて、今って当時と比べると、とても恵まれた環境なのよね。もっと時代を遡って現代との生活水準を比較したら、あなた達でも分かるんじゃないかしら」
そういえば、昨日スキンヘッドと細身のおじさんが、そんな感じの事を話してたな。それに、歴史の授業とかで昔の人達の生活って、大変だったんだろうなってのは何度か感じた事はあるな。スマホが無いのによく生きていけるなって思ったもんな。
「色んな技術が進歩して、生活の質は確実に向上してるんだけど、その反面、心が物質的な物事に囚われてしまって、いつまで経っても心が成長出来ないために、肉体年齢に精神年齢が追いついてない人達が増えてしまってるの。子供みたいにワガママな大人とか、周りに配慮が出来ない大人とかね。そんな精神的に未熟な人達が増加すれば、本人からもその人を取り巻く環境からも沢山の負の感情が発生するんだから、今の現状って社会システムを作った彼らにとって理想的な環境になってるの」
いや、だったら早いとこ感情をエネルギーにしているヤツ等を何とかしないと不味いでしょ。って思っていると
「色々と難しい説明をしなくちゃいけなくなるから、物凄く簡単になっちゃうけど、私達ってみんなの精神年齢を肉体年齢よりも高くすることが目的なの、今の負の感情を生み出す社会システムって、生活の質が向上して便利な暮らしになるし本人の努力によっては、莫大な富や地位も得られるでしょ。そして、多くの人達が色んなネガティブな感情を色んな形で受けることが出来るんだから、その都度、色んな物事に対しての見方や考え方を学べて、色々と経験できるから精神年齢も成長できるのよね」
いや、精神年齢を高めることが目的だったとしても、そこまで分かっているのなら苦しんでいる人達を助けようよ。
「でもね、この社会システムで莫大な富を得て物質的に恵まれてた人達の中には、心に余裕が生まれて、世の中に対して何かしらの貢献をしようって気持ちが芽生えて、ボランティア活動とかチャリティー活動を行ったりする人達もいるのよ。それと、この負の感情を生み出す社会システムで、心に傷を受けて塞ぎ込んでた人達が、感情に囚われることなく前向きに生活出来るようになると、中には世の中に対して何かしらの貢献をしようって気持ちが芽生える人達もいるの」
う~ん、確か小田先生も似たような事を言ってたなあ。でも、そん時は『自分自身が不自由なく生きて行けて、誰かに何かを分け与える位に物が余っていないと、秩序は保つ事が出来なくなる』って言ってたな。それと、『法律や規則とかモラルとかは、秩序が保たれている事が前提で成り立つシステムなんだよ』ってことも言ってたよな。つまり、物質面でも精神面でもゆとりと言うか、余裕が出来れば、周りの人達に対して優しくなれるって事なのかなあ。
「平和で穏やかな暮らしを送りながら、色んな物事に気づける人もいるけど、苦難を乗り越えて色んな物事に気づけた人達の方が、精神年齢が一気に高まるの。だから、負の感情に苛まれながらも多くの人達が精神年齢を高めることが出来て、人々の生活が向上する今の社会システムを、私達は利用して便乗してるって感じなの」
社会システムを利用して便乗しているから、迷惑な行為を仕掛けて来るヤツ等を野放しにしているって事なのか。う~ん、俺達からしたら色々と良くない行為をされているんだから悪なんだけど、お嬢様からしたら色々と都合が良いので悪ではないってことになるのか。立場や目的がが変わると善悪も変わっちゃうってヤツか。
そうなると、感情を糧にしてるヤツ等とダーシャお嬢様達って、敵対関係とかじゃないって事になるのかな。流石に気になったので
「えっと、感情を糧にしてる彼らとダーシャお嬢様達は、戦ってたり勢力争いをしてるって訳ではないって事なんですか」
「過去には何度か直接やり合ったらしいけど、最近は精神年齢を上げた人達を特定して、見守るか保護するって事しかしてなかったわね」
俺が聞きたかった答えと違ったので首を傾げると、リサッチさんが
「ある程度精神年齢が上がると、今の社会でツライ思いをしている人達を助けたいとか、様々な苦しみが生まれる原因は物事に執着していることだったり、心が物事に囚われているからだって事を理解してるから、その事を色んな方法で色んな人達に伝えようとするんだけど」
ほっほ~、そんなことをする人達もいるんだ。頑張って下さいって感じだな。
「そんな事をされたら感情を糧にしてるヤツ等からしたら、食料が減っちゃうんだから迷惑な話しよね。だから、苦しんでる人達を助けようとする人達を亡き者にしようって動き出すのよ。だから、そうなる前に私達が保護したりしてるのよ」
ふむ。何らかの理由で収穫量が減り始めたり、この先の収穫量が減るかもって予想が出来るのなら、当たり前だけど原因を突き止めて問題を解決するだろうし、事前に対策とかも考えるよな。でも、何それ、覚醒した選ばれし者を悪の組織から守るみたいな感じの話し、ちょっとワクワクしちゃうんですけど。でも、さっき、お嬢様は特定して保護するって言ってたな。
「えっと、精神年齢が上がった人をどうやって見つけるんですか」
すると、リサッチさんが呆れた顔をして
「うちの会社が何を扱ってるか知ってるでしょ、個人から企業まで、あらゆるジャンルのデータが日々蓄積されてるのよ、精神年齢が肉体年齢に達している、あるいは突破している人物は、こういう人間が多いって統計学をもとに、その人物が使用すると思われる複数のキーワードを常に自動索引してるから、すぐに該当する人物はヒットするわよ」
あ~、そうだった。ダーシャお嬢様とリサッチさんって超有名大企業のご令嬢だった。
「でも、その保護した精神年齢が高い人って何処で何をやってるんですか、ツライ事や苦しみから助かった人達っているんですか」
リサッチさんがガクッと肩を落として、また呆れた顔をすると
「映画やドラマ、コミックや小説とか、精神年齢の高い人物達の作品は必ず何処かであなた達も目にしたことがあるはずよ。他には音楽や絵画、ポエムやエッセイとかね。後は、エンターテインメント業界ね、人を楽しませる娯楽全般に携わってたりもするし、歌手だったりもするわね。色んな所で色んな人達が活躍してるわよ」
ふ~ん、スゲーな色んなジャンルの人達が様々な場所で頑張っていたのか。全然知らなかったぞ。
「でも、受け止める側の知識や教養が乏しかったり、精神的に未熟だったりすると、精神年齢の高い人達からのメッセージに気づけなかったり、メッセージの内容が理解出来なかったりして、結局は物事の本質にすら気づけない人達ばかりだったりするのよね」
う~ん。何それ。助けたいってメッセージを投げてくれているのに、正しく受け取ってもらえないって悲しすぎるぞ。
「さっきもチラッと話したけど、相手と同じくらいのレベルにまで知識や教養が達してないと、理解が難しくなるって言ったじゃない、それと同じで、相手と同じくらい人生経験が豊富だったり精神年齢が高くないと、話しが理解出来なかったりするのよね。でもね、些細な切っ掛けで物事の本質をつかめたり、気づけたり出来ることもあるのよ」
う~ん、過去に読んだ本の中に「苦労は若いうちにしとけ」とか「人生に無駄なんて物は無い、色々経験しておけ」とか「色々悩んで考えた事が将来に繋がる」とかってのは大人達がよく使う、知りたい事を教えて欲しいって聞いても「まだ若いから」とか「これから沢山経験していくうちに分かるんだ」とか上手い事を言って、結局答えを何も教えてくれないヤツなのかと思っていたけど、ただ単に、俺の知識や教養が乏しかったり、経験値が低かったり、精神的に未熟だから物事の本質をつかめなくって核心をつけなかったって事なのかなあ。すると、リサッチさんが眉間に皺を寄せながら
「でもね、精神年齢が高い人物達からの色んな取り組みが切っ掛けで、物事の見方や考え方が変わった人達の中には、間違った解釈をしていたり、勝手な思い込みで間違った真実を述べてみたりして、本質からはかけ離れてしまう人達もいるの。そして、その間違った解釈で、苦しんでいる人達を助けようとし始める人達もいて、色んな意味で偏った考え方をするコミュニティーが出来上がったりして、おかしな物事が流行しちゃったりするんだけど、今の社会システムって情報の伝達が速いから、一気に間違った考えが広まって一気に人も集まるから、一気にお金も動くのよね。でも、結局は間違った捉え方で集まってしまった人達だから、最終的には間違えに気づいてコミュニティーが自然消滅したりもするけど、中にはなかなか消滅しないで残ったりもするのね。それで、偏った考え方のままで集まった人達が日々の生活を続けるから、その人達は以前よりも負の感情が増加しちゃったりもするのよね」
すると、ダーシャお嬢様達は
「でもその社会システムがあるから、莫大な富や地位を掴むことが出来るし、色んな社会貢献も出来るようになるのよ。だから、私達は精神年齢が高い人物を特定して、物事の本質に気づけそうな人物は監視対象とし、物事の本質に気づけた人物に関しては、ある程度の援助や支援をうちの会社が行ってるの。そうしないと負の感情を糧にしてる彼等に亡き者とされてしまうし、私達からしたら、精神年齢が肉体年齢に達してない人達を、導いてくれる貴重な人材を失うことになるでしょ。それに、ある程度精神年齢が高い人物ならば、誰かが声高に訴えてる事や、誰もが称賛するような主義主張であろうと、物事の本質からはかけ離れていれば、何かしらの不自然さや違和感に気づくから、上手く軌道修正してくれるのよ」
なるほどね~、超有名企業のお嬢様達は人知れず、今まで色々とやったいたのかあ。だとしたら、なおさら気になるので俺は
「なんで、苦しんでいる人達をお嬢様達が助けないんですか」
リサッチさんが目を見開いて
「あら、あなた。うちらの上司と接触してるはずなのに、まだ考えがお子様なままなの」




