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第87話 ダーシャお嬢様とランチ

 立派で重厚な門を見ながら、千春が


「すごいね~」


 沙織も千春の隣で門を見上げながら


「コレって開けるの大変なんじゃないかしら」


 麗奈が、重厚な門の横に普通サイズの扉も設置されていることに気づいて


「多分だけど、あそこの扉から中に入るんだと思いますよ」


 それを聞いて直樹が


「だろうな。人の出入りに関しては、あそこの扉を使ってるんだろうな」


 俺は隣で口を半開きにしている西條さんに


「ここがお嬢様の家って知ってましたか」


 ハッとした感じで、西條さんが俺を見て


「いや、こっち方面って用事がないから来た事がないのよね。でも、ここがお嬢様のお屋敷だったなんて知らなかったわ」


 お屋敷の門のデカさに驚いている俺達に、アレさんが


「こっちがメインゲートなんだが、向こう側にもゲートがあってな、俺達はそっちをメインで使ってるんだ。そっちのゲートは資材搬入のトラックや普通に社用車も出入りしてたから、ここを屋敷って知らない人達は、ここは何処かの企業だと思ってるみたいだぞ」


 俺達は昨日ダーシャお嬢様にランチに招待されたので、待ち合わせ場所である学校の校門に行くと、そこにはアレさんが待っていた。俺達はアレさんに案内され、徒歩でお嬢様のお屋敷までやって来た。


 沙織達はスーツ姿で校内を移動しているアレさんを何度か見かけていて「あのかっこいいい人は何者なのかしら」と、チョイチョイ話題にしていたんだそうだ。なので、アレさんと自己紹介をした女子達は朝からテンションが高かった。でも、話しながら移動するうちに、アレさんの歯の浮く様な褒め言葉や仕草は、女子達からしたら、映画やドラマの再現シーンのように見てしまうらしく笑いを誘っていた。


 そんな女子達の反応に対してアレさんは、怒ることはなく「腹を抱えて涙を流しながら笑って楽しんでるんだから、俺は嬉しいぞ」と言って、終始女子を笑わしていた。


 アレさんが別にイヤじゃないなら問題ないので、男子はアレさんと女子達がゲラゲラ笑っているのを見ながら後について歩いていた。なので、学校からダーシャお嬢様のお屋敷までの移動中は、ずっと笑いが絶えることがなく、とても和やかな雰囲気だった。





 立派な門の横に設置されている扉から敷地内に入ると、家って感じの建物は見当たらなく、ホテルよりは小さい鉄筋コンクリート造りの三階建ての建物と、二階建てのアパートっぽい建物があった。確かにアレさんが言っていた通り、ここが住居って知らない人が見たら、会社や企業って思っちゃう建物の造りだった。


 植木の隙間からでよくは見えないけど、テニスコートやバスケットコートもあるみたいだった。辺りを見回しながら歩いているとアレさんが


「正面の三階建てがお嬢様の住居で、隣の二階建ては言うなれば社員寮みたいなもんだ」


 俺達は周りをキョロキョロ見ながら、敷地の広さや住居が旅館並みにデカい事にビックリしていて、アレさんの説明を聞いても、ただ頷いただけだった。それを見てアレさんが


「これでも控えめに造ったんだぜ。俺達からしたら、かなり窮屈に感じてるんだぞ」


 みんな同時に「えっ」て顔をしていた。


 広い敷地内を歩いていると、掛け声とか威勢の良い声が聞こえて来た。声の聞こえる方を見ると、そこには筋肉ムキムキの集団がいた。


 普段から、かなりストイックに体を鍛え込んでいないと出来上がらないんだろうなって思える、物凄くたくましい肉体を持つ屈強な男達が、等間隔に並んだ高い壁をよじ登って飛び降りたり、膝くらいの高さで張られた網を四つん這いになってくぐり抜けたりして、まるで障害物競走みたいな事をしていた。


 千春が目を見開きながら


「あんなに筋肉モリモリなのに動きが速いよ」


 西條さんも驚きながら


「ね~、筋肉が凄い人ってパワーはあってもスピードは遅いイメージだったんだけど、あんなに機敏に動けるもんなんだね」


 麗奈が胸の前で指を組んで


「あぁ~」


 って言いながら、激しく動き回る複数の筋肉を、目を細めて吐息を漏らしながら眺めていた。すると、沙織がひときわデカい人を見て


「克也、多分あの人があんたからヒトガタを引き剥がしてくれた人よ」


「おう、マックスさんだな。昨日会えたからお礼しといたぞ」


 と言い、俺は直樹に


「あの人スゲーだろ、昨日はスーツ姿だったんだけど、それでも近くにいるだけで肉の圧が凄くてさ、そん時は圧迫感で息苦しくなったぞ」


「ああ、あれは確かに凄いな。驚きって言うよりは驚愕って感じで、まさに鍛え上げられた筋肉に脱帽って感じだな。でも、あの人は魔法で筋肉量が増加してるって訳ではないんだよな、素の状態であの肉体なんだよな」


 俺達の会話を聞いていたアレさんが、口元に笑みを浮かべて


「マックスは、ミオスタチン関連筋肉肥大、あるいはミオスタチン欠乏症って言われたりもする一種の病気なんだ。まあ簡単に言うと、普通の人より異様に筋肉が成長する病気だ。ただ、筋肉のせいで物凄くカロリーの消費が激しくてな、食事は一日に七回だし、食事で足りない栄養素はサプリメントで補ってたりして、まあ大変な生活だわな」


 と言って、歩き始めた。


 俺はアレさんの話しを聞いて、どうでも良い事なんだけど、たまに昔話に登場してくる怪力の持ち主って、物語を面白くするために話しを盛ったんじゃなくて、本当に存在していたのかも知れないなって一瞬だけど頭をよぎってしまった。


 屈強な男達を横目で見ながら、アレさんの後を着いて行くと直樹が


「綺麗な花が沢山咲いてるんだな」


 敷地内の色んな所に咲いている花を見回していた。すると、麗奈が近くの花壇を見ながら


「ここまで沢山のお花があると、お手入れするのが大変そうですね」


 西條さんは麗奈が見ている違う場所の花壇をみて


「あ~、私も気になってた。見たことある花もあって綺麗なんだけど、ちょっと大変そうよね」


 アレさんが花壇を見ながら


「お嬢様の名前の由来でもある花で、種類も沢山あるからレーナや同僚達が大事に育ててるんだ」


 麗奈と西條さんが首を傾げていると、沙織も首を傾げながら


「ダーシャって名前の花なんて、あったかしら」


 アレさんが形の良い眉をピクッとさせ、口角を上げると


「あ~、ダーシャは愛称だ。お嬢様の名前はダーリヤだ。俺の国では花の名でもあるが、ダーリヤは華麗、優雅、気品って意味なんだ」


 麗奈が目を見開いて


「わ~、素敵なお名前なんですね」


 西條さんが花壇を見ながら


「あ~、ダリアね。見た事あるって思ったわ。でも、ここに植えてある花が全部ダリアだなんて、驚きだわ」


 すると、沙織がアレさんを見て


「アレさんの名前の由来って何なんですか」


「ん、俺か。俺は『守り人』だ。ちなみにマックスは『最も大いなる者』あるいは『偉大な』って意味でラテン語のマクシムスから来てるな。それと、レーナは『明るい光』や『明確な』って意味だぞ」


 すると千春が


「守り人だなんて格好良いですね」


「俺はお嬢様を守るために存在してるからな」


 と言って、親指をグッと立ててニヤッと笑った。一瞬、歯がキラッて光ったように見えたのは気のせいだろうな。


 俺達は雑談をしながら広い敷地内をテクテク歩いて、やっとお嬢様の住居と言っていた、三階建ての建物の玄関と言うかエントランスの前までやって来た。すると、エントランスの前には、鳥のシルエットに「ピヨ彦」って文字がプリントされたトレーナーを着ているお姉さんが立っていた。


「いらっしゃい、待ってたわよ。アリョーニャありがとう、後は引き継ぐわ」


 アレさんが頷くと、俺達を見て


「じゃあ、俺はここまでだ。みんなはお嬢様とのランチを楽しんで来てくれ」


 と言うと、鳥のお姉さんとアレさん達の母国語で一言二言何か話すと、建物の中に入って行った。鳥のお姉さんが俺達を見ると


「初めまして、リサッチよ。よろしくね」


 ふ~ん、鳥のお姉さんはリサッチって名前だったのね。名前の由来は何なのかなあ、ちょっと知りたいかも。





 リサッチさんに案内された部屋には、貴族が使うような細長いテーブルがあって、お誕生日席にはダーシャお嬢様が座っていて、その後ろにレーナさんが立っていた。


 レーナさんが俺達にお辞儀をして「男女に分かれてお座りください」と言い、リサッチさんはダーシャお嬢様に近い席に腰掛けた。


 俺達が緊張しながら静かに椅子に腰掛けると、ダーシャお嬢様が


「ダーシャよ。病院では私の大切なアリョーニャとレーナを助けてくれて本当に感謝してるわ。ありがとう。それと、私からの急な誘いに応じてくれてありがとう。今日は好きなだけ食べてって良いからね」


 笑顔でこっちを見ているが、気の弱い人なら直ぐに目を逸らしたくなる目力は、相変わらずだった。気のせいなのかも知れないけど、昨日より今日のほうが目力が強く感じる。そして、今日も犬のシルエットに「くろらぶ」って文字がプリントされたトレーナーを着用していた。


 レーナさんがダーシャお嬢様の隣に移動すると


「幾つか料理を用意しておりますので、そちらのメニューからお好きな物をお選びください」


 笑顔でメニューを勧めてくれた。う~ん、今日もレーナさんは綺麗だ。気のせいなのかも知れないけど、昨日より今日のほうが笑顔が可愛く見えて素敵だ。


 メニュー表を広げると、色んな肉料理や魚料理の名前が書いてあった。お寿司とかもあったけど、俺は魚介に興味はないのでお寿司のページはすぐに飛ばして、違うページをめくる。そして、俺は悩んだ挙句トンカツを注文する事にした。


 気づいたら綺麗なお姉さんが近くに立っていて、みんなの注文を受けて退室していった。俺達の様子を静かに見ていたダーシャお嬢様が


「料理が出来上がるまで時間があるから、その間に少し話しをするわね」


 すると、ゆっくり俺達を見て


「昨日の夜に決めた事なんだけど、今迄は水面下で目立たないようにして、何でもかんでも世間の出来事に介入しないようにしてたんだけど、今後は私達もある程度の事柄には介入する事にしたの」


 なんだ、話しを聞く限りだとダーシャお嬢様達が秘密の組織みたいで格好良いぞ。千春も沙織もこの手の話しは好きだから少しソワソワしている感じだ。


「それと、あなた達は期待してるのかもだけど、この先いつまで経っても電気は復旧しないわよ」


 ダーシャお嬢様がそう言うと、みんな同時に「えっ」て顔をしていた。


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