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第83話 報酬の対価

 レーナさんは俺と千春を見て


「ちなみに、私達は遠い場所に存在しているモノを呼び出す行為を喚起魔法とし、遠い場所に存在しているモノを、自身の肉体に取り込む行為の事を召喚魔法と言っております」


 すると千春が


「えっ、肉体に取り組むって、合体するって事ですか」


「簡単に説明しますと、呼び出すモノが存在している環境と、私達が存在している環境とでは違いがあります。なので、私達の肉体に取り込む事で能力を十分に発揮する事が出来るモノも存在するのです」


 なるほど~って感じで千春が頷いている。俺も色んなモノが存在しているんだなあって感じで聞いていると、レーナさんが


「先ほど呼び出すことに必要となる対価の事を考えると、とてもリスクが高いとお話ししましたが、例えば加藤さんが、川内さんに何かお願いされたり頼まれたりしても、余程のことが無い限りは見返りを求めたりはしませんよね」


 頷く千春を見てレーナさんが


「ですが、一般的には何処かに移動するために、バスや電車を利用した場合は利用料金を支払って目的地まで移動を行いますよね。あるいは、喉が渇いたらお店や販売機で飲み物を購入し、代金を支払って喉を潤しますよね」


 千春がウンウン頷いている。


「こちらの要求を叶えるためには、相手にその要求に見合った代金を支払いますよね。もちろん、こちら側と相手側とのやり取りで色んなパターンはございますが、一般的にはこちらの要求に対して、相手側は賃金や物品等の何かしらの報酬を受け取る事で、こちらの要求に応じてくれますよね」


 確かに、突き詰めるとどんな事でもどんな物でも、お金というか何かしらの報酬が決まっててやり取りしているな。


「ですが、相手側からしたら何の価値も見出せない報酬だった場合はこちらの要求には応じてはくれません。例えば、お金には困ってないとか食材を提供されても困るとか、自国で使用している通貨が違うとか。あるいは文化の違いで食材としては適さない場合だったりと、色んなパターンがございます。ですが、こちら側からしたら何の価値も見出せない物が、相手側からしたら大変貴重な物だったりする場合もございます。そして、両者の文化や価値観の違いによって報酬を決める事が出来ずに、要求に応じてもらえない事もございます」


 ふむ。ここまではあまり難しく考えなくても、普通に俺でも分かる事だな。千春もちゃんと話しについて行けてる感じだ。


「そうなりますと、通貨や食料、衣類や貴金属のような形のある物では無く、形の無い物を相手側に報酬の対価として支払う事になります」


 報酬の対価ってなにって思っていると、千春も首を傾げていた。そんな俺達をみてレーナさんは


「例えば、飲食店で食事をしてお金が無かった場合は皿洗いや、お店の手伝いをする事で食事代を帳消し、あるいは相殺してもらったりする。そんなお話しを聞いた事はございませんか。物品での支払いではなく労力で支払うパターンです」


 実際に俺の周りでは聞いたことはないけど、本当のことなのか話しを盛り上げるためのネタ話しなのか、たまに耳にする話しだったりはするな。


「それと同様に、呼び出すモノが私達に求めてくる対価には様々なパターンが存在いたします。幼少期の頃の記憶や最愛の人の記憶だったり、若さだったり、将来への可能性だったり、寿命だったり家族の命だったりします。私達と全く価値観が違いますので、求めてくる対価がまったく予想も出来ない、想像を遥かに超える内容のことばかりだったりもします」


 千春が目を見開いていた。俺もちょっとビックリしてしまった。記憶って無くなると、その時の楽しかった事や悲しかった事を忘れちゃうって事だよな、イヤな思い出なら喜んで提供するけど、良い思い出はやっぱ大事にしておきたい。そして、若さってのは望みが叶ったら、一気にお爺さんになっちゃうって事なのか、それもイヤだ。将来への可能性ってのはちょっと分からないけど、寿命や家族の命を引き換えに望みを叶えてもらうってのも、スゲー話だな。


「他にも過去には様々な内容の対価の要求がありましたが、気分を害するような内容ばかりですので、お聞きにならない方がよろしいと思います。簡単にではございましたが、加藤さんがおっしゃる召喚魔法はとてもリスクの高い行為が伴いますので、これからも安易に呼び出そうとはしないようにして下さい」


 話しを聞いて千春が


「レーナさんの話しを聞いてなかったら、召喚魔法に挑戦してましたけど、流石にもう召喚して何かを呼び出したいとは思いませんよ。えっと、貴重なお話しを聞かせていただき、ありがとうございました」

 

 だなあ。俺も何か呼び出せたら格好良いなって思っていたけど、話しを聞いたら流石に呼び出そうとは思わなくなったな。


「どういたしまして。また時間がある時にでもお話しいたします」


 頭を下げている千春に、レーナさんも笑顔でお辞儀をしていた。ん~、笑顔が素敵だ。思わず俺も笑顔になってしまった。俺はカエルと戯れている千春に


「そのカエルは喋ったり出来るのか。もし出来るなら、麗奈に苦手な食べ物と食物アレルギーについて聞いて欲しいんだが」


「えっ、喋れる訳ないじゃん。この子は触って感触を楽しむのと、動くのを眺めてニヤニヤするくらいしか出来ないよ」


「そうなのか、麗奈の妖精がさっき喋ってたから千春のカエルも喋れるのかと思ってた」


 千春が少し不貞腐れながら


「喋れなくったって良いんだもんね~」


 カエルを撫でまわしてニヤニヤし始めた、千春に


「食物アレルギーとかって無かったよな」


「うん、ないよ~」


「苦手な食べ物はナスだったよな」


「うん、ナスの皮って噛むとキュッキュッってなるのがダメなんだよね」


 千春はナスの食感を思い出しているのか、渋い顔をして


「でも、苦手なのはナスだけで他は何でも食べられるよ」


 すると、レーナさんはポケットからメモ帳を取り出して何か書き込んでいた。俺は生徒と妖精に囲まれている麗奈の所に行き、改めて明日のランチの事を伝え、苦手な食べ物と食物アレルギーの確認をすると、教室を後にした。


 廊下には薙刀で武装したおばさんが立っていたので


「ご苦労様です」


 軽く頭を下げると、おばさんが少し驚いた表情をして何か言いたそうな感じだったが、俺は


「どうも、どうも」


 と言いながら、おばさんの前を通り過ぎレーナさんに


「俺にモノを存在を教えてくれた人は、山口さんって言うんですけど、たぶん調理エリアにいるの思うので、そちらに向かおうと思います」


 と告げて、渡り廊下側の階段に向かい歩き始めた。すると、廊下を歩きながらレーナさんが


「川内さん。先ほどの状況でしたら、色んなパターンはございますが「お疲れ様です」と、声を掛けるのが適切だったのかも知れません」


 俺が何の事か分からなくて首を傾げると


「先ほど、薙刀の御婦人に声を掛けてらっしゃいましたが、一般的には目上の者が目下の人へ、労をねぎらって使う言葉が「ご苦労様」ですので、年上の方に対して使う言葉としては不適切かと思われます」


「えっ、そうだったんですか。俺はてっきり「ご苦労様」って「お疲れ様」を丁寧に言い換えた言葉かと思ってましたよ」


 俺は一気に恥ずかしくなって顔が真っ赤になってしまった。それを見てレーナさんが


「これは私の勝手な憶測ですが、川内さんの年齢が若いので、仮に言葉の使い方が間違っていても、相手の人達は許してくれてたのかも知れません。ですが、社会に出てからですと、相手に対して失礼に当たる言葉の使い方をしてしまいますと、場合によっては取引相手が気分を害して、交渉が上手く行かなくなり、会社に対して大きな損害を与えてしまう場合もございます。なので、今のうちから改めて普段から使用している言葉を見直し、間違って使っていた言葉を修正しておくことを、私はお勧めいたします」


 外国の人に、自分の国の言葉をしっかり勉強した方が良いって、アドバイスをされてしまった。ちょっと情けない気分だぜ。


「今はまだ相手側が川内さんの事を若いんだからって事で、間違をとがめたりせず、間違いを指摘して教えてもらえる立場だったりもします。なので、今の時期は色んな間違いを修正するチャンスでもありますし、色んな事を教えてもらえる時期でもあるのです」


 俺的には、それって大人に子供扱いされているみたいでイヤなんだよなあ。


「ある程度年齢を重ねますと、わざわざ間違いを指摘したり、正解を教えてくれるような寛容な方々は激減してしまいます。そして「その年齢でそんな事も知らないのか、今まで何をしていたんだ」と、一般常識がある程度の水準まで達していないと周りからは見下されます」


 えっ、流石に見下されるのはイヤだな。今のうちに色々と勉強しとかないとだな。


「一般常識を学ぶことも大切ですが、先ほどもお話しした通り、ご自身の考えてらっしゃる事や思いを相手に的確に伝えるために必要となる、言葉をしっかり学んで下さい。そして、その時の状況によって相手が川内さんの掛けた言葉に対してどのように感じ、どのように受け取るのかを常に意識して接していれば、相手の気分を害することを軽減させる事が出来ますし、コミュニケーションも円滑になると思います」


 なるほどなあ。そうだよなあ。その場に適した行動を取って、的確な言葉を使っていれば、俺のことを大人達が子供扱いをしなくなるかもだよなあ。親や担任の先生に指摘されたり、同じ内容の話しをされても「うるせ~なあ」って感じるのに、レーナさんからの指摘だと素直に「ありがとうございました」って思えるんだよなあ。この違いは何なんだろうか。って思いながらレーナさんに


「ありがとうございます。俺、これからは色々勉強して格好良い大人を目指します」


「はい、頑張って下さい。応援してます」


 レーナさんは、胸元で拳を握って笑顔でエールを送ってくれた。


 廊下から階段い進むと、ベニヤ板を使って階段の半分くらいのスペースにスロープが出来上がっていた。車椅子の人達が使うのかな。


 ん~、車椅子での階段の昇り降りって大変なんだろうから、わざわざ四階で寝泊まりしないで、一階の教室を使えば良かったんじゃないのかなあ。って思いながら、でも、一階には警察や消防の人達が待機部屋として使っていたから、昨日の襲撃の被害が少なくて済んだんだし結果的には四階で正解だったのかな。


 なんて事を考えながら昇降口に向かうと、タイミングよく山口さんがほうきと塵取りを持って掃除をしていので、俺はレーナさんに山口さんを紹介した。


 当たり前だが、大人同士のやり取りを見ていてもつまらないし、なにやら難しそうな話しをし始めたし、俺には関係の無い話しみたいだったので、レーナさんに


「では、明日の朝に校門付近で待ってますので、よろしくお願いします」


 と言って、山口さんにも一言挨拶をして俺は飲食兼休憩エリアに向かった。


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