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第76話 お嬢様のボディーガード

 校舎に入ると、千春は白沢先生の授業の手伝いをするので、三階の教室へ向かい、小田先生は患者を診る為に、四階の教室へとそれぞれ向かって行った。


 俺は、校舎の二階で待っているお嬢様に会いに行くために、アレクセイと名乗る外国の人と廊下を歩いていた。


 沙織達の話しでは、お嬢様は病院からの避難者だそうで、なぜか俺にお礼をしたいらしいのだが、俺には全く身に覚えが無かった。そして、お嬢様は誰もが知っている超有名企業の御令嬢らしいので、沙織達からは上手くやって知り合いになっておきなさいと言われた。


 ただ、麗奈が言うには、現役なのか退役なのかは分からないけど、軍人さんらしい人達がボディーガードをしているから、失礼の無いようにしないと、やられちゃうかも知れないので気をつけろと釘を刺されていた。


 俺は今まで外国の人との接点って言ったら、学校で外国語指導助手として来日していた人と、授業でちょこっと話した程度なので、今みたいに一緒にこうして二人で歩くって事は初めての経験だった。なので、お嬢様が待っている場所までの移動中に、どんな会話をすれば良いのか悩んでいた。すると、アレさんが立ち止まって


「お嬢様から感謝の言葉をいただくと思うが、俺からもお礼を伝えておく。傷を回復してくれてありがとう。もし俺の傷が回復出来てなかったら、こうしてお嬢様の役に立つ事が出来なかった。本当にありがとう」


 アレさんは丁寧に頭をさげた。


「もしかして病院の六階で囚われてたんですか」


 アレさんが頭をあげると


「そうだ、体中損傷だらけだったから、もう現場には復帰出来ないと諦めてたよ」


 病室にもしかしたら、ヒトガタに拘束された怪我人がいるかも知れないって思っていたけど、やっぱり怪我していた人っていたんだなあ。ヒール使っといて良かったぜ。


「そうだったんですか。体が元に戻って良かったです」


 すると、アレさんの表情が少し柔らかくなったと思ったら、笑顔になった。さっき、自己紹介の時に見せた笑顔と違って、今回の笑顔は目だけが笑っていない不自然な笑顔では無かった。そんなアレさんの表情につられたのか、俺は少し緊張がほぐれたので


「えっと聞いた話なんですが、お嬢様って有名な企業の御令嬢だって伺ってるんですけど、俺って今までに偉い人と会って話をした事がないので、何か失礼な事とかしちゃいそうで不安なんですよね。なので、今のうちにこれだけはやっちゃダメだって事とか、あったら教えてもらいたいのですが」


 すると、アレさんが口元に笑みを浮かべて


「一般的にお嬢様って聞いたらワガママで他者を見下す様なイメージを持つだろ。でも、うちのお嬢様は育ちが良いからなのか、元々の性格だったのか、とりあえず寛大な方だから大概の事は大丈夫だと思うぞ」


 それを聞いて俺がホッとしていると


「後な、うちのCEOとは血のつながりは無くってな、お嬢様はアダプションなんだ。ちなみに国の内外問わず、国籍がバラバラで世界中にCEOの養子って多数存在してて、中には精神的に未熟なお坊ちゃまやお嬢様も実際にいたりするんだけどな」


 ふむ、CEOって取締役会長とか社長とかの人の事だよな、アダプションってのがちと分からないけど、話の流れからすると養子縁組とかってニュアンスなのかな。でもまあ、これから会うお嬢様に関しては面倒くさい感じにはならなそうだな。って思っていると


「ただ、お嬢様は大丈夫でもレーナがお嬢様に心酔してるからなあ」


 と言い、頭をポリポリかくと


「少しでもお嬢様に対して礼儀に反する振る舞いをしたり、礼を欠く様な事があると面倒くさいかもな。でもまあ、お嬢様にとんでもない要求をしたり、お嬢様に対して蔑むような態度や、言葉使いをしない限りは大丈夫だと思うけどな」


 なんか要注意人物がいるみたいだけど、他の人の名前が出て来たので


「昨日、俺を助けてくれた人がいるらしくて、一人は女性でもう一人は筋肉モリモリの男性って聞いてるんですけど。お礼を言いたいので、その人達にも会えたりしますか」


「ああ、レーナとマックスの事だな。お嬢様の傍にいるから直ぐに会えるぞ」


 俺は少し気になったので


「えっと、アレさんもその方達もお嬢様のボディーガードなのでしょうか」


「まあ、そんな感じだな。お嬢様は嫌がるけど、俺達はチェスの駒みたいなモノだからな。でも、実際は俺達よりも桁違いにお嬢様の方が強いんだけどな」


 お嬢様が最強ってちょっと怖いんですけど。だいぶ緊張がほぐれたと思っっていたのに、また緊張して来たぞ。


 アレさんと話しながら廊下を歩いていると、職員室を通過した先の部屋の前で、筋肉モリモリのスーツ姿の外国の男性が椅子に座っていた。近づいて来る俺達に気づいたのか、筋肉モリモリの人が立ち上がった。あのスーツは特注で作ったんだろうな。って思っていると、アレさんが


「彼がさっき話したマックスだ」


 俺は改めてマックスさんを見るが、ここまで体がデカい人を見るのは初めてなので驚いて立ち止まりそうになった。年齢はアレさんと同じか少し上になるのかな。身長は明らかに直樹よりも高いし何よりも筋肉量が物凄い。スーツを着ていても首や肩や腕、そして胸から胴回りにかけての太さが際立っている。ただ立っているだけなのに、物凄く圧迫感があって息苦しさを感じる。するとアレさんが


「川内君を連れて来たぞ」


 マックスさんが頷いて、校長室と書かれた部屋の扉をノックした。


 えっ、お嬢様って校長室にいたの。ってことは、今は校長先生と一緒なのかな。って思っていると、扉が開いて中から外国の女性が現れた。俺を見ると一度廊下に出て扉を静かに閉めると、アレさんと母国語なのか、日本語以外の言葉でやり取りをしていた。


 英語じゃないってのは分かるんだけど、どこの国の言葉なのかは、分からなかった。すると外国の女性が


「もう少しでブリーフィングが終わるのでしばらくお待ち下さい」


 と言い、右手を差し出して


「エレーナです」


 と、名乗った。ん、てっきりこの人がアレさんの言っていたレーナさんだと思っていたんだけど、違ったみたいだ。俺は差し出された手を握り


「川内です」


 と言うと、アレさんと同じで、笑顔なんだけど目だけが笑っていなかった。


「レーナって呼んでもらって構いません」


 なるほど、やっぱりこの人がレーナさんだったのか、エレーナかレーナはどっちかが愛称なのかな。


「私もアリョーニャと同じであなたに助けられました。本当に感謝しております。ありがとうございました」


 丁寧に頭を下げてお辞儀をした。スーツ姿の女性って、見てて格好良いし綺麗な外国の女性だからなのか、一つ一つの動作を目で追ってしまう。髪はブロンドで肩くらいの長さのボブだ。


 年齢はやっぱ分からないけど、アレさんと同じくらいで、マックスさんよりも下って感じかなあ。あとは、ぱっと見だとボディーガードって言うよりも、海外のセレブって感じなので、普通に見惚れてしまいそうだ。そんで、たしかアリョーニャって言っていたけど、誰の事なんだって思って、首を傾げているとアレさんが


「アリョーニャってのは俺の愛称だ、ちなみにマックスってのも愛称でマクシムってのが正式な呼び名になるぞ」


「じゃあ、アレさんって呼ぶよりはアリョーニャさんって呼んだ方が良いのでしょうか」


「いや、俺の場合はアレで構わないが、マックスはどうする」


「俺はマックスで構わない」


 見た目通りの低く太い声で、マックスさんが答えた。なので俺は


「マックスさんレーナさん、昨日は助けて頂きありがとうございました」


 二人に向かってお辞儀をした。そして、ゆっくりと頭をあげるとレーナさんが


「あなたにしてもらった事に比べたら、比較にならないくらい他愛の無い事でございます。それに無事でなによりでした」


 と言い、俺の脇腹辺りを見ていた。マックスさんは目が合うと一度頷いて、表情をを固くすると、俺とアレさんが歩いて来た廊下を見たりして、周囲の警戒を再開し始めた様子だった。すると、校長室の扉が開き、警察の武田さんと消防の成田さんが、難しい顔をして出て来た。俺に気づいて武田さんが


「おお、君か。昨日はご苦労だった。君達のお陰で沢山の人々が救われたし、私の部下達も助けられたよ。感謝するぞ」


 俺の肩をバッシバシ叩いて来た。それを見ながら消防の成田さんが


「本当に助かった。これからも宜しく頼むよ」


 俺の背中を叩いて来た。警察も消防も普段から肉体を鍛えている人達だからなのか、ノリが体育会系な感じでスキンシップが激しいんだよなあ。って思っていると、校長室から校長先生が出て来て


「昨日の事だけじゃなく、普段からうちの生徒達もお世話になってるみたいで、本当に助かってますよ。これからも宜しくお願いしますね」


 と言い、ここの学校の代表者達は廊下を歩いて行った。すると、校長室の扉の前でレーナさんが


「どうぞ、お入りください」


 俺は中に入ると、室内には女性が二人いた。


 一人は校長先生が使う立派な机に腰掛けていて、もう一人は車椅子に座って書類に目を通していた。


 さて、どっちがお嬢様なのだろうか。先ずは挨拶をしないとマズイよなあって思っていると、俺の後から入室したアレさんが、校長室の扉をしめて母国語なのか、また俺が今まで聞いた事のない言葉で、机に腰掛けている女性とレーナさんとで話しを始めた。


 マックスさんは廊下で椅子に座って、周囲の警戒をしているのか、入室はしてこなかった。


 俺はアレさん達の話しが終わるまで、車椅子の女性と机に腰掛けている女性のどっちがお嬢様なのか予想する事にした。


 机に腰掛けている女性は、鳥のシルエットがプリントされた白いトレーナーを着ていた。俺は鳥については詳しくないので、シルエットを見ても何の鳥なのか全く分からなかった。でも、トレーナーにプリントされている鳥は、ニワトリでもカラスでもない事だけは分かる。そして、鳥のシルエットには「ピヨ彦」って文字がプリントされていた。何処かのブランドなのかな、ちょっと俺には分からなかった。


 そんな鳥のお姉さんは、黒髪でセミロングストレートだからなのか、上品で落ち着きのある雰囲気だ。でも、伸ばした前髪を流しているからなのか、ふわっとした感じのやわらかい印象を受けるので、大人なのに可愛いらしい女性って印象でもあった。


 車椅子に座っている女性が、見ていた書類を校長先生の机に置き、アレさん達との会話に参加していた。


 こちらの女性は、犬のシルエットがプリントされた黒いトレーナーを着ていた。最近は動物がプリントされたトレーナーを着るのが流行りなのかな。


 ちなみにプリントされている犬が何なのかは分からないが、チワワやダックスフントではない事は俺でも分かった。そして、鳥のお姉さんと同じで犬のシルエットには「くろらぶ」の文字がプリントされていた。


 車椅子のお姉さんも黒髪で、髪型は前髪ぱっつんの前下がりボブだ。


 二人ともパッチリ二重で顔の作りは何となく、南国風のエキゾチックな顔つきで、全体的に顔のパーツが派手な印象だ。そして、目力が強いし若干目つきも鋭い感じなので、沙織と同じで、無口でいると周りの人から機嫌でも悪いのって聞かれちゃうタイプだと思う。


 参ったぞ。ぱっと見ではどちらがお嬢様なのか全く分からない。って事を考えていると、車椅子に座っているお姉さんが


「お待たせ、とりあえず座ってラクにしてちょうだい」


 三人掛けのソファーへ手の平を向けて、俺に座るように促した


「失礼します」


 ソファーに腰掛けると


「初めまして。ダーシャよ宜しくね」


 右手を差し出して来た。


このお姉さんがお嬢様なのかなあ。にしても、目力が強いからなのか、威圧感が半端ないな。


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