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第75話 世界を変える集団

 小田先生が難しい顔をして


「でも、意思の力で何でもある程度は思い通りになるって事は、良い事もあれば悪い事も沢山起こりうるから、これからは色んな意味で本当に大変な世の中になっちゃいそうよ」


 俺と千春が頷いたのを確認すると


「これからは自分の都合で簡単に能力を使ったりしないようにね。能力を使う事で、その先に起こりうる事をしっかりと考慮してから使うようにするのよ。じゃないとツライ思いをするのは君達なんだからね」


 ん~、使う前に考慮しろかあ。確かに魔法は簡単に使えるから色々とラクしようって思っちゃうかもだなあ。でも、苦労するよりはラクな方が良いって思っちゃうもんなあ。ってな事を考えていると、千春が


「えっと、先生。その人って大丈夫なんでしょうか」


「あ~、大丈夫よ。でもこのままだとジャマよね」


 と言って、地面に寝そべっている外国の人に目を向けると


「ほら、戻したわよ。ところでアレクセイは何しに来たの」


 スーツの上着やズボンについた砂を手で払いながら


「お嬢様に頼まれて人探しです」


 それを聞いた小田先生は


「あ~、なるほどねえ」


 と言って、納得した感じで頷いていた。すると、スーツ姿の外国の人が俺と千春を見て


「君が川内君かな」


 滑らかに日本語で問い掛けて来た。


「ええ、そうですが」


 外国の人が少し値踏みするような目つきで俺を見ると


「アレクセイだよろしく」


 手を差し出し握手を求めて来た。


 アレクセイさんは笑顔なんだけど目が笑ってないので、少し違和感を感じたが、俺は差し出され手を握り


「どうも、川内です」


 すると、今度は千春に手を差し出して


「アレクセイだよろしく」


「えっと、加藤です」


「ん、君はオスだったのか」


「えっ、オスって何ですかあ」


 千春が首を傾げている。するとアレクセイさんが


「いや、可愛い服装だったからてっきりメスだと思ってたからショックでね」


 片目をパチッと閉じた。そこら辺の人がやると見ていてゾワッとして、何故か嫌悪感を覚えるのに、この人がやると洋画のワンシーンみたいで、イヤな気にならないから不思議だ。


 年齢は幾つくらいなのかな二十代から三十代くらいなのかな、年上の人って比較対象がいないから分かりにくいし、ましてや外国の人だから年齢が全く分からない。でも、格好いいと何をやっても不快に感じないから羨ましいなあ。


 ただ、オスとかメスってもっと言い方があるでしょうにって思っていると、千春が


「ああ、僕はオスです。この格好は学校の生徒達から評判が良いのです。紛らわしくてゴメンナサイです」


「オー。気にしなくて大丈夫だ。それにその服装はとっても似合ってるから、これからも続けると良いよ」


 千春がニコニコしながらカエルのフードを被り、胸を張って白衣姿をアレクセイさんに見せつけている。ふむ、さりげなく相手の服装を褒めるとか流石だな。千春が女子と間違えられた事に気分を害する事を忘れて、服装に意識を持って行かれて喜んでる。


 ん~、たぶんだけどアレクセイさんって昨日、沙織が落ち着いたらお礼に来るって言っていた、外国の人なのかなって思っていると、アレクセイさんが俺と千春に


「アレクセイでもアレクでもアレでも好きに呼んでくれて構わない」


 と言って来たので俺は


「じゃあ、アレさんって呼ばせてもらいます」


 すると千春が


「僕もアレさんで呼びます」


 アレさんは頷いて


「うん、それで構わないよ。でだ、山内君。お嬢様に言われて迎えに来た。今から少し時間を貰えないだろうか」


 俺の勝手なイメージで違う国の人との会話って、発音とかが微妙で聞き取りにくいのかなって思っていたんだけど、アレさんって日本語が上手いな。違和感なく普通に聞き取れるし言葉使いもちゃんとしている感じだ。


「分かりました。でも、どこに行くのでしょうか」


「校舎の二階だ、案内するからついて来てくれ」


 すると千春が


「じゃあ、僕は白沢先生のとこに行くから途中まで一緒に行こ」


 と言い、席を立つと小田先生が


「私も患者を診て来るかな」


 と言って席を立った。





 昇降口に向かいながら歩いているとアレさんが


「ハイスクールの制服姿だから直ぐに見つかるって言われてたけど、私服だったら見つけるのが大変だったかもな。違う国の人達はみんな同じ顔に見えてしまう」


「あ~、それ分かる気がします。俺も違う国の人達って顔つきが同じに見えますもん」


 アレさんの身長は俺より高くて直樹よりは低いって感じだ。筋肉ムキムキって感じでは無いが、華奢な印象は全く感じなかった。スーツ姿だからどれだけ鍛えているのかは分からないけど、明らかに一般的な日本人男性よりも筋肉量は多い感じだ。


 そして何よりスーツ姿がカッコイイ、俺の父親もスーツを着て仕事に行っていたけど、やっぱスーツって外国の人が着るとそれだけで絵になるなあ。って思っていると校舎の昇降口からちょっと目つきの鋭い感じの集団が出て来た。


 ジャージやスウェット、スーツにトレーナーって感じの服装だけだと、パッと見では何の集団なのか分からない人達だった。すると、集団の中から一人こっちに近づいて来る人物がいた。よく見ると一年の時に同じクラスだった久津明宏だった。


「よう、川内も加藤も元気そうだな」


 すると千春が


「くずっちも元気そうだね」


「ああ、家に帰るつもりだったけど、駅周辺が大変な事になってたからな。んで危なかったところをここの人達に助けてもらってな。それからは一緒に行動してるって感じだ。お前ら二人がそろってるって事は、森下もここにいるのか」


「うん、なおっきーもいるよ」


「そっか、加藤達は家に帰らないでこんなとこで何やってるんだ」


「んにゃ、家には帰るつもりだよ。でも今はちょっと寄り道してる感じかなあ。くずっちは家に帰らないの」


「俺はここの人達と世界を変えるって決めたから、家には帰らないつもりだ。今は弱い人達を守りながら調子に乗ってる連中を始末してる最中だ」


 久津が顎を上げて得意げな表情をした。それを見て千春が少し頬を引きつらせながら


「せっ世界を変えるって、またどえらいプロジェクトだねえ」


「今はまだ調子に乗って歯向かって来る連中を始末しながら、戦えない弱い人達を守りつつ、俺達が管理する地域を拡大して行くって段階だけどな」


 と言って、口元に笑みを浮かべると


「そんで今日は、ここら辺一帯に潜んでた犯罪者達が警察署に収容されたって聞いたから始末して来たんだ。それと、これからも調子に乗ってる連中は俺達が始末するし、この学校も守ってやるから安心しろって伝えに来たんだ」


 すると久津は腰に手を当てて


「犯罪者達を早いとこ始末しないといつまで経っても平和になんてならないからな。いまだに法律だの人権だのって言ってウダウダ言って、何もしない連中ばかりだろ。だから、俺達が人のイヤがる汚れ仕事を請け負ってやってるんだ。だってそうだろ、配慮が足りない連中のせいで必ず何処かで悲劇が生まれてるんだぜ。そんな連中に情けを掛けてどうするのよ、被害者達が報われないだろ」


 ふむ、凄く偏った考え方に聞こえるんだけど、昨日の体育館での出来事や校庭での惨状を見ているからなのか、被害者側の立場で考えると、納得出来ちゃう行為ではあるなあ。って思いながら俺は気になったので


「なあ、なんで久津って目が充血してるんだ。寝不足なのか」


 するとよくぞ聞いてくれたって感じの表情で


「ここのトップの人から世界を変える為の力を授けてもらったんだ。目の充血はそれからだな、でも痒くもないし痛くもないんだぞ。でな、この力を使って化け物や犯罪者を始末すると、体中に力が漲る感じがあってよ。アレだ、ゲームで敵を倒して経験値を獲得したら多分こんな感じなんだろうなって感覚を、現実世界で体感できたって感じだったな」


 って言いながら胸を張り


「実際に何人か始末したら身体能力が向上した感じがしてな、試しにその場でジャンプしたら余裕で天井に触れたぞ。多分レベルが上がって俺のステータスも上がったんだと思うぞ」


 自分の拳を強く握ったり開いたりしながら見つめている久津に


「具体的にその力ってどんな力なんだ」


 って聞くと、急に胸を締め付けられるような痛みがして、俺は息が詰まった。久津がニヤニヤしながら俺を見て


「まあ、こんな感じだ。あんまり調子に乗ると川内も始末しちまうからな」


 そして、顔から変な汗をダラダラ流している俺を見ながら


「お前たちも守られる側じゃなくて俺達と一緒に世界を変えようぜ。トップには俺が声を掛けてやるからよ。当分はこの地域で活動するから気が向いたら声を掛けてくれな」


 と言って、昇降口から出て来た集団のところに走って行った。


 すると千春が


「ごめんね、エンチャントが全く機能してなかったね」


 申し訳なさそうな表情をしていた。


「いや、俺も油断してたから気にするな」


 小田先生が俺の肩に手を置き、顔を覗き込んで


「大丈夫かい」


「さっき小田先生と話しをしてたのに、全然ダメでしたね。もっと気を引き締めておかないとですね」


 すると小田先生は俺の肩をポンポンと叩いて笑顔で


「これからは本当に大変な世の中になりそうだねえ」


 俺は千春や小田先生に心配されながら、アレさんが目を細めて久津と世界を変えるって言っている集団を見つめていたのが少し気になっていた。


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