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第72話 朝食

 今朝はつもより起きる時間が遅かった。なぜって、千春に一人でトイレに行けないから付き合って欲しいって、夜中に起こされたからだ。


 そして、たまたまトイレでばったり会った山口さんから、興味深い話しを聞いたので寝る時間がかなり遅くなってしまったのだ。


 でもまあ、山口さんからは色々と知らなかった話しを聞けたし、千春の使った魔法がとても幻想的で、普段見ることのない光景だったから、夜更かしをして睡眠時間は削られちゃったけど、何気に得した気分だった。


 だけど、やっぱり夜はちゃんと寝ないとダメだ。


 とても気持ちよく眠っているのに、どんな理由があろうとも途中で起こされると「なぜ俺の至福の時をジャマするんだあ」って感じで損した気分になる。


 さっき直樹に一度起こされたけど、あまりにも眠すぎたので「夜中に起きてしまった分の睡眠時間を取り戻す為に、今朝は二度寝をする」と伝えた。すると、直樹は「調理エリアで炊き出しの手伝いをして来る」と言い、出掛けて行った。


 別に学校での手伝いは必須じゃないんだから、ゆっくりしていれば良いのにって思うけど、人それぞれだから「行ってらっしゃい頑張って」って声を掛けといた。


 そして、二度寝から目覚めると千春が隣でまだ眠っていた。声を掛けると目を覚ましたので、俺と千春は朝食を頂きに行く事にした。


 調理エリアに直樹の姿は見当たらなかったが、飲食兼休憩エリアで沙織達を見つけた。


 沙織と麗奈と西條さんは、既に食事は済ませたようで、今は楽しそうにお喋りをしていた。近づいて来る俺達に気づいて、西條さんが


「おはよ~。今から朝食なんだ」


 笑顔で俺達に挨拶をすると、沙織と麗奈も


「おっはよー」


「おはようございます」


 笑顔で挨拶して来た。俺と千春も女子三人と挨拶を交わすと、千春がテーブルにお粥を置き


「ちょっと夜更かししちゃって、起きるのが遅くなっちゃった」


  参っちゃったよって感じで椅子に座ると、沙織がお茶を飲みながら


「遅くまで何をやってたんだかねえ」


  目を細めて俺達を見た、俺は椅子に座りながら


「シイタケの切り方を教えてくれたおばちゃんと話し込んでたら、寝るのが遅くなった」


 沙織にそう伝えると、麗奈が


「ああ、そういえば昨日直樹君とシイタケを切ってましたねえ」


 それを聞いて西條さんが意外って感じの表情で


「えっ、なに、遅くまでシイタケについて話してたの」


 すると、千春がお粥を冷ましながら


「んにゃ、シイタケとは全く関係無い話しなんだけど、なかなか興味深かったよ」


 麗奈が首を傾げて


「う~ん、なんだろう。違う食材の切り方とか、何かの料理のレシピとか」


 沙織は首を傾げて、西條さんも考えを巡らせている感じで、眼をパチパチさせて俺達が山口さんとどんな話をしていたのか考えている様子だった。そんな女子達をみて千春が、口元に笑みを浮かべると


「実はね、幽霊について話してたんだよねえ」


 と言って、お粥を一口パクっと食べた。


 沙織は片方の眉を吊り上げて


「ふ~ん」


 麗奈は口角を下げて口をへの字にして


「へ~」


 西條さんは目を細めて


「ほ~ん」


 どうやら女子三人には興味の無い話だったようだ。すると千春が


「えっ、なんで、幽霊だよ怪奇現象についてだよ」


 と言って、キョトンとした顔をしていた。


 すると沙織は頬杖をつき


「そ、そういうのはいいや」


 と言って、顔を横に向けて遠くを見だした。


 麗奈は顎に手を添えて


「そ、そうね、興味ないかなあ」


 と言いながら、少し俯きテーブルを見つめた。


 西條さんは頭の後ろで手を組んで


「ん~、違う話が良かったかなあ」


 って言いながら空を眺めていた。


 女子三人が何故かいつもと違う様子で少しソワソワしていた。


 実は興味があるのか、本当は怖くて聞きたくないのか、どっちなのか判断に迷うが、普段と違う三人を見れたので俺は少し得した気分になった。千春は思っていたほど女子が話題に乗って来なかったからなのか、首を傾げながら静かにお粥を食べ始めた。


 俺も今日は朝食にお粥を頂いている。お腹は空いているんだけど、特に食べたい物が無かったので何を食べるか迷ったあげく、お粥を頂く事にした。


 お粥って俺の勝手なイメージで体調不良の時に食べる物って思っていたから、今まであまり食べた事が無かった。けど、食べてみると意外と美味しくってビックリしてしまった。


 そんな美味しいお粥をもう一杯お代わりしようか、どうしようか考えていると沙織に


「そだ、克也」


  呼ばれたので、沙織を見ると


「昨日ヒトガタを引き剥がしてくれた外国の人なんだけどさ、病院からの避難者に凄いお嬢様がいるらしくって、その人の身の周りの世話をしてる人達なんだって」


 すると西條が目をキラキラさせながら


「そのお嬢様ってのがね、テレビ番組や映画の動画配信サービスとか物販をやっている誰もが知ってる超有名企業の御令嬢みたいでさ、凄いよねえ」


 ふ~ん、そんな有名企業のお嬢様があの病院に入院していたのかあって思っていると麗奈が


「そのお世話をしてる人達なんですけど、現役なのか退役なのかは分かりませんが、見た感じだと軍人さんだと思いますよ」


「へ~、麗奈も見かけたのか」


「ええ、体格の良い人が歩いてたら普通は目で追いますからね。それに、動きに無駄が無いというか、動作が滑らかだし足音もしないんですから、尚更興味を持って目で追ってしまうでしょ」


 普通は目で追わないと思うけど、そこは麗奈の事だからスルーして


「やっぱ、超凄いお嬢様だから身の周りの世話だけじゃなく、ボディーガードも雇ってるんだろうなあ」


 麗奈が頷きながら


「かも知れませんね」


 沙織が席を立ちながら


「まあ、私達みたいな一般庶民が仲良くなれるとは思わないけど、克也には用があるみたいだったから、上手くやって知り合いになっときなさいよね」


 西條さんも席を立ち


「そうよ、普通に生活してたら絶対に会う事のない人達なんだから、頑張って知り合いになっといてね」


 そして麗奈が


「でも、失礼のない様にしないとボディーガードの人にやられちゃうかもですから、気をつけてくださいね」


 と言って、席を立つと、沙織が


「千春、あかね先生が予定が無いなら、また授業を手伝って欲しいって言ってるわよ」


 千春がレンゲで掬ったお粥を口元で止めると


「おっけ~、食べ終わったら教室に向かいますって伝えといて」


「オッケー、伝えとくわね。ってか、あんた達も早く念話を使える様になってよね。じゃないと不便でしょ」


 沙織の意見に麗奈と西條さんが苦笑いしながら頷いていた。すると、沙織が片手を上げて


「じゃあ、私達は校舎内で避難者の身の周りの手伝いをして来るね」


 と言うと、麗奈は手をヒラヒラさせて


「じゃあ、またね」


 と言い、西條さんは手を開いたり閉じたりさせて


「まったね~」


 と言って女子三人は校舎へ向かって行った。女子を見送ると千春が


「念話の練習しないとだよねえ」


 渋い顔して言って来た


「だなあ、確かに使えないと不便だもんなあ」


 千春はお粥を冷ましながら


「いざって時に備えて使えるようにって思ってはいるんだけど、意外と練習する暇ってないよね」


「だなあ、何気にバタバタしてるよなあ」


 千春がお粥を一口食べて


「そうなんだよねえ、病院でヒトデナシの駆除を頑張ったし、昨日は学校が襲撃されたしねえ」


「学校の授業が無くてラクで良いんだけど、何だか慌ただしいよなあ」


 千春がお粥を掬って冷ましながら


「ん~、今日の夜にでも少し練習しとこっかね」


「ああ、そうだな、直樹も交えて今夜は練習しておこう」


 念話の習得について考えながら、俺達は美味しいお粥を食べ始めた。


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