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第61話 眠っていた間に

 沙織は千春と一緒に白沢先生の授業の手伝いを三階の教室で行っていたらしい。


 算数の授業を行っていると外が騒がしくなったので、教室の窓から校庭を覗いてみると物騒な連中が学校内に侵入して来ていた。白沢先生は状況確認の為に職員室へ移動、千春は生徒達の見守り、沙織は三階の他の教室で授業をしている生徒達を千春のもとへと誘導し始めた。


 教室の窓から校庭を見ていたくて先生の言う事を聞かない生徒や、罵声や悲鳴が聞こえて来て怖くて動けなくなった生徒、そんな生徒達に先生達が困っていると沙織が教室に登場した。すると生徒達が歓声を上げたそうだ。そうだろうね、沙織は生徒達からしたらヒーローみたいな存在だもんな。


 何故なら警察や消防の人達との戦闘訓練のインパクトが凄かったらしく、先生達の言う事を素直に聞かない生徒でも、沙織の言う事はチャンと聞くし、沙織と一緒にいれば必ず悪者をやっつけてくれるって感じで、生徒達に安心感を与えるらしい。


 沙織が千春の待機している教室に生徒達を誘導すると、生徒達は更に安心したそうだ。何故なら千春は生徒達からしたら魔法の師匠だからだ。


 千春は避難している教室に魔法障壁を発動していたそうで、更に校庭からの物騒な罵声や逃げ惑う人達の悲鳴で、生徒達が不安にならない様にサイレントの魔法も追加していたらしい。そんな千春の生徒達への気づかいに、沙織は感心させられたそうだ。


 そして、避難して来た生徒達の気を紛らわす為なのか、千春は生徒に魔法障壁の採点を始めると言い出したんだそうだ。すると、生徒達は我先にって感じで魔法障壁を発動し始めた、千春は生徒一人一人の障壁を確認しながら、出来栄えを採点したりして生徒の意識が校庭に向かない様にしていたらしい。


 俺は沙織から話しを聞きいて、改めて千春の優しさに胸を温かくさせられた。


 三階にいる全ての生徒達の避難を終わらせた沙織は、麗奈と西條さんに念話で状況を確認をする。すると、四階の病院からの避難者と医療従事者の避難は終わっていて、今は物騒な連中と交戦中との事だった。白沢先生は取り込み中なのか念話が通じなかったので、ひとまず三階の生徒達を千春と他の先生達に任せて、沙織は麗奈達と合流しようと考えた。


 そして、外の状況を何気なく教室の窓から眺めて見てみると、調理エリアで物騒な連中が沢山倒れていたのが目に付き、俺がヒトガタに拘束されて、横から体当たりされて倒れた場面を目撃した。


「そんで倒れても直ぐに起き上がらないし、地面に血だまりが出来始めたから急いで駆け付けたのよ」


 今考えると頭は回らなかったしスッゲー眠くなっちゃったりして、正直けっこうマズイ状態だったと思う。俺は脇腹を擦りながら、沙織にもっかいお礼を言い、今のみんなの状況を聞いてみた。


「千春は念話が出来ないから状況は分からないけど、まあ問題無いでしょうね。んで、麗奈とかなえさんは病院からの避難者を守りながら四階で頑張ってるみたいよ、あかね先生は二階の職員室付近で交戦中って言ってたわ」


 こういう時って念話を使えると本当に便利だよなあ。すると、沙織が笑顔で


「とりあえず、みんな無事で問題無さそうな感じよ」


「そっかあ、みんな心配は無さそうだな。でも直樹はどこにいるんだ、調理エリアにいると思ってたんだけどなあ」


「そうね、飲食兼休憩エリアの方にもいなかったわよ、そうなると体育館で頑張ってるのかしら」


 全員では無いけど、みんなの状況は聞けたので俺は立ち上がって辺りを見回す。


「なんでヒトデナシがいるんだ」


「なんかね、どこからか続々と学校にやって来るんだよね、あっほら、また来た」


 学校の校門から、赤オニ型のヒトデナシとスキンヘッドのヒトデナシが侵入して来て人を追い掛け始めた。


 校庭にはヤギ型も青オニ型もいて、中にはヒトガタを食べている個体もいた。怪我人を守りながらヒトデナシと戦っている人がいたり、人同士の集団が血塗れになって戦っていたりもした。


 俺は沙織に


「う~ん、こうなっちゃうと人同士でやり合ってる連中は、どっちが避難者なのか分からないな」


「そうね、こうはっちゃかめっちゃかだと、どっちの味方をしたら良いのか分からないわよね」


 えっ、それって「しっちゃかめっちゃか」じゃないのか、今沙織は「はっちゃかめっちゃか」って言ってたよな、まあ言いたい事と言うか、気持ちは伝わったから言い間違えに関してはスルーしとくかな。


 校庭を見ていると、段ボール箱を担いで学校の敷地から離れて行く連中もいた。


「食糧を持って逃げてくヤツもいるな」


「さっきから見てると、襲撃しに来た連中って、人を襲うヤツ等よりも食料を奪っていくヤツ等の方が多いわよ」


「どっちにしろ迷惑な連中だな」


 校庭の隅の方では学校の避難者が集まっている様で、鉄パイプやクワや斧を持った人達が協力してヒトデナシと戦っていた。


「物騒な連中って、食料を奪って殆ど逃げてった感じなんか」


「そうね、でも克也が眠らせたヤツ等が起き出したら状況が変わるかも」


 調理エリアには俺がスリープで眠らせた物騒な連中が、まだ地面に横たわっていた。そうなんだよなあ、眠っている連中を早いとこロープか何かで縛っておかないと、マズイんだよな、目覚めてまた暴れ出されたら面倒なんだよなあ。


「俺は直樹と合流してからどうするか考えたいな。このまま体育館に向かっちゃって良いか」


「校庭の隅の方で頑張ってる人達の手伝いをしたいけど、私も直樹と合流してからで良いと思うわよ」


 俺は今居る場所が、刺された位置からだいぶ離れた場所だったので、沙織に


「ここまで運んでくれたのか」


 沙織を見ると何か思い出した様子で


「あっ、そうだ、さっきちょっと助けて貰ったんだけど、克也って国外の知り合いっているの」


 何の事だって思って首を傾げると


「克也を拘束していたヒトガタを引き剥がしてくれたのが、外国人さんなんだけど」


「いや、知り合いなんていないぞ」


「克也にヒールとクリーンをして、ヒトガタをどうしようか困ってたらさ、スーツ姿の男性と女性の外国人さんが現れてね、男性がヒトガタを引き剥がしてどこかに連れ去ってったんだけど、女性が克也に落ち着いたら近い内にお礼に伺いますと伝えて欲しいって言って、男性の後に着いて行っちゃったのよね」


 う~ん、全く身に覚えが無いぞ、国外の知り合いはいないし、お礼をされる覚えも無い。


「なんかすっごく日本語が上手だったわよ、あと女性はすっごく綺麗だったし、男性は直樹が魔法で筋肉モリモリの時と同じくらい体格が良かったわ」


「いや、全く知らない人達だな。でもお礼に来るのかあ、そん時に俺もお礼をしておくかな、んで沙織も運んでくれてサンキューな」


 沙織は俺の肩をポンポンって叩くと、口元に笑みを浮かべて親指をグッと立てた。そんな沙織のキメ顔は、それなりに綺麗だったし、何故かちょっぴり可愛くも見えた。





 体育館からは罵声や悲鳴も聞こえて来るけど、何かに物がぶつかっている様なデカい音もしていた。


 中を覗いてみると、寝床代わりの段ボールが物騒な連中が踏み潰したのか、逃げる人達が慌てて踏み潰したのか、ボロボロになって散らかっていた。床や壁と段ボールには沢山の血が飛び散っていて、飲食兼休憩エリアや調理エリアの様に、ここでも一方的な暴力行為が行われていたんだと思うと、イヤな気分になった。


 体育館の出入り口から遠く離れた場所に、学校の避難者達が集まっている様で数人の男達は武器になりそうな物を持って立っていた。でも殆どの人達が床に座り込んで怯えている様子だった。


 数人の大人達が床に倒れている人を、ロープの様な物で縛っていたり怪我人の手当てをしていた。刃物を振り回しているヤツに対して、三人の大人が説得している感じだった。鉄パイプと刃物を持って喚いているヤツに対して四、五人の大人達が説得しようとしているのか、取り押さえようとしているのか、緊張した様子で物騒なヤツを囲んでいた。


 赤オニ型のヒトデナシが男性の足を掴んで床に何度も叩きつけていた。周りには、うつ伏せの状態で床に血溜まりを作って倒れている人や、刃物が足に刺さった状態でうずくまっている人もいて、早いとこオニ型を駆除して治療に当たらないとマズイ感じだった。


 直樹は二体の赤オニ型のヒトデナシと交戦中だった。


 左の腕の骨が折れているのか肘を壊されたのか、とにかく直樹の腕は変な方向に曲がっていた。太ももを刺されたのか、ズボンが切り裂かれていて血が流れている。背中には鎌が刺さったままだし額からは血が流れていて、そうとう苦戦している様子だった。


 足を掴まれている男性を助けるべきか、直樹の援護に行くべきか迷っていると


「直樹をお願い」


 沙織が言い放ち


「その手を、離しなさいよー」


 叫びながら男性の足を掴んでいるオニ型に向かって走って行き、膝蹴りをお見舞いした。


 俺は直樹の方に意識を向ける。


 直樹の正面にいるオニ型は、咆哮って言うのかな、まるで獣の様に吠えながら直樹を威嚇していた。左側にいるオニ型は足を開いて腰を落とし、前傾姿勢で前後左右に体重を移動させながら直樹の様子を伺っていた。タックルを仕掛けようとしている様で直樹の隙を狙っている感じだった。


 俺が直樹の左側に魔法障壁を発動すると、直樹が正面のオニ型の横っ腹に蹴りを入れた。オニ型が直樹の足に巻き付く様に体がくの字になって、一瞬宙に浮いた状態になった。急に時間が止まった様な感覚になったが、直ぐに物凄い速さでオニ型が体育館の壁までぶっ飛んでった。体を激しく壁に激突させたオニ型が床に崩れ落ちる前に、直樹がオニ型の顔面に右肘をめり込ませていた。


 直樹の動きが速すぎる、気づいたらあっという間に壁際まで移動してオニ型を消滅させていた。


 俺はタックルを仕掛けようとしていたオニ型に意識を向ける。すると、直樹が右拳を振り上げてオニ型の頭に叩きつける瞬間だった。大きな破裂音がしてオニ型は勢いよく頭から床に叩きつけられた。オニ型が消滅すると体育館の床がへこんで割れていた。


 一瞬の出来事だったので何が起きたのか理解するのに少し時間が掛かった。とにかく直樹の移動速度が速かった、いや速すぎだ。壁際でオニ型の顔面に肘打ちをお見舞いしていたのに、一瞬でここに辿り着くって尋常じゃない速さだから驚きもするわ。いつの間にそんなに速く移動出来る様になったんだ。


 直樹が左腕を押さえながら俺を見ると


「格闘技経験者が相手だと手こずるぞ」


 俺は直樹の左腕を見ながら


「なかなか骨の折れるバトルだったみたいだな」


 直樹は緊張の解けた穏やかな表情になり、左肩を少し上げて


「ふっ、実際に折られたんだけどな」


 と言って苦笑いした。

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