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第6話 俺と直樹と千春の魔法

 雨が降っているからなのか、外が暗くなるのが早い気がする。


 そして、雨雲があるからなのか、今日はまだオーロラは現れていない。


 日が暮れて真っ暗になる前に、そろそろ支給されたアルコールランプかロウソクに火をつけようか、そんな事を考えていると、首にタオルを巻いた千春が教室に入って来た。


「お風呂に入って来ちゃったよ~」


 俺の隣の席に座って千春はタオルで頭をワシャワシャしている


「おっ、サッパリして来たのか」


「うん、お風呂だと体も温まるしね」


 千春の頬は薄っすら赤くなっていた


「お湯ってすぐに出来たのか」


「メンバー達と水魔法を使って水を貯めてから、火魔法で貯めた水を温めてたんだけど、水が温まるまではけっこう時間が掛かったかも」


「そっか、なあ千春、俺も魔法が使えて風呂に入ろうって考えると同じ事をしたと思う」


 千春が頭を拭いていたタオルを首に巻いて


「どゆこと」


 首を傾げる。


「沙織と麗奈に魔法について話したり、直樹とどんな魔法を使うか話してて気づいたんだが」


「うん」


「俺達って色んなファンタジー作品を観たり読んだりして、魔法って馴染みのある物だけど、馴染みのない人にとって理由は分からないけど、魔法って何でも出来ちゃうモノって感じだと思うんだ」


 直樹を見ると頷いている。


 千春はまだ、俺が何を言いたいのか分からない様子だ。


「でだ、俺達は魔法を使う時ってどうしても過去の作品の影響を受けちゃって、作品の設定に沿って魔法を習得しようと思うだろ」


「うん、僕も魔法感知から魔法操作を覚えて魔法を発動させたね」


「直樹に身体強化の魔法を説明したんだけど、直樹が身体強化の魔法を発動させると、強化したい筋肉が肥大化するんだ」


「えっ、おっきくなっちゃうの」


 千春が驚いて直樹を見ると、直樹が渋い顔をして頷いた。


 そんな二人を見ながら、俺は千春に


「俺達って身体強化の魔法を発動させても、腕や足が肥大化するだなんて思わないもんな」


「だよねえ、見た目に変化は現れなくて、意識した場所の身体能力が上がるってイメージだよね」


「だろ、自分でも気づかないうちに、イメージが過去の作品の影響を受けちゃってるんだよ」


 すると、直樹が身体強化の魔法を右腕に発動させて


「重い物を持ち上げたり、力を入れる時って筋肉が太くなるだろ。だから肉体を強化させるイメージで魔法を発動させると、俺は意識した部位の筋肉が太くなってしまう」


 いつもより二回りくらい太くなった直樹の腕を、千春が席から立って触っていた


「何でダメなの、かっこいいじゃん」


「今は袖をまくっているから良いが、もし体を強化したら服が破れるぞ」


「あ~、そりゃ~ダメかも」


 直樹は苦笑いして右腕の魔法を解除し、千春が席に戻った。


 俺は千春に


「でだ、風呂に入る準備として、俺達はお湯を沸かす為に火魔法と水魔法を使うって考えちゃうけど、単純に魔法でお湯を出しちゃえば良いんじゃねって思ったんだ」


 千春は俺が伝えたかった事に気づいた様で、大きく目を開くと


「そっか、時間を掛けてお湯を沸かさなくても良かったのか。そうだよね、魔法が使えるんだから、魔法でお湯を創っちゃえば良かったんだよね」


「なっ、どうしても過去の作品の設定というか、馴染みのあるやり方で魔法を使おうとしちゃうよな」


 千春はうんうんと頷き、まだ濡れている頭をタオルでワシャワシャしながら


「ねー、うっちーは何の魔法が使えるようになったの」


「俺はこれだ」


 俺は千春の前に光の玉を発動する。


 千春が頭を拭いていたタオルを首に巻いて


「へ~、ライトボールかあ。確かに、今の電気が使えない生活だと、明かりがあると便利だよね」


「だろ、今日とかオーロラが出てないから、明かりがあると便利だぞ」


 ふむ、もう光の玉の名称はライトボールで良いかな。


 俺はライトボールを左右に行ったり来たりさせて、千春に見せつける。


 すると、千春が


「他に使える魔法はないの、ライトボールだけなの」


「俺はライトボールで直樹は身体強化だな、他の魔法はトライしてないぞ。千春は何か他に新しい魔法は使えるようになったのか」


「今は火と水の二つだけだね。次は風魔法を使えるように頑張るつもりだよ、ヘアドライヤーがないからね」


 千春はまだ濡れている頭をタオルでワシャワシャし始め


「あとね、けっこう水を魔法で出したり、水がお湯になるまで火魔法を使ったけど、魔力が無くなる感覚は感じなかったんだよね」


「へー、何か魔法を使いすぎると眩暈がするとか、貧血の時みたいな症状になるとか、過去の作品では目にするけど、その感じだと気にしないで使いまくっても平気なのかもな」


 千春と魔法の話しをしていると、沙織と麗奈が教室の後ろの扉から中を覗いている二人と目が合った。すると、沙織と麗奈がニヤニヤしながら教室に入って来てた。


 千春の後ろの席に麗奈が座って、机に沙織が腰掛けると沙織が


「ねえ、克也達は何か魔法が使えるようになったの」


 俺は目の前でフワフワ浮いているライトボールを指さした。


 千春は右手の平にファイアーボールを、左手の平にはウォーターボールを発動。


 直樹は袖をまくって右腕に身体強化を発動。


「明かりが必要なのは分かるわよ、水は飲むのに必要だし火だって焼いたり温めたりするもんね、でも」


 沙織が俺達の魔法を見た感想を言いながら、直樹の腕を指さして


「筋肉でっかくする意味ってなんなのよ」


 麗奈が直樹の肥大化して太くなった腕を触ろうとして、手を引っ込めた


「使ってみたい魔法が思い浮かばなかったから、直樹には肉体を強化してもらった」


「なんで怒るのかっこいいじゃんよ」


 俺と千春で肉体強化の正当性を訴えている横で、直樹が麗奈の行動を察したのか、麗奈に腕を差し出していた。


「私は魔法を使って快適な学校生活って思ってたから、魔法を使えるように頑張ろうって思ってたんだけど」


 沙織が話している隣で麗奈は、直樹のぶっとい筋肉に覆われている腕を、うっとりとした表情で触っていた。


 直樹と麗奈の事はスルーして、俺は沙織に


「俺は退屈してたから、暇つぶしで魔法が使えたら面白いなって感じだからなあ。沙織ほど魔法に情熱を注いでないぞ」


 千春はタオルで髪を乾かしながら


「僕はもしもに備えて準備してるだけだもん」


 直樹がおもむろにズボンの裾を上げて脛を露出さた。すると、普段から鍛えていて元々太い直樹の足が、筋肉に包まれ肥大化し更にぶっとくなった。


 腕の強化は見ていたが、足の強化は初めて見たのでビックリした。千春も沙織も直樹の足を見て驚いている。なので一瞬、会話が止まってしまった。


 麗奈は目を見開いて、椅子から立ち上がっていた。


「すまん、邪魔したか」


 会話が止まって周りが自分の足を注目している事に気づいた直樹が、魔法を解除した。


「ちょっと、麗奈落ち着いて」


「あっ、ごめんね。やっぱり筋肉って素敵よね」


 沙織が立ち上がった麗奈の肩に手を置いて椅子に座らせた。


 麗奈は筋肉が大好きだ。ジムでもプロの選手達の筋肉を見てにやけている。麗奈は筋肉が好きすぎて、スポーツ選手や格闘技選手の筋肉を雑誌や動画で見まくっている。


 なので、今では歩き方や姿勢で、その人がどんなスポーツをしているのか、あるいはどんな格闘技に精通しているのかを、簡単に見破ることが出来ちゃう女子高校生になってしまっていた。


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