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第59話 物騒な連中

 飲食兼休憩エリアで考え事をしていると、突然テーブルが倒れて俺も一緒に倒れそうになった。


 見知らぬオッサンが走り去って行った、どうやらオッサンがテーブルに体をぶつけていたみたいだった、そんなに急いで何処に行くんだろうか。


 気づくと飲食兼休憩エリアが騒がしい、色んな人達が必死の形相で何かから逃げる様にして、何処かへ走って行く。


 何事かと思い周りを見回してみると、バットや鉄パイプを持った物騒な連中が学校に侵入していた。学校の校門からゾロゾロ歩いて来ている連中もいれば、フェンスをよじ登って敷地内に侵入して来るヤツ等もいた。


 逃げ惑う人々を追い掛けて、手当たり次第に凶器を使ってぶん殴ったり、転んでしまったのか追い付かれてしまったのか、地面にうずくまっている人を、数人で取り囲んで蹴ったり殴ったりしている連中もいる。


 ナイフなのか包丁なのか、とにかく刃物を振りかざしながら、逃げる人を追い掛けているヤツや、誰かを斬りつけて返り血を浴びたのか、腕や上半身が真っ赤になっているヤツもいた。


 昇降口付近では男性が女性に馬乗りになって、刃物を何度も突き刺していた。辺り一面に血が飛び散っている様で、赤いペンキをぶちまけたみたいになっている。


 調理エリア付近では、首から肩の辺りに鉈を振り下ろされた人がいて、物凄い勢いで血が噴き出していた。血飛沫とかって映画やテレビの演出なのかと思っていたので、一瞬今見ている光景が信じられなくて見入ってしまった。


 物騒な連中が目を血走らせながら逃げ惑う人達を追い掛けて歓喜している様や、必死になって逃げ惑う人達の叫び声や悲鳴。そんな目の前の一方的な暴力行為が、映画やドラマの世界みたいで、あまりにも現実離れしているからなのか、俺は逃げ惑う人を目で追ってみたり、物騒な連中の動きをただ眺めている感じで、全く頭が働かなかった。


 先ずは何をしたら良いのか、何から始めるべきなのか、この場から離れるべきなのか、あるいは誰かを助けに行くべきなのか、やるべき事や考える事は沢山あるのに俺は飲食兼休憩エリアで突っ立ったまま身動きが取れないでいた。


 俺はその場に立ち竦んでしまっていた。


 不意に肩から腕にかけて衝撃を受けてよろけた、振り返ると叫びながら鉄パイプで殴り掛かろうとしている男がいた。


 男との距離を取る為に勢いよく後ろに下がる、男が振り下ろした鉄パイプが地面にめり込むんだ。すかさずジャブを打ち込み男が怯んだ所でハイキック。男は鉄パイプから手を離し頭をガードした。腹部がノーガードなので胃の辺りを狙ってつま先を蹴り込む。男が腹を抱えて後退った。今度は頭部がノーガードになったので、体重を乗せて肘打ちをお見舞いする。男が頭を抱えて地面にうずくまった。


 鉄パイプで殴られた左腕がジンジンと痛み始めた。腕だったから良かったけど頭を殴られていたらって思うと一瞬ゾッとした。でも、襲われた事で少しは頭が回る様になった気がする、とりあえずヒールで腕の傷を回復しながら辺りを見回す。


 おっきな金槌を振り回しているヤツが、走って逃げている人の前に立ちはだかった、逃げていた人が立ち止まると、後ろから追い掛けていたヤツがゴルフクラブで殴りつけていた。


 地面に座り両手を前に突き出し、目の前の物騒なヤツに止めて欲しいと懇願している人が後ろから走って来たヤツに、思いっ切り鉄パイプで頭を殴られていた。


 太ももを押さえている手が血だらけの人が、片足を引きずりながら必死に逃げていた、その人の背中に物騒なヤツが斧を叩き込んでいた。


 やっぱり相手を脅したり怖がらせる為に凶器を使っているんじゃなくて、確実に相手に危害を加えようとしているって言うか、葬り去ろうとしているヤツもいる。


 すでに数え切れない人達が地面に横たわっていた、血を流しながら唸っていたり痙攣なのか恐怖で震えているのか、ピクピクしている人もいた。早く手当てをしないと不味そうな感じだった。


 物騒な連中は飲食兼休憩エリアや調理エリア以外に、体育館の方にも出没しているみたいで、そっちの方向からも沢山の悲鳴が聞こえて来ていた。昇降口や校舎の窓ガラスを割って校舎の中に侵入しているヤツ等もいた。


 校舎内には小学校の先生や生徒、昨日病院から避難して来た患者さんや医療従事者がいるけど、警察や消防の人達がいるから何とかなるのかな。千春や沙織達のと合流は後回しにして俺は直樹と合流するかな。


 怪我人はどうしよう、早く治療しないとマズイのは分かっているけど、物騒な連中を何とかしないと、いつまで経っても怪我人が減らない様な気がする。直樹を探しながら近くで怪我している人をヒールで治して行くかな。


 冷たいって言われるかも知れないが、他人はホントにどうでもよくて俺には身近な連中の無事が最優先になる。


 腰が抜けてしまったのか四つん這いになって移動している人に、畑を耕す時に使うクワを持ったヤツが襲い掛かって行った。ゲラゲラ笑いながらクワで地面にうずくまった人を殴打しまくっている。体に突き刺さりはしないけど何発かは良い角度でヒットしているのか服が破れて裂けた皮膚から血が流れていた。


 俺は衝撃波を放って殴打を止めさせる、クワを持ったヤツが何事かと辺りをキョロキョロして俺と目が合うと鋭い目つきになった。すると叫びながら俺に迫って来た。俺の頭を狙っているのか両手で掴んでいるクワを大きく振りかぶった。


 頭部も腹部もノーガードなので、衝撃波を打ちまくるとクワを手放して後退りながら顔面をガードし始めた。右足に魔力を集中させてミドルキックを相手の横っ腹目掛けてに蹴り込み、インパクトの瞬間にダメージを追加させる。破裂音と同時に物騒なヤツが吹っ飛んで行った。


 さっきは目の前の光景に呆然としていたのと、急に襲われたからビックリして魔法で反撃とか全然出来なかった。でも今は気持ちが落ち着いているので、しっかり魔法を使って撃退する事が出来た。けど、まともにやり合うのは面倒くさいな。もう物騒な連中はドンドン眠らせて行くかな。


 ぶっとい鎖を振り回しながら逃げる人を追っ掛けているヤツにスリープ。勢い良く地面に倒れて起き上がらない。倒れた時に目覚めると思ったけど大丈夫そうだった。


 叫びながら俺に包丁を振りかざして来たヤツにスリープ。眠らないで勢いそのままに、包丁を振り下ろして来た。俺は右手を光らせて顔面に右ストレートを打ち込む。相手はその場で半回転して、勢いよく頭を地面に打ち付けてピクピクしていた。


 俺に対して敵意剥き出しだったからスリープが効かなかったのかな。


 名称はツルハシだと思うんだけど、先のとがった重たそうなクワみたいな道具を振り回しながら、逃げる人を追い掛けているヤツにスリープ。勢い良く地面に倒れて起き上がらない。やっぱり不意打ちだと効果ありって感じだな、興奮状態の相手に正面からだと魔法の効果は期待できないのかな。


 何のスプレーなのか分からないけど俺に向けて噴射しようとしていたヤツにスリープ。全く眠る気配は無くスプレーを噴射させて来た。素早く下がって顔や体に衝撃波を喰らわせる。スプレー男の動きが一瞬止まった。すかさず俺はスリープを発動。すると男は膝から崩れて眠り始めた。隙を突けば効果ありだな。


 俺は近づいて来る物騒な連中や、逃げる人達を襲っているヤツに向かって、スリープを発動させながら、飲食兼休憩エリアから離れる。


 地面に横になって唸っている男性にヒール。すると辺りを見回して、物騒な連中が少ない場所に向かって走って行った。


 寝っ転がって顔を腫らして空を見ながら泣いている男性にヒール。目だけを動かし俺を見ると「すまない」と言ってまた空を見て泣いていた。


 頭から血を流し膝を抱えてうずくまっている男性にヒール。「ありがとう」と言って、物騒な連中が少ない場所に向かって走って行った。


 腹を刺されたのかな、うつ伏せの状態で地面に血だまりが出来始めている男性にヒール。「ちっくしょう」と言ってその場で膝を抱えて泣いていた。


 ヒールを発動させながら、調理エリアに向かって行く途中で、倒れている怪我人を回復して行く。


 争い事に無縁な人達なのかも知れないけど、反撃していれば相手が逃げたかも知れないのに、なぜ逃げるだけで立ち向かって行かなかったんだろうか。


 回復魔法が使えたから良かったけど、応急処置ってなると俺にはちゃんと出来る自信は無い。でも、怪我で困っている人を魔法で直ぐに助ける事が出来るって分かっているからなのか、倒れて出血していたり、腕や足が変な方向へ曲がっている人達を見ても、取り乱さないでこんな事を考えていられるんだろうな。


 物騒な連中はまだ小学校の敷地内に入って来ていた。全部で何人くらいいるんだろうか。調理エリアに向かうヤツもいるし、校舎内にも侵入して行くヤツ等もいた。


 俺は直樹と合流する為に、物騒な連中を眠らせたり怪我人にヒールを発動させながら調理エリアに向かって行った。


 調理エリアの仮設テント付近は、物騒な連中でごった返していた。


 血だらけでうずくまっている人を、殴打している連中に叫んでいるヤツがいた。


「もう放っておけっ、向かって来るヤツを殺れ」


 手掴みで何かを食べている連中に


「飯は後回しだ、早くここを占拠するぞ」


 って、言っているヤツもいた。


 お姉さんの衣類を破って馬乗りになっているヤツに


「女なんか後にしろ、はえーとこ男共を殺っちまえ」


 って、叫んでいるヤツ等もいた。


 物騒な連中は小学校を拠点にするつもりなのかな。ここを拠点にする意味って何なんだろうか。みんなで協力して生活すれば良いんじゃ無いのかな。何が不満なんだろうか。なぜこんな事をするのか、なぜこんな事が出来るのか、全く理解が出来ないし、理解したいとも思わない。


 俺達の食料に手を出しているからなのか、お姉さんを襲っているからなのか、話し合いでは無く、暴力でやりたい放題の大人達に俺は腹が立っているのかもしれない。


 でも、とにかく目の前のヤツ等に「あんた達は何をしてるんだ」って本気で叫びたくなる。


 警察や消防の人達が見当たらないんだけど、まだ校舎内で頑張っているのかな。地域を巡回している大人達は、まだ学校に戻って来てこれないのかな。この状況をとにかく早く何とかして欲しい。大人達は何をしているんだ、地域社会の生活の質をどうのこうの言ってないで、ちゃんと働けよな。だんだん大人達にも腹が立って来た。


 好き放題暴れているヤツ等の数はざっと五十人くらいかな、どんだけいるのか分からないけど、目の前の光景がイヤ過ぎる。見ていて本当にイライラして来る。


 ここまで大勢の人間を相手に、魔法を発動した事はないけれど、目の前の光景がとにかくイヤ過ぎるので、絶対に物騒な連中を全員いっぺんに一気に眠らせてやる。一度眼を閉じて大きく深呼吸をする。絶対に魔法が発動してここにいる全員が深い眠りに落ちる事を強くイメージして目を開く。


「スリープ」


 まるで波紋が広がるみたいに、俺から近い場所にいる連中から、バタバタと倒れて行き、俺から遠く離れた連中も眠りに落ちて行った。目に見える範囲で動く人物は居なくなった、と同時に体育館や飲食兼休憩エリアの方から罵声や悲鳴が大きく聞こえ始めた。


 もし直樹がいたなら、こんな状況にはなっていないと思うんだけど、もしかしたら直樹も一緒に眠らせちゃってるかも知れないから、怪我人を治療しながら一応直樹を探す。


 調理エリアにいた全ての人達にスリープを発動したので、怪我した人達も眠ってしまっているはずだ。既に息を引き取っているのか、眠っているのか区別が出来ないけど、ヒールをしながら俺は歩いて行く。物騒な連中に抵抗をしていたのか戦ってたいたのかは不明だけど、オタマやフライパンを握ったまま倒れている人達もいた。


 血まみれの人が数人重なっていたので、近づいてヒールを発動させる。


 突然足首を掴まれた、しゃがんで足首から手を離そうとしたら、急に後ろから抱き締められた。抱き締めている腕を解こうと立ち上がると、今度は横から誰かがぶつかって来て倒れてしまった。立っているヤツを見ると血がベットリ着いた包丁を握って笑っていた。


 起き上がろうとするが腹部に激痛が走り起き上がれなかった。あまりの痛さに息が一瞬止まった。痛みもそうだけど、今は足首を掴まれてるし後ろから抱き締められているので、ほとんど体を動かす事が出来ない。


 左脇腹が凄く熱い、手を当てるとヌメッとした感触があり、右手を見ると血で真っ赤になっていた。


 もしかして俺って刃物で刺されたのか。


 首を動かして腹部を確認したいけど、抱き締められていて上手く体を動かせないし、動くと腹がスゲー痛い。腹部が熱くなっている感じがして、ジンジン痛みを発している様な気もする。そして体を動かすのがダルイし重い。


 とにかくヒールを発動させて傷を塞がないとマズイよな。でもスッゲー寒いしスッゲー眠くなって来た。


 これってマズイ状態なんじゃないのか、何か目も霞んで来ているのか辺りが段々ぼんやりして来てるし、徐々に視界が暗くなって来てる気もする。あ~、何か意識を保つのが面倒くさいかも、このまま眠ったら気持ち良さそうな気がするなあ。


 ジッとしてれば痛く無いからこのまま眠っちゃうかなあ。

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