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第53話 小田先生

 お昼の炊き出しを頂いて、俺と直樹と千春でくつろぎながら、エンチャントに使用する言葉で、他にも何か良い効果が期待できそうな単語や熟語がないのか考えていたら、白沢先生が白衣姿の女性を連れてやって来た。


「川内君達に確認したい事があるんだけど、良いかしら」


 白衣を着ているって事は病院関係者なのかな。違ったとしても白衣を着ているだけなのに、何か知的な雰囲気が漂って来る。そもそも、制服を着用しいる大人を見るとみんな格好良く見えるから不思議だ。


 歳は白沢先生と同じくらいなのかな。大人の年齢って身近に比較出来る対象者が居ないから分からないんだよなあ。身近で大人って言ったら、両親か学校の先生かジムとバイト先の人達くらいしか居ないからなあ。ってか、白沢先生って歳は幾つなんだろうか。知りたい気もするけど聞いたら怒られそうだから止めておこう。


 白衣の女性は前髪が邪魔なのか、ゴムで束ねてちょんまげみたいにしていた。たまに俺の学校でも見かけたけど、知的な感じの年上の女性がちょんまげにしていると、ギャップがあってちょっとドキドキして来る。


 白衣の女性と目が合ったので軽く会釈しておいて、白沢先生に何を確認したいのかを尋ねると


「昨日、入院病棟の六階でヒールって使ったかしら」


 俺は使ったけど、他にも誰か使っていたのかな。病棟の六階ではヒトデナシの駆除をしまくっていたからなあ。使ったとしたら麗奈か西條さんなんじゃないだろうか。って思っていると千春が


「僕は外来病棟で救助された人達にクリーンとヒールを使いましたけど、病棟六階ではヒトデナシの駆除をしてましので、使用する機会はありませんでしたー」


 続いて直樹が


「俺は傷を治す魔法は使えません」


 最後に俺が


「病室に潜んでいるヒトデナシが居ないか確認しながら、五部屋か六部屋くらいだと思いますが、ヒトガタに拘束されていた人達がいたので、クリーンとヒールを使いました」


 と告げると、白衣の女性が近づいて来て


「あなただったのね、ありがとう」


 と言って、俺の頭を両手で掴むと


「これは、お礼です。たっぷり堪能して下さいね」


 と言って、俺の顔に胸を押し付けて来た。


「えええ」


「おっう」


 千春と直樹がビックリして変な声を出している。


「ちょおっと、先生やめて下さい」


 白沢先生も驚いている様子だ。先生って言っているから、やっぱりこの人は病院関係者なのかな。


「減るもんじゃ無いですし、それに、このくらいの歳の子達には、スペシャルなご褒美になるでしょ」


 確かに胸の谷間に顔を埋められるのは、夢の様なシチュエーションだ。しかも柔軟剤ではなくこの人の素の香りなのかな、つまり体臭なんだと思うけど、胸を押し付けられながら鼻腔に届いて来る香りが、イヤな感じではなく、何故かドキドキして来てちょっと冷静では居られない。


 白沢先生が白衣の女性の腕を掴んで


「だとしても、教育上よろしくないので止めて下さい」


 いや、止めないで下さい。まだまだ堪能し足りません。けど、変な角度で頭を抱えられているので首が痛い。なので、実は俺としてはしっかりとお胸を堪能し切れていなかった。出来れば横からでは無く正面から顔を埋めたかったなあ。ってな事を考えていると、俺の顔に胸を押し付けながら白衣の女性が


「あら、そうなのですか。なら仕方ないですね。サービスタイムは終了です」


 あっ、終わってしまう。俺の至福の時が終了してしまう。何とかして時間延長って出来ないんだろうか。ってな事を考えていると


 白衣の女性が俺から離れると


「どうですか、私の胸を堪能して頂けましたか。ちなみに胸の弾力性をより実感出来る様に、極力邪魔になる物は除外しようと思いまして」


 と言うと、白衣の女性は胸を張って


「今の私はノーブラです」


「ちょ~」


「うおっふ」


 千春と直樹がビックリして、また変な声を上げている。


 確かに言われてみれば、感触が物凄く柔らかかった気がする。ただ、どれだけ弾力性に富んでいたのかを、比べる対象が居ないので物凄く残念だ。でも、今後はこの女性の弾力が、全てにおいて基準になるんだろうな。とりあえず少しの間だったけど、夢の様なご褒美だったので


「ありがとうございました」


 と言って、頭を下げると白衣の女性が


「お粗末様でした」


 と言って、笑顔で返して来た。





「改めまして、小田です」


「ども、川内です」


 小田先生は昨日、俺達がヒトデナシを駆除しまくった病院に勤務していた人で、入院病棟の六階でヒトガタに拘束されていたけど、警察や消防の人達によって無事に救助された人達の中の一人だった。


 小田先生は学校の人達から、停電が発生してからの事を色々と聞いて、今の状況をそれなりに把握したらしいんだけど、思っていたよりも世の中が、ずっと深刻な状態だったので動揺してしまい、昨日はずっと気持ちの整理を行っていたらしい。


 そして、一夜明けた今日は、気持ちも落ち着いて来たので、昨日救助が来る前にヒールで傷を治してくれた相手に、ちゃんとお礼を伝えたいと思ったんだそうだ。


 午前中に小学校の先生や、警察や消防の人達から昨日の病院での詳細を聞いたところ、病棟の六階に大人達が踏み込む前に、高校生と専門学生がヒトデナシと戦っていた事を知った。小田先生いわくこの学校では誰もが俺達の事を知っているそうで、直ぐに見つける事が出来たらしい。


 校舎内にいた沙織と麗奈、そして西條さんに声を掛けて昨日の詳細を話すと、三人には心当たりがなかったので、残るは俺達三人になった。すると、沙織が白沢先生に声を掛けて、小田先生を俺達のところまで案内して来てくれた。


 俺達は小田先生から感謝の言葉を頂いて、簡単な自己紹介を済ませると、直樹は調理エリアの手伝いをやりに席を立ち、千春は白沢先生と午後の授業の準備で、校舎に向かった。


 年上の女性と話す事って最近だと白沢先生と話したくらいだし、しかも医者と病院以外で会話をした事が無いのでちょっと緊張していた。


 病院で囚われていた時の事を話題にしちゃうと、イヤな事を思い出させちゃうかもだし、家族構成とか聞くのも、今は安否確認が出来ない状態だから、変に心配事を増やす事になるかもしれない、何か良い話題は無いのか頭をフル回転させていると、小田先生が


「偽薬効果、プラシーボ効果、プラセボ効果って聞いた事ないかしら」


「いいえ、始めて聞きました」


「物凄く簡単に説明すると、有効成分が含まれて無い薬剤によって、症状の改善や副作用の出現が見られる効果の事なんだけど。何で効果が発生するのかについては、まだ解明されて無いのよ。でね、今でも色んな研究がされてるんだけと、暗示や自然治癒力などが背景にあるんじゃないかって考えられてるの」


 突然、何の脈略も無く話し始めたけど、何の事なんだろうか。


「でね、多くの人はプラシーボ効果を、医師と患者の人間関係や、信頼関係とかが要因だと捉えてて、手を患部に置くことで痛みが薄れるように感じる事とかも含めて、手軽な心理療法って考える人達もいるのね」


 俺は話しを聞いて何となく察したので


「えっと、要は薬の効果とかではなく、実は患者の思い込みとかで、病気が治ったり痛みが無くなっちゃうって事ですか」


 小田先生は頷くと


「でね、ノシーボ効果ってのもあってね。この薬は効かないんじゃないか、副作用が出るんじゃないかって、悪い事が起こるって思い込みや予感があると、薬が効かなかったり、滅多に現れる事の無い副作用が出てしまったりする事もあるのよ」


 と言って、小田先生は俺を見たので


「さっき話した効果とは逆で、患者の思い込みで薬の効果が現れなかったり、副作用を誘発させてるかもしれないって事ですか」


 ちゃんと話しについて行けてますよって感じで、要点と思われる事を掻い摘んで告げると、小田先生は頷いて


「そうなのよ、でね、患者に薬を処方する時に、薬の効果だけじゃ無くて副作用についても説明するんだけど、滅多に起こる可能性がない副作用の事を過剰に説明しちゃうと、患者に強い不安を与えてしまう場合があって、患者によっては強い思い込みが生まれて副作用が出る場合があったりするから、極力患者に不安を与えない様な説明を心掛けないとってなるから、結構気を使ったりして大変だったりするのよ」


 俺は話しを聞いて気づいたので


「じゃあ、通常の薬でも期待感を持って服用するれば、薬の効果にプラシーボ効果も追加されて、より高い効果が期待出来たりするんじゃないんですか」


 小田先生はウンウン頷いて


「その通りよ、ただ過剰な説明はプラシーボもノシーボどちらも過剰に現れる場合があるから、難しいのよね」


 なるほどね~。思い込みで薬の効果が良かったり悪かったりするのかあ。初めて聞いた話だったので、ちょっと得した気分になったけど、何で急にプラシーボなんだ。


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