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第47話 囚われた人達

 入院病棟は長方形に近い形をした建物だ、俺達は角部屋にいたので通路が別れている。直樹は部屋から出て真っ直ぐの通路を走って行った、沙織達は部屋から出て横の通路を進んで行った。


 病棟の中央にはエレベーターが五基設置されていて、エレベーターを挟んで左右にスタッフステーションが設けられいる。直樹と千春は手前のスタッフステーション辺りでヒトデナシ達の駆除を行っていた。


 直樹がそれぞれ左右の手でヒトデナシを掴んで振り回していた。足を掴まれたヒトデナシが壁にぶつかって消滅した。腕を掴まれたヒトデナシが、別のヒトデナシにぶつかって消滅していた。そして、鈍器代わりのヒトデナシ達も一緒に消滅した。


 キックの技術とかは全然活かされていなかった。ヒトデナシを鈍器代わりにして腕力をフル活用して、直樹はヒトデナシの駆除に当たっていた。


 ある程度の打撃を与えると消滅するヒトデナシを武器代わりに使うのは、効率が悪いんじゃないかって思ってよく見ると、ベッドが半分壁にめり込んでいた。天井からは収納ボックスが突き刺さていた。どうやら武器代わりになる物が手元に無かったみたいだった。直樹は武器を持つと弱くなるって言ってたけど、状況によって変わるのかな。


 千春は風魔法なのか、迫ってくるヒトデナシ達を切断ながら駆除しまくっていた。


 特に危なげない感じなので、沙織達の様子を見てみる。


 沙織が通路内にひしめき合っているヒトデナシ達の中で、蹴りやパンチを放ちながら激しく動きまくって、ほぼ一撃でヒトデナシ達を消滅させていく。西條さんが常にスロウを発動している様で、ヒトデナシ達の動きが物凄く遅い。麗奈は沙織達の戦闘に意識を向けながら、病室にヒトデナシが潜んでいないか見回っていた。


 そろそろ曲がり角付近を通過する、そして真っ直ぐ進めば直樹達がいるスタッフステーションにたどり着く。みんなは六階のフロアに潜んでいる全てのヒトデナシ達の駆除をするつもりなのかな。


 俺達を騙していた、念話で助けを求めていた人物は駆除していないし、麗奈に確認してもらったら、フロア内で念話を使って助けを求めている人はいないって言っていた。だったら後は大人達に任せて、俺達は学校に戻っても良いと思うんだけどなあ。色々と思う事はあるけれど、みんなが頑張っているんだから、俺も頑張ってつき合うかなって思っていたら、何処からか声が聞こえて来た気がした。


「おーい、助けてくれー」


 例えるなら、窓が閉まった室内から、外に向かって声を掛けているような声が聞こえた。なので、鮮明には声が聞こえて来ない。何処から声が聞こえて来るのか耳を澄ましてみる


「おーい、誰かいないのか、おーい」


 あるいは、布団の中から声を出しているのか、声がこもっていて良く聞こえない。何処にいるんだろう。


「おーい、助けに来たんじゃないのか。おーい、俺はここにいるぞー」


 さっきまで沙織が捕まっていた病室の隣の部屋から声は聞こえて来ていた。


「おーい、誰でも良いから早くこいつらを引き剥がしてくれー」


 病室を覗いてみると、室内にはベッドや椅子も置いていなくて、窓側にヒトガタが複数重なっていた。


 血が流れていないからなのか、ヒトガタはパッと見だとマネキン人形みたいに見える。でも、衣類が血で汚れている個所もあるので、あまり見ていて気持ち良くはないし、どんな状況で息を引き取ったのかを想像すると一気に気分が悪くなる。


「塚田さん、あまり大きな声を出すと、またあいつがやって来ますよ」


「いや、でもよう、部屋にいた化け物達がいなくなったみたいだしデカい音もしてただろ。小田先生の方から何か見えないのか」


「私の場所からは何も見えませんね。なぜなら私は窓側を向いて横になってるので、全く廊下は見えませんよ」


「あ~、塚ちゃん、小田ちゃん喜べ。たぶん男子高校生だと思うが部屋を覗いてるヤツがいるぞ」


 病室内の窓側に積み重なっているヒトガタの中から、男性と女性の声が聞こえていた。


「おい、そこの学生、助けに来たのか」


 たぶんヒトガタが積み重なっている真ん中付近だと思うけど、ヒトガタの塊の中から男性の声が聞こえた。


 ヒトガタに拘束されて動けないのかな。俺の事が見えているみたいだけど俺からは何処にいるのか全く分からない。ヒトガタの事が気になってあまりしっかりと見ていられないってのが正直な気持ちだ。でも、これって近づいても大丈夫なのか。ヒトガタが俺を拘束しようと動き出したりしないのかな。ヒトガタの索敵範囲ってどんくらいなんだろうか。


 俺が病室内に入る事を躊躇していると、向かって左側の方から女性の声で


「救助隊員とかじゃなくて学生さんがそこにいるのかしら」


 向かって右側の方から男性の声で


「石川さん、またあいつが俺達の感情を逆撫でる為に、趣向を変えたんじゃないんですか」


 左側の方から女性が


「また期待して裏切られるって思うと、そろそろ私は心が折れちゃいそうですよ」


 向かって真ん中付近から男性が


「俺は孫に会うまでは、たとえどんなに酷い事をされようと諦めないけどな」


 右側の方から男性が


「俺も嫁と娘に会うまでは諦めないぜ。今度はどんな事をして来るんだ。小田先生も弱気にならないで頑張りましょうぜ」


 真ん中付近から男性が


「おう、そうだぜ小田ちゃん。あんたも息子に会うまでは頑張るって言ってたじゃねえか、頑張るべーよ」


 話の内容から察するに、ここに囚われている人達は、さっき駆除したお兄さんに色々と酷い事をされたみたいだな。とりあえず、もう頑張る必要は無いって事を伝えておくかな


「えっと、今は警察と消防の人達が、東側の入院病棟の患者さんや病院関係者達の救助に当たってますよ」


 左側の方から女性が


「あ~、やっぱり期待さておいて、失望感や絶望感を引き出そうってヤツね」


 右側の方から男性が


「肉体的苦痛に対して俺達が頑張り過ぎたから、今度は精神的な苦痛を与えて感情を引き出させ様って魂胆か」


 真ん中付近から男性が


「生爪剥がされたり、骨を折られたり、指先をハンマーで潰されるのは結構きつかったな。ちょっと動かすだけでも辛いし、ずっとジンジンして痛むんでイライラして来るけどな。でも今回のは相手に対して期待しなければ良いんだから、ラクなんじゃねえか」


 俺からは見えていないけど、ここに囚われている人達はもしかして物凄く酷い怪我をしている状態なんじゃないのかな。ヒトガタの状態をチラッと見てみる、腕が変な方向に曲がっていたり、足が火傷みたいに皮膚が剥がれて、筋繊維が見えているヒトガタもいた。ちゃんと確認すれば色々な肉体的な損傷を確認出来るのだろうけど、ここまでが限界だ一気に気分が悪くなった。


 右側の方から男性が


「肘の関節を壊されて、手首を持ってグリグリ動かされた時は、流石に小便漏らしましたけどね。そう考えると精神的なヤツはとにかく気にしなければ良いんで、俺はラクって思えますよ」


 左側の方から女性が


「あ~、確かにそうかもね~。耳を引きちぎられた時はきつかったなあ。ゆっくり引っ張るからミチミチと千切れる音は聞こえるし、痛みもジワジワずっと続くし一気に引きちぎってくれ~って思いましたもんね。後指の骨を折られるのも、一気に折らないで、ゆっくり力を加えて来るし。折れてからもゆっくりグリグリ動かされて、そん時は流石の私も痛みで意識が飛びましたからね」


 何か思っていた以上に物凄く酷い事をされていたみたいだった。でも、話しを聞く限りだと何かスッゲー前向きに頑張っている感じだな。もし、俺が同じ事されたらって思うと更に気分が悪くなる。この人達は物凄く精神力が強い人達なのかな。後は、やっぱりさっき駆除したお兄さんに、色々と酷い事をされたみたいだな。早いとこ頑張る必要はもう無いって事を伝えておかないとだな。


「えっと、スウェットを着たお兄さんならさっきやっつけたので、もう頑張らなくても大丈夫ですよ」


 左側の方から女性が


「あ~、やっぱりそう言って期待させるのね、そして嘘でしたって言って私達から失望感や絶望感を引き出そうとしてるのね」


 右側の方から男性が


「石川さんが言った様に期待しなければ良いんですよ、もう放っときましょうよ」


 真ん中付近から男性が


「おう、そうだぜ小田ちゃん、要は期待しなければ良いんだからラクじゃねえか」


 駄目だ全く信用してくれないぞ。今まで色々と追い込まれ過ぎて疑い深くなっているのかな。まあ、今すぐに救出しなくても警察や消防の人達がやって来るだろうから、変に色々と話して疑心暗鬼にさせて心を乱すよりは、このままの方が良いのかも知れないな。


 ただ、話しを聞く限りだとかなり肉体にダメージを与えられたみたいだから回復くらいはしておきたいな。でも、俺の事を全く信用していないからヒールの効果が得られないかもなんだよな、相手が身構えていると魔法の効果が期待できないんだよなあ。


 ん~、心の隙を突けば何とかなるかな試してみてダメだったら、ごめんなさい。救助が来るまで傷の痛みに耐えていて下さいって感じだな。んじゃ、ちょっとトライしてみるか。


 俺はいつもより集中して魔法を発動させた。先ずは目の前の病室内の全てにクリーンを発動する、そして囚われている人達から驚きの声が上がったと同時にヒールを発動させた。


 ちゃんと傷の治療が出来たのかは分からないけど、上手くできた事を願いつつ、俺は他の病室にヒトデナシが潜んでいないか、確認に向かう為に病室から離れた。


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