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第44話 入院病棟

 入院病棟の階段は建物内に二か所あったが、ヒトデナシとヒトガタが出て来れないように、警察と消防の人達で封鎖されていた。


 階段で待機していた大人達から聞いた話によると、東側の入院病棟の救助活動は、今のところ警察や消防の人達に負傷者も出ないで、順調に四階まで進んでいるとの事だった。さっき待合フロアがごった返していたのは、一階から三階までの救助された患者さん達みたいだ。


 俺達は建物内からの侵入は諦めて外からの侵入を試みた。病院の敷地内を歩いていると、沙織が


「身体強化してジャンプすれば、二階にとどきそうね。麗奈行くわよ」


「おっけ~」


 沙織と麗奈が下半身を身体強化して走り出す。スカートから見えている足が筋肉でぶっとくなっている。ちょっと現実離れしていて不思議な感じだって思っているうちに、物凄い跳躍力でジャンプすると、余裕で病棟の二階の窓にへばりつき、中に侵入してしまった。 

 

 その場に残された俺達が、沙織達が侵入した窓を見ているとカーテンかシーツを結んで作ったロープが窓から出て来た。俺と直樹はロープを使って二階に侵入して、体力の無い千春と西條さんは、ロープに捕まってもらって俺と直樹で引っ張り上げた。


 侵入した病室には誰もいなかったし、部屋が荒らされた様子も無かった。


 部屋の扉を少し開けて隙間からフロアを覗いてみるが、照明が点いていないから暗くて遠くまで良く見えなかった。


 所々扉が開いている病室があり、そこからの明かりで廊下は薄っすらと照らされているが、物陰に何かが隠れていたら暗くて気づかないかも知れない。そして、誰も人がいないのかフロアはとても静かだった。


 俺はそっと扉を閉めて振り返る。 


 沙織が手首をほぐしながらその場で軽くジャンプをして体を温め始めていた。麗奈と西條さんは病院のリーフレットを見ていた。直樹は屈伸運動をて体をほぐしていた。千春が部屋の壁に聴診器を当てていた。


 変に緊張して動きが悪くなるのは不味いけど、千春は少し緊張感が足りていない様子だったので聴診器を当てている壁に衝撃波をお見舞いしてやった。


「びゃったあ」


 千春が奇声を上げてひっくり返った。


「何なのー、びっくりするでしょ~」


「いや、ふざけ過ぎだろ」


「何で~、隣の部屋の状況を音で確認しようとしてたんだよ」


「すまん、てっきりふざけてるんかと思った」


 病棟は長方形に近い形のした建物だった。中央にエレベーターが五基設置されていて、エレベーターを挟んで左右にスタッフステーションが設けられいる。そして階段はそれぞれのスタッフステーションの隣に設けられていた。エレベーター、スタッフステーション、階段をぐるりと取り囲むように病室が設けられていた。


 沙織が肩回りをほぐしながら


「各フロアの救助は大人達に任せて、私達は寄り道しないで一気に六階まで行くわよ」


 直樹が首回りをほぐしながら


「助けを求めてる声は今でも聞こえてるのか」


 麗奈が屈伸運動をしながら


「ええ、まだ聞こえてます」


 千春が白衣のポケットに手を突っ込んで


「ん~どうしよ。僕と西條さんが障壁やスロウでとにかく敵の動きをジャマする感じで良いのかな」


 千春が陣形について話し始めると、西條さんがリーフレットをポケットにしまいながら


「後ろから襲われると怖いから、誰か私の後ろにいて欲しいなあ」


 俺は不安そうな表情の西條さんに


「フロア内にどんだけ敵が潜んでいるか不明ですが、俺と麗奈が最後尾にいるようにしますよ」


 千春が白衣の袖を捲りながら


「前衛はなおっきーと沙織ちゃんに頑張ってもらって、僕と西條さんがその後ろって感じだね」


 すると麗奈が


「私と克也君で後ろからの敵を撃退する感じですね」


 俺は頷き


「もし進行方向に敵が多かった場合は、俺か麗奈のどちらかが前に出て、もし後ろからの敵が多かった場合は、直樹か沙織が下がって来るって感じだな」


 沙織が拳を光らせながら


「分かったわ、後はそん時の状況で対応する感じになるわね」


 何だろう。いつも一緒にいる連中だからなのか、怖いとか不安とかではなくって、ちょっとワクワクした気分になっている。例えるならテーマパークのアトラクションに参加する感覚に似ている。みんなで敵を倒して閉じこもっている人達を助ける。そう考えると、不謹慎化もしれないけど、ちょっと楽しくなってきた。


 直樹と沙織と麗奈に関しては、普段のスパーリングを見ているのでヒトデナシやヒトガタに遭遇したとしても、特に不安は感じないし、千春と西條さんは対人戦闘が苦手だけど、俺達がサポートするし魔法を上手く使えるので、俺達をしっかりサポートしてくれるはずだ。だから二人に関してもやっぱり不安を感じない。


 身体能力が増しているって聞いた、オニ型のヒトデナシをまだ見てはいないけど、俺達ならたぶん問題無く駆除出来ると思う。生存者を拘束するらしいヒトガタも、まだ見ていないけど、要は掴まれなければ問題無いんだと思う。


 もっと緊張して気を引き締めておくべきなんだろうけど、良い意味でリラックス出来ているから今の状態で良い気がする。さっさと助けを求めている人を見つけて、助け出したら、美味しい炊き出しを食べに学校に戻るかな。


 俺は病室の扉に手を掛けて、みんなを見ながら


「んじゃ、ちょっくら人助けに行きますかね」


 直樹が頷き拳を握って力を入れると、上半身がでっかくなった。沙織は光る拳を手の平にパッシパシ打ち着けている。千春がニヤリと笑うと掛け布団くらいの大きさの魔法障壁が出現し、空中に膝くらいの高さで浮いていた。麗奈が両手と左右の足の脛辺りを光らせ始めた。西條さんは目をつむりその場で大きく深呼吸をし始めた。


 俺は西條さんの深呼吸が終わったのを確認して、静かに病室の扉を開けた。





 病室から急いで階段まで移動した。


 移動しながらフロア内を見ていたけど、スタッフステーションは書類なのかカルテって言うのか紙やファイルが散乱していた。椅子やベッドもひっくり返って廊下にはみ出ていたりもした。でも、ヒトデナシや患者さんとかは見当たらなかった。


 病棟の階段は真っ暗だったので、ライトボールを使って移動した。ヒトデナシやヒトガタが出現すると思っていたが、現れなかったし患者さんや病院の医師達も階段にはいなかった。


 俺達は一度も戦闘をしないで、誰にも会う事も無く、一気に六階のフロアにたどり着いた。


 先頭を早歩きで移動していた沙織が


「あそこの部屋だわ」


 と言うと、走り出した。病室の扉は全部閉まっていたけど、沙織が向かっている病室だけは扉が開いていた。角部屋になるのかな、廊下の突き当りの部屋の扉が開いてる。俺達が使った階段からだと反対側だったので、それなりに距離があった。


 スタッフステーションを横目で見ながら通過して、エレベーターホールを通過する。病室の扉は施錠されているのかしっかりと閉まっていて、中の様子を見る事は出来なかった。もし、ヒトデナシが病室から出て来て襲い掛かって来たら、不味い状況になりそうなので少し気持ちが焦る。


 そして、スタッフステーションともう一か所の階段も通過する。俺としては安全を確認しながらゆっくりと移動したかったんだけど、沙織は助けを呼ぶ声が聞こえているからなのか、焦っているみたいで移動速度がドンドン上がって行く。


 沙織と一緒に直樹も走って行くけど、千春と西條さんが遅れている。


 沙織と直樹がドンドン離れて行く。千春と西條さんも頑張って走っているけど、先頭の二人の方が早くて全く追いつけない。


 千春達の後ろにいる俺と麗奈も、先頭から距離が離れて行く。


 先頭を走る沙織が病室に入ったと思ったら、横から何かに体当たりされて病室の奥まで吹っ飛んでった。直樹が沙織の後を追って病室に入った、同じく横から何かに体当たりされて吹っ飛んだ。


「あっ」


「えっ」


 千春と西條さんが目の前の状況に驚いて声を上げた


「沙織ちゃん」


 麗奈も驚いて声を上げていた


 助けを求めていた人が病室で待っていたんじゃないのか。なんで二人が吹っ飛ばされた。突然の事で頭の処理能力が鈍くなっている。


 俺達も病室にたどり着いた。部屋の中では直樹が床にうずくまった状態で、ヤギ型に足蹴りされていて、沙織は床で横になって倒れていた。


「先生か看護師が駆け付けて来たのかと思ったら、なに君達は高校生なのかな」


 病室の奥でスウェットを着たお兄さんが、腕を組んで俺達を見て笑っていた。


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