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第40話 病院へ

 西條さんの家に服を取りに行って、学校に戻って来た頃にはお昼になっていた。


 沙織達は荷物を置いて来ると言って校舎に向かったので、俺は炊き出しを頂きに調理エリアに向かった。


 お昼ご飯の時間帯なので当たり前だが人が多かった。そして、調理エリアの人達も慌ただしく動いていた。


 並んでいる人や炊き出しを持って歩いている人達を避けながら、いつも通りラーメンを作っている仮設テントに向かって歩いて行くと、沢山並んでいる仮設テントの中に見慣れた人物が、汗を流しながら焼きそばを作っているのを発見した。


「なんか、すっげー似合ってるな」


 声を掛けられて一瞬驚いた直樹が


「習い始めたばかりだけど、やってみると料理は楽しいぞ」


 俺が女子だったら胸がキュンってなるんじゃないかってくらい、直樹は良い笑顔をしていた。


 どうせ午後もやる事が無くて暇しているだろうから、俺は


「んじゃ、夜の調理は手伝ってみるかな」


 直樹は首に巻いたタオルで汗を拭いながら


「なら、俺が焼きそばの作り方を教えるぞ」


 俺は直樹の作った焼きそばを貰い「頑張れよ」ってエールを送ってその場を離れた。焼きそばだけじゃ物足りないので、他にラーメンとチャーハンを注文して飲食兼休憩エリアに俺は向かった。


 席に着き早速直樹が作った焼きそばを食べてみる。美味い。家で食べる焼きそばよりも断然美味しい。何でこんなに美味しいんだろうか。


 ん~、調理の仕方で味が変わるのか、鉄板で作ると味が変わるのか、何で美味しいのかは謎だが、明日も焼きそばをチョイスしようと心に決めていたら


「なんで、炭水化物しか食べてないのよ」


「バランス良く食べないとダメですよ」


 俺の炊き出しのチョイスにダメ出しをしながら、沙織と麗奈が炊き出しを持って席に座った。


「森下君の手料理だわ」


 西條さんがニヤニヤしながら焼きそばを持って席に座った。


 俺が焼きそばをモリモリ食べていると、沙織がお茶を一口飲んで


「千春は午後も白沢先生達と授業だって」


 麗奈がお皿やお椀の位置を整えながら


「魔法だけじゃなくて、他の科目も先生達と一緒に教えるんですって」


 沙織達は荷物を置きに行った時に、千春か白沢先生に会って来たのかな。


 西條さんがクリーンの魔法で手を綺麗にしながら


「加藤君がね、生徒に何かを教えて理解してくれると、何故だがとっても嬉しくなるって言ってたわ」


 ああ、その気持ち少し分かるかも。キックを初心者に教えていてコツが掴めた時の相手の反応って、隣で見ていてこっちも嬉しくなるからなあ。俺は午後もやる事が無くて暇だから、お邪魔じゃなければ授業に参加してみるかな。


 沙織がシチューを混ぜながら


「直樹は午後の訓練に参加するって言ってたわ」


 今日も訓練があるのか。千春の授業に参加するのも興味あるけど訓練も興味あるんだよなあ。俺は昨日、訓練に参加していなかったし、大人達に交じって体を動かしたいって気持ちもあるんだよなあ。


 麗奈がお茶を一口飲んで


「私達は午後から病院に行くのですが、克也君って午後の予定って空いてますか」


「何も無いけど、午後の訓練は参加しないのか、昨日はまたやりいって話してなかったっけ」


 西條さんが焼きそばを食べながら


「学校の人達が今日は病院に行ってるみたいで、私達は治癒魔法を使って手伝いたいって思ったのよ」


 沙織が少し表情を曇らせて


「訓練は何時でも出来るでしょ、でも、電気が使えない状態で患者さん達が困ってるって思ったらね」


 そう言えば、朝礼で北野先生を見かけて声を掛けたら「今日は病院に魔法の事を、主に治癒魔法の事を伝えに行ってきますよ」って言ってたな。確かに、ヒールが使えれば薬とか必要ないし、停電で治療が受けられない患者さん達がラクになるかもだな。


「おっけー、分かった。俺も病院に行くよ」


 しばらくは、女子達と雑談をしながら炊き出しを頂いていた。


 ラーメンとチャーハンって一緒に食べると、何でこんなにも美味しいんだろうって思っていると、沙織が聞いて欲しい事があると言って来た。


 沙織と麗奈は地域の治安が回復するか電気が復旧するまでは、小学校で先生達や警察や消防の人達に魔法の使い方を教えて、大人達と一緒に生活の質を改善する取り組みに協力するつもりだった。


 でも、魔法を使えるようになった大人達には色々な考え方があって、今は何から取り組むべきなのか、優先順位で色々と揉め始めているらしく、今のところ沙織達が手伝える事が学校内では無くなったんだそうだ。


 そこで沙織と麗奈は、もしまだ魔法を使って生活をしていない地域があるならば、そこの人達は不自由な生活をしているだろうから、魔法を普及して困っている人達を助けたいと考えた。でも、家族の事は気になるので、先ずは家族の安否確認を済ませる為に、一度家に帰る事に決めたんだそうだ。


 沙織がシチューの人参をスプーンに乗せて


「克也達の都合にもよるけど、問題が無ければ明日にでも出発したいのよ」


 元々、沙織と麗奈とは一緒に家に帰るつもりだったし特に問題は無いので、俺はレンゲにラーメンの麺を乗せながら


「ふ~ん、分かった。後は直樹と千春の都合だな」


 自宅付近の状況は行ってみないと分からない。もし行ってみて危ないようならこの学校に戻れば良い。それに、もしかしたら自宅付近は電気が復旧しているかも知れないしな。どちらにせよ、俺も他の地域の状況は確認したいと思っていた。


 それに、昨日の夜に直樹達と寝る前の話しで、両親に無事を伝える事を目標に頑張るって決めてた事だし、俺も一度家に帰るのも良いかも知れない。


 千春は飲食兼休憩エリアには見当たらなかったけど、直樹は調理エリアで頑張っていたので、焼きそばが美味しかった事と、ちょっくら沙織達と病院に行って来る事を伝えて、俺は沙織達と共に学校を後にした。





 学校の人達が向かった病院の名前と場所を聞いても俺達には分からなかった。


 でも、西條さんが何度か車で診察とか予防接種に行ったことがあるそうなので、道案内は西條さんにお願いした。ただ、病院には車で行ったので徒歩だとちょっと正確には分からないけど、多分一時間半くらいで到着するんじゃないかって話しだった。


 西條さんは既に車の運転免許を取得していたのかあ。話を聞いていて西條さんとの年の差を実感したのと同時に、車を運転出来る西條さんって大人のお姉さんって感じがした。


 ちなみに俺は、車に憧れを持っていないのと車の運転に魅力を感じていないので、今後も運転免許を取得する予定は無い。


 俺の前を歩いている沙織と麗奈と西條さんは、午前中と同じでずっと喋りながら歩いていた。今は、料理が出来る男子ってやっぱり素敵かもって話題で話しが盛り上がっている。


 沙織は「料理が作れないから相手に作ってもらえるとありがたいよね」って胸を張って話していた。麗奈と西條さんは「一緒に料理が出来たら楽しそうだから」って顔を赤くしながら話していた。なるほど、料理が出来ると女子からの受けが良いみたいだぞ。学校に戻ったら早速直樹に焼きそばの作り方を教えてもらうかな。


 女子達の話しに耳を傾けながら歩いていると、体格の良い三人組の大人達が険しい顔をしてこっちに近づいて来た。


 歩いているのが沙織達だと気づくと、大人達の表情が柔らかくなって


「あれ、何処に行くのかな」


「まだ、昼間でも危険だからあまり外を出歩かない方が良いですよ」


「君達なら大丈夫かも知れないけど、用事が無い限りは学校で待機してた方が良いと思うよ」


 沙織が元気よく


「お疲れ様です」


 麗奈が軽く頭を下げて


「こんにちわ」


 西條さんは手を振りながら


「お疲れ様で~す」


 昨日の訓練に参加していた人達みたいだった。俺も一応頭を下げて挨拶をしておく。


 沙織が姿勢を正して


「学校の人達がこの先の病院にいるって聞いたので、手伝いに行こうかと思いまして」


 すると、大人達が表情を曇らせて


「昼の報告で多数のヒトデナシが潜伏してるから増員したって聞いたな」


「君達なら戦力になるし、治療も出来るから助かるかも知れないけど、無理はしない様にね」


「本当なら俺達も駆け付けたいんだけど、地域の巡回も大事だからな」


 えっ、病院にヒトデナシがいるってマズイんじゃないか。あいつら人間も食べるんだよな、いつから潜伏しているんだ。医師や患者だけじゃ太刀打ち出来ないんじゃないか、だから増員したんだろうけど。ん~病院は大変な事になっているのかなあ。


 すると沙織が拳を握って

 

「皆さんの分まで頑張って来ます」


 なんか、沙織がスゲーやる気になっている。麗奈も西條さんも何故か闘志を燃やし始めている様子だ。


 そんな女子三人を見て大人達が


「ん~、危ないと分かっている場所に送り出すのは本意では無いのだが」


 麗奈が大人達の顔色を伺いながら


「私達が無理して戦わなくても、治療ならお手伝い出来ますから」


 難しい顔をして大人達が


「そうだね、でも危ないと思ったら学校に戻るんだよ」


 西條さんが笑顔で


「分かりました、私が危ないと判断したら学校に戻りますよ」


 表情が柔らかくなった大人達に沙織達が挨拶をして歩きだす。


 大人達が俺に近づいて真剣な表情になると


「あの子達が無茶しない様に君がしっかり守るんだぞ」


「頼んだぞ」


「しっかりな」


 と言って、俺の肩や背中を叩いて去って行った。


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