表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/97

第38話 将来について

「そだ、かなえさんってパーカーって持ってます」


「何着か持ってるわよ」


「あっ、なら私もパーカーを借りたいです」


「麗奈ちゃんは、ちょっとサイズが厳しいかもしれないかな~」


 確かに、沙織は問題無いかもしれないけど、西條さんのサイズだと麗奈の胸が苦しいかもしれないな。


 俺は沙織と麗奈と西條さん三人の会話を聞きながら、女性陣の後ろを歩いている。


「赤いパーカーってありますか、もしあったら借りたいかも」


「あっ、私はピンクがいいかなあ」


「赤もピンクもあるけど、私ってパーカーの紐を抜いちゃってるけど大丈夫かな」


 西條さんの家は、学校から歩いて十五分くらいで到着するらしい。


 昨日の夜、西條さんが沙織と麗奈に「もっと動きやすい服装に着替えたいから、一度家に帰りたい」と相談したところ、沙織と麗奈が西條さんに「じゃあ服を借りたいから明日にでも一緒に行きましょうよ」って話しになったんだそうだ。


「大丈夫ですよ、私も抜いちゃってますから」


「私も抜いちゃってま~す」


「二人とも私と一緒なのね、なら問題無いわ」


 沙織と麗奈は何となくパーカーの紐を抜いちゃう人だと思っていたけど。西條さんって、俺の勝手なイメージだけど几帳面に左右の紐の長さをチョコチョコ調整して、パーカーを着ている人かと思っていたから、ちょっと意外かも。


 にしても、学校を出てからずっと三人は話しながら歩いている。良くもまあ話しが尽きないもんだ。


 今頃直樹はリアカーを引いて、調理エリアの人達と食材の調達や調理器具の搬入を頑張っているんだろうな。千春は白沢先生達と生徒に魔法を教えている最中だろう。


 俺は一人で何も予定が無かったので、西條さんの家に行く為に沙織達の護衛を頼まれたのだ。


「あと、克也と直樹はサイズ的にムリだけど、千春は大丈夫だと思うんですよ」


「加藤君はますます可愛くなっちゃうかもねえ」


「うんうん、千春君だけでもパーカーでお揃いにしたら楽しいかも。でも、出来ればみんなでパーカーを着たいかなあ」


 女子三人が盛り上がっている。なぜ、女子は周りと一緒が好きなんだろう、みんなと一緒だと落ち着くのかなあ。俺は直樹がピッチピチのパーカーを着て、ウロウロしている方が見ていて楽しいと思うのだが、感性が違うみたいだ。


 そして、三人の呼び方が苗字から名前に変わっていた。昨日一緒に風呂に入って裸の付き合いを済ませたからなのか、あるいは一緒に寝たからなのかな。


 なんでも、白沢先生達が魔法を使って風呂を作ったそうで、昨夜は試験的に女性だけが入浴を済ませたそうだ。そんで、問題が無かったから、今日からは男性も風呂を利用して良いらしい。


 沙織達が話しに夢中になっているみたいだから、俺は変なヤツが現れないか辺りを見回しながら歩いている。


 乗り捨てられた車や破壊された自動販売機、人が歩いていない静かな街並み。


 今くらいの時間ならば、普通に車が走っていてそれなりの交通量もあったと思うし、自転車で移動している人や、徒歩で移動している人も沢山いたんだろう。


 でも今は、活気が無いと言うか静かだし、晴れて天気が良いのに街全体の雰囲気がどんよりとして暗い感じだ。電気が復旧すれば元の生活に戻れるのだろうか。もう変に期待をしないで、今の生活に馴染んでしまった方が良いのかって考えてしまう。


 昨日の夜に直樹達と体育館の宿舎で、将棋で遊びながら「このまま電気が復旧しなくて、元の生活に戻れなかったらどうしよう」って話していた事を思い出す。


 俺はとりあえず進学してそれなりの会社に就職して、一人暮らしをするんだろうなって漠然と将来を考えていた。直樹と千春も同じ考えだった。そして、在学中もしくは就職してから良い人と出会って、恋愛を経験してから結婚をする。そして、子供を育てて両親みたいな生活を送るんだろうなってな感じの将来を想像していた。


 でも、今は学校は休校状態だし、世の中は治安が乱れて警察や消防の機能が麻痺している。だったら大学や会社も麻痺しているんじゃないのかな。って俺達は考えた。そして、理解不能な魔法とヒトデナシだ。


 千春達の仮説「地球規模で転移した」じゃないけど、この先もし電気が復旧しなかった場合を考えると、もっと色々と備えておかないとマズイんじゃないのかって話しになった。今まで進路についてはしっかりと考えていなかったし、ましてやどんな仕事をしたいのかなんて全く考えていなかった。


 将来やりたい事とか夢があるならば、それに向かって頑張れば良い。でも、見事に俺達三人は何も目標が無かった。って言うか、今まで真剣に将来について考えた事がなかった。


 なので、電気が使えない事とか治安が悪い状況とかを考慮して、色々と話し合った結果、近い内に家に帰って、両親に無事である事を報告するって事を当面の目標として頑張る事にした。将来的にはどんな職種の仕事に就職するのかについては、今後の世の中の状況によって考えて行こうって方針になった。


 ただ、現状だと直樹は料理人になりたいかもって言っていた。理由は好きな物を好きな時に食べられるからだ。千春は魔法の先生になりたいかもって言っていた。魔法はイメージと想像力で何でも出来ちゃいそうだから、使い方によっては人が危険に晒されるかも知れない。そんな危険を孕んだ魔法を、悪用したり争い事に使用しない様に、色んな人達に建設的でより安全な使い方を普及させたいらしい。


 俺は特に何かしてみたい事は思い浮かばなかった。でも、直樹と千春がやりたい事って俺もやってみたいかもって思ったので、二人のやりたい事を手伝いながら、そのうち俺もやりたい事が見つかれば良いかなって感じだった。


「あっ、見えてきた、あそこの黒い車が停まってるのが私ん家」


「意外と早く着いたかも」


「うん、早かったね」


 あの黒い車って国産車だけど、アレって確か高級車に分類される車なんじゃないかなあ。もしかして、西條さんってお嬢様だったのかな。





 俺は西條さん家のリビングでくつろいでいる。


 ふっかふかのソファーに腰掛けて、体が半分埋まった状態で沙織達が二階から降りて来るのを待っていた。


 二階の西條さんの部屋では、沙織達がワイワイ楽しそうに借りる服を物色している。西條さんの部屋がどんな感じか気にはなるが、俺は一人リビングでくつろいでいた。


 西條さんの両親はまだ帰宅していなかった。置手紙を残して小学校に避難しに向かったけど、手紙はそのままの状態でテーブルに置いてあった。


 リビングの一角に賞状とかトロフィーが飾ってあったから、色々と拝見させてもらった。どうやら西條さんは高校生の時に弓道部に所属していた様で、その時の物みたいだった。当時の写真も一緒に飾ってあって、今より少し幼く見える西條さんが写っていた。高校を卒業してそんなに経ってないと思うんだけど、今の西條さんの方が全然お姉さんに見えた。


 沙織達が二階から降りて来てリビングにやって来た。


 赤いパーカーを着た沙織が


「お待たせ、戻るわよ」


 ピンクのパーカーを着た麗奈が


「お待たせしました」


 白いパーカーを着た西條さんが


「さっ、学校に戻りましょ」


 三人ともパーカーを着て現れた。仲がよろしい様で何よりです。って思いながら


「あいよっ」


 って返事をして、俺は元気良く立ち上がった。





「ねーねー、ちょっと何処に行くのかな。一緒に遊ぼーよ」


 四人組の男達が、道路の反対側から沙織達に声を掛けて来た。


 俺の前を歩くパーカー姿の女子三人は、汚い物を見る様な目つきで一度男達を見ると、無視して何事も無かった様にまた歩きだした。


 人通りが全く無くなった道路だから、人が歩いているとやっぱり目立つんだろうな。ヒトデナシも面倒くさいが、変なヤツ等もそれなりに面倒くさいかもだなあ。


 すると、男達が乗り捨てられた車を躱しながら走って来て、沙織達の前に立ち塞がった。沙織が深いため息をつきながら腰に手を当てた。麗奈が腕を組んで首を傾げている。西條さんは沙織と麗奈の半歩後ろに下がって様子を伺っている。


 沙織の仕草は相手に対して拒絶しているって分かりやすいんだけど、顔が整っているから見る人からしたら綺麗に見えちゃうんだよねえ。麗奈は腕を組むことで胸が強調されちゃうし、首を傾げても可愛く見えちゃうから、下心がある男共には逆効果な気がするんだよなあ。


 パーカー娘達を正面から確認した男達の目つきが、下心アリアリの良くない事を企み始めた目つきに変化した。


 ん~、面倒くさいなあ。沙織と麗奈なら余裕で四人組を追っ払う事は出来るんだろうけど、目の前の男達は腕力で俺さえ何とかしちゃえば、沙織達をどうにでも出来るって思い込んでいるんだろうな。


 さあて、どうやって、この状況から切り抜けようかなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ