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第28話 備える

「ねえ直樹。制服の肩んとこ、少し破れてるわよ」


 沙織がお茶を飲みながら、直樹の制服の破れを指摘している。


「そう言えば、肘も破れそうでしたね」


 麗奈もお茶を飲みながら、直樹の制服の破れを指摘していた。


 俺も気にはなっていたが、わざわざ指摘する程でもないかなって思っていたんだけど、女子は気になるのかな。


 指摘された直樹は肩と肘を見ると


「誰か裁縫道具って持ってるか、持ってたら縫ってくれ」


 直樹の正面に座っている西條さんのが


「家に帰ればあるけど。どうする、後で取に行った方が良いかな」


 西條さんの隣に座っている沙織が、手を振りながら


「大丈夫ですよ。後で白沢先生に聞いて借りてきます。たぶん学校にありますよ」


 お昼の炊き出しを食べ終わって、俺達は飲食兼休憩エリアで休んでいる。


 俺の隣が直樹、直樹の隣が麗奈、俺の正面に千春、千春の隣が西條さん、西條さんの隣が沙織だ。


 千春が俺を見ながら


「僕たちクリーン使ってるから着替えとかって気にならないけど、今って制服以外に服が無いんだよね」


「だなあ、体操着とか持って来とけば良かったかもな」


「でも、昨日学校出た時に、外がこんな状況だったとは思わなかったしねえ」


「だよなあ」


 昨日はその日のうちに家に帰っているって思っていたし、ヒトデナシがいるとか、強盗に襲われるとか考えていなかったもんな。


 すると、西條さんが沙織と麗奈を見ながら


「私ので良ければ貸しますよ」


 沙織と麗奈が


「もしかしたら、そのうち借りる事があるかもなので。そん時は、よろしくお願いしますね」


「上着とか借りるかもですが、今は大丈夫です。ありがとうございます」


 俺は着替えを持っていないんだから、その内とか言っていないで今からでも借りれば良いじゃんかって、不思議に思ったので沙織達に聞いてみると


 沙織が胸を張って腕を組み


「制服は今の時期しか着れないのよ」


 麗奈も胸を張って腰に手を当て


「そうなのです。期間限定なので、卒業したらもう着れないのです」


 ちょっと理解出来なかったし、麗奈ってやっぱ胸がデカいなって思っていると、西條さんが頷きながら


「わかる~。でも、夜とか肌寒い様なら遠慮なく言ってよね、上着とか貸すからさ」


 西條さんには、沙織と麗奈の考えが分かるみたいだった。


 それからは、沙織が西條さんも高校の制服がまだあるんなら着てみたらどうかと誘ってみたり、直樹は目立つから服装を着替えても良いけど、俺は人が沢山いる場所だと目立たないから制服のままでいろだとか、千春は着替える服装によってはヤギに襲われる心配があるから制服でいろだとか、一通り俺達をいじってから、沙織と麗奈は職員室に戻って行った。





 俺、直樹、千春、西條さんの四人で沙織達を見送った後も、飲食兼休憩エリアでくつろいでいると、北野先生が炊き出しを持って俺達のテーブルにやって来た。


 何となく硬い表情だったので、どうしたのか気になっていると、千春が


「先生、何か思い詰めた感じに見えるんですけど、何かあったんですか」


「あぁ、ごめんね。ちょっと衝撃的だったからね。でも食事が出来るくらいは落ち着いたから」


 北野先生は表情を曇らせながら、俺達に表情が硬い理由を話し始めた。


 先生は午前中に自転車で、俺達の学校のスクールバスが発着する駅周辺の様子を見に行って来たらしく、駅周辺は酷い有様だったようで、色んな建物から火の手が上がり、人々は殴り合いながら食料を奪い合っていて、とても物騒な状態だったそうだ。


 さらに、ヒトデナシに襲われている人がいたり、理由は分からないけど、複数の集団が角材や鉄パイプを持って殴り合っていて、人々が武器を使って争っている姿はまるで、違う国の出来事の様でとてもショックを受けたらしい。


 自転車で移動中も何度かヒトデナシに遭遇したり、変な連中にも追っかけられたらしく、急速に治安が悪化している状況を肌で感じた北野先生は、精神的に疲れてしまい、さっきまで保健室で横になっていたんだそうだ。


 北野先生の話しを聞いた感じだと、今いる小学校は駅周辺に比べたらまだ平和な気がする、言い争う大人はいないし、殴り合っている大人も見ていない、食料関係だと炊き出しのメニューは豊富でお代わりは自由だ。駅周辺の出来事が信じられないってのが本音だった。


 でも、駅周辺の危険な状況の話しを聞いちゃうと、近いうちにここら辺の地域も危険な状態になるんだろうなと思うと、自分の目の届かない場所での出来事ならイヤな気持ちになる程度だが、自分の身の回りの人達が被害を受けたり巻き込まれたりって思うと、とてもツライ気持ちになる。


 食料を奪い合って空腹を満たすのと、食料をみんなで分配して空腹を満たす、結果的に空腹が満たされるのならば、奪い合って怪我したりイヤな思いをしないで、みんなで食料を分配する方法を俺は選ぶのだが、何でわざわざ殴り合ってまで奪い合いをするんだろうか。


 電気の復旧が長引けば、これから更に強盗や強奪、建物に火を着けたりする、破壊活動的な事をする連中が増えて行くんだろうか。


 そんな暴動みたいな事が続いたら、地域の人達の不安が増すし、辛い思いをする人や悲しい思いをする人も出て来て、もっと酷い事態になりそうだ。


 電気が復旧して元の生活に戻れば収まるんだろうけど、復旧が遅れればその分、元の生活に戻るのも遅れそうな気がする。


 北野先生は炊き出しを食べ終わると「小学校や周辺地域の防犯警備を強化しないと、今のままではヒトデナシと人間からの襲撃に耐えられないので非常に危険だ」と言って、険しい顔で職員室に向かって行った。


 大人達が防犯警備の強化と襲撃に備えてどんな準備を始めるのかは分からないけど、地域の事は大人達に任せるとして、俺は自分達の身を守るために色々と準備をしておかないと不味いかも知れないと思い、隣に座る直樹に


「この先、かなり物騒になりそうだから、今のうちに何か準備しとかないとだよな」


 腕を組んで考え込む直樹、すると俺の正面に座っている千春が


「何か武器とか準備するってのはどう。剣とか盾とか刀とか」


 確かに攻撃力を上げるには武器って選択もあるんだろうけど、俺は千晴に


「盾の代わりになりそうな物はあるけど、剣とか刀は普通に無いだろ」


 すると千春が唇を尖らせ


「ちょっと言ってみただけだよ。でも刃物とかってダメなの」


 確かに刃物ならば入手は可能なんだろうけど、俺は表情を曇らせ


「ん~、ヒトデナシにならありかもだけど、人に対しては流石に躊躇するなあ。あと、盾はあれば便利かもだけど持ち運びが面倒くさいかもなあ」


 千春がダメかぁって感じの顔をしていると、俺の斜め前に座っている西條さんが


「体を守る防具の様な物はどうですか」


 俺は真っ先に北野先生のキャッチャーのプロテクター姿と、白沢先生の剣道の防具姿を思い浮かべて


「プロテクターみたいな物があると安心だけど。動きにくくなるかも知れないと思うと、ちょっと考えちゃいますね」


 直樹が千春を見て


「魔法で何とかならないもんか」


「たぶん出来るんじゃないかなあ、イメージと想像力で何とかなると思うよ」


 魔法の話しでさっき考えていた事を思い出した俺は、千春に


「ついでに状態異常対策も考えてくれ。昨日の西條さんって、たぶんスリープの魔法を喰らったんだと思うんだ」


 西條さんは首を傾げている、千春が少し真面目な表情になって


「ああ、だねぇ。そもそも、僕らが普通に魔法を使えてるんだから、他の人達も魔法に気づいて使用してるって前提でいないとダメかもね。でも、魔法を悪用されるって思うと怖くなるね」


「だよな。魔法を俺達に向けて使ってくるかもって思うとゾッとするよな」


 強盗達がファイアーボールを飛ばして来たら、どうしよう。ぶん殴れば火の玉って消えるのかな。


 千春が何かに気づいたのか眉間に皺を寄せて


「ヒトデナシて過去の経験が残ってるって警察の人が話してたよね、魔法が使える人がヒトデナシになったりするのかな」


「まだ魔法が使えるヒトデナシに遭遇して無いけど、もしかしたら出て来るのかもな。昨日のヤギはどうだった」


「ん~、唸ったり変な声を出したりして、魔法障壁を叩いたり押してただけだねぇ」


 千春が顎に手を当てて


「生活魔法も大事だけど、ちょっと対魔法戦闘も考慮しないとダメかもね」


「千春は魔法に関しての知識をフル活用して対策を頼む。もちろん俺も考えとくけどな」


「うん。うっちーは戦闘で魔法が絡んでくるかもってのを踏まえながら、なおっきーと前衛の動き方を考えといてね」


 俺は直樹と、千春は西條さんとこれからやって来るであろう、色んな物騒な事態に備える為に準備し始めた。

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