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第27話 襲撃

 俺達が使える魔法は、西條さんも使う事が出来る様になった。


 何でそんなに早く習得する事が出来るのか、気になったので聞いてみると、西條さんは


「目の前で発動している魔法を見てるし、ファンタジー系の作品をいくつか知ってたから、魔法の存在を何の抵抗もなく受け入れられたからかもね」


 との事だった。それと、俺達や他にも俺の学校の生徒達も魔法は普通に使えていたって聞いていたので「何か特別に選ばれた人達にしか魔法が使えないって事は無いみたいだから、私だって魔法は使えるんでしょ」って思ったんだそうだ。


 そんな感じで魔法が使えるようになった西條さんは、今は千春と魔法を使ってヒトデナシを効率良く消滅させるにはどうするか。そして、もし大量にヒトデナシが出現した場合には、どんな魔法で殲滅させるのかを熱心に話し合っていた。


 千春と西條さんの二人はかなり魔法に情熱を注いでいる感じだけど、俺は魔法に対して一歩か二歩引いた感じで、二人と比べたら熱量は低めなんだよなあ。


 千春は「もしも」に備えて魔法は必須なんだろうし。西條さんは色々と考えがあって、魔法を上手く生活に利用しようと考えているみたいだった。


 この先死ぬまでずっと魔法が使えるのなら、もっと必死になって色々試行錯誤しながら魔法の可能性を広げたり、掘り下げたりして魔法に情熱を注ぎ込めるんだけど。


 実際問題、魔法がいつまで使えるのかは分からないんだよなあ。

 

 せっかく必死になって、いっぱい努力して凄い魔法が使える様になったとしても、来月からはもう使えませんとか、例えばこの先五年で魔法は使えなくなります。ってなったら、せっかくの努力や時間を掛けて頑張って来た事が無駄になるな。って思うと、どうも千春達みたいに魔法に対して情熱的にはなれない。


 千春は千春達が立てた仮説である「地球が異世界に転移した」状態であるのなら、この先モンスターと戦ったり、勇者になって魔王を倒さないといけないらしいので、もしも仮説が正しかった場合に備えて、魔法を使える様に頑張っている。


 でも、もしも転移していなかったら、備えが無駄になるわけでそう思っちゃうと俺は熱心に頑張れない。


 まあ、今は電気が使えないから電気の代わりに魔法を使うって感じだけど「電気が復旧したら魔法って必要無いんじゃない」って思っちゃうし。この先ずっと電気は使えませんって分かっていれば、もう少し魔法を使える様にしとくかなって考えるんだけどな。


 本当にそれって必要な事なのか、確かに今は必要かも知れないけど将来的には不要な事になるんじゃないのって考えちゃうと、俺はいつも適当な所で終わらせちゃうか、全く手を着けないで終わってしまう。


 色んな本とか読んでいると「苦労は若いうちにしとけ」とか「人生に無駄なんて物は無い、色々経験しておけ」とか「色々悩んで考えた事が将来に繋がる」とか、どうもこの世の中は、簡単に目的に効率良く最短でたどり着け無い様に出来ているみたいで、非常に面倒くさく感じる。


 俺のこの考え方はこの先変わるのだろうか。年齢を重ねると考え方も変わって、今とは違った物の見方や考え方になるのかなあ。まあ、これから先の俺に期待しながら生きて行くしかないのかな。


 でだ。じゃあ、どっちなの。


 魔法を使うの、使わないのって聞かれたら「今は便利だから使います」ってなるんだよね。


 俺は頬杖をつきながら、それこそ無駄な思考をしてみたり、千春と西條さんが熱心に話し込んでいる様子を眺めてみたり、雲の無い青い空を眺めたりしながら、静かで穏やかな午前のひと時を過ごしていた。





 何だか周りが騒がしい。


 炊き出しの調理エリアの人達が、大きな声で周りに声を掛け合っていたり、大人達が学校の校門の方に走って行ったり、校舎に向かって走って行ったりして、学校の校庭に設けられた飲食兼休憩エリア周辺が、何だかとても慌ただしく緊張した感じで、張り詰めた雰囲気になっていた。


 小学校の校門付近が特に慌ただしい。頭から血を流している人や腕から血が流れて座り込んでいる人もいた。怪我した人達を調理エリアの人達が介抱している感じだった。


 事情は分からないけど、負傷者がいるから治癒魔法が必要になるのかな。って考えていると


「あれっ、なおっきー」


 千春がいつもの陽気な感じではなく、少し驚いた様子で声を上げた。


 校門で座り込んでいる人達の後ろの方から、荷物が山積みのリアカーを引いて直樹が現れた。


 ここからだと遠くてしっかり見えないけど、頭から血が流れているように見えるし、制服の肩の辺りが破れていたり、汚れていたり、ちょっと穏やかでは無い雰囲気に見えた。


 千春が校門の方を見たまま


「うっちー」


 と言って席を立つ。西條さんを見ると真剣な表情で頷き席をたった。俺達が直樹のもとへ走って行くと、近づいて来た俺達に気づいた直樹が浮かない表情で


「千春、俺は後で良いから他の人を頼む」


「おっけ」


 千春が直ぐに校門付近で座り込んでいる負傷者達に、ヒールを使い始めた。


 西條さんは負傷者の着衣の汚れをクリーンを使って綺麗にしてから、ヒールを使い怪我の治療に当たっていた。


 俺もヒールは使えるので、直樹に治癒魔法で傷を回復させながら


「ヒトデナシに襲撃されたって感じか」


 直樹は表情を曇らせると


「いや、違う人間だ。道具を持った連中に襲撃された」


「うわー、何それ。てっきり俺はヒトデナシに襲われたのかと思ってたぞ」


 直樹は千春と西條さんからヒールを受けて傷が回復した人達を見て、硬かった表情を少し柔らかくし


「やっぱ、治癒魔法って便利だな」


「だな、原理は分からないけど薬を塗るより傷の治りが早いから便利だよな」


 すると直樹はリヤカーの荷台に腰掛けて


「こっちは六人で移動してたし襲われるって事すら考えて無かった。昨日の白沢先生の話しじゃないけど、本当に治安が悪くなってるみたいで、身をもって実感させられたって感じだ」


「まさか人が襲って来るとはなあ。そんで、何とか追っ払って帰って来たって感じか」


 直樹は腕を組んで


「相手は四人で道具持ち。かっちゃんが居たら状況は変わったんだろうけど、こっちは格闘技経験者が俺だけだったからな」


 調理エリアの人達を見ながら直樹が続ける


「連中は多少体格が良い程度でこっちの大人達の方が筋力も体力もありそうだったんだけどな。道具を持った連中に威嚇されて防戦一方だった」


「ん~、やっぱ敵意を向けられることに慣れてないと、動けなくなっちゃうんだな」


「だな、一人ずつ片っ端から無力化して戦意喪失させてったら、連中は逃げて行ったよ」


「それって、ヒトデナシと同じじゃんか。何か笑えないぞ」


 俺が渋い顔をしていると、直樹が苦笑していた。



「うん、やっぱ大丈夫みたいですね」



 直樹と話し込んでいたら、麗奈が俺達のすぐ近くまで歩いて来ていた。


 俺は歩いて来る麗奈に


「ん、どうしたんだ」


 俺達の前まで来た麗奈は腕を組んで


「職員室にいたら、食材と調理道具を取りに行った人達と直樹君が怪我して校門の前にいるって聞いたからね。沙織ちゃんから、大丈夫だと思うけど様子を見て来てってお願いされたの。それともし、人手が足りなかったら連絡してってね」


 すると、直樹が手を広げながら


「見ての通り問題ない、ありがとな」


 麗奈は直樹を見て頷くと、少し離れた場所に集まっている調理エリアの大人達を見て


「千春君と西條さんが処置したみたいですね」


 千春と西條さんは二人で何か話しをていた。さっきまで怪我をしてぐったりしていた人達も、笑顔で周りの調理エリアの人達と話しをしていた。


 俺は麗奈に


「だな、もう終わったみたいだな」


「じゃあ、戻るね」


 と言って、麗奈は千晴と西條さんに何か話し掛けてから職員室に戻って行った。


 直樹はリアカーの荷物を片付けて来ると言って、怪我が治った人達と一緒に炊き出しの調理エリアに向かって行った。


 俺は千晴と西條さんと三人で飲食兼休憩エリアに戻って、お昼の炊き出しが出来るまでゆっくりしていた。


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