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第24話 追跡

「夜だから良かったけど、昼間だったら大変だったかもな」


「だな、昼間だと明るいから追跡に時間が掛かっただろうな」


 俺と直樹は、夜道に一定の間隔で浮かんでいるライトボールを頼りに、駆け足で移動していた。

 

 千春が小学校のトイレに行ったまま戻って来なかった。


 俺と直樹で迎えに行くと、トイレの出入り口から学校の敷地の外に向かって、一定の間隔でライトボールが浮かんでいた。


 千春に何かトラブルが発生して痕跡を残したんだろうと推測し、俺達はライトボールを追跡し始めた。



 小学校の敷地の外は沢山の住宅が建ち並ぶ住宅地だった。


 人を追いかけていて左右に道が分かれていた場合は、どちらの道を選ぶか迷うけど、今は右か左のどちらか片方の道がライトボールで照らされているので、道に迷う事はなかった。なので、俺達は時間を掛ける事もなく、住宅地を抜けることが出来た。


 一定の間隔で浮いているライトボールは、道路を横断して大きな建物の近くで途切れていた。


 直樹がライトボールが途切れている先の建物を見ながら


「あそこか」


「かもな」


 建物の壁が何かに照らされていている様でそこだけ明るくなっていて、いかにもって感じで怪しかった。


 一定の間隔で浮いているライトボールのお陰で、店の電気や街灯がついていなくても、足元を気にしないで移動出来た。


 乗り捨てられた車やトラックを避けながら、急ぎ足で道路を横断し、千春がいると思われる建物に向かって行く。


 大きな建物は何かの会社の倉庫みたいだった。壁の向こう側にはトラックが数台停まっているのが見える。


 敷地の壁に沿って走っていると、従業員の通用口なのか、扉が設けられていた。そっと開けて中に入ると、目の前は駐輪場になっていた。


 駐輪場を早歩きで通り抜けて、俺と直樹は建物の陰に身を潜め、明るくなっている場所を確認する為に、地面に片膝を着いて身を屈めながら、ゆっくりと建物の陰から顔を出した。


「またなのか」


「またみたいだな」


 直樹は中腰で俺の上から覗いている。


 光る壁みたいな物を叩いたり足裏で蹴っている、五体のヤギを確認した。


 五体のヤギの隙間から腕を組んで仁王立ちしている、千春も確認出来た。


 どうやら千春が魔法を発動した光る障壁で、この辺りが明るくなっていたらしい。


 俺は片膝を地面に着けたまま


「なんか余裕みたいだな」


 直樹は中腰のまま


「勝ち誇った顔をしてるな」


 俺は光る壁を叩きまくっているヤギを見ながら


「どうする、少し様子を見るか」


 すると、直樹がいつもより早い口調で


「いや、千春の足元に人が倒れてるぞ」


「じゃっ、急がないとマズイな」


「だな、このまま気づかれないように近づくぞ」


 直樹が足音を立てないように、急ぎ足で慎重にヤギ達に近づいて行った。俺は身を隠していた建物の壁に沿って、ヤギ達に近づいて行く。


 千春が近づいて来る直樹に気づいたようで、一瞬ホッとした表情をした。


 直樹が立ち止まり、その場で左のジャブを二回打った。光る壁の前にいる五体のヤギの中で一番体格の良いヤギの動きが止まり、後ろを振り返った。


 他の四体のヤギは光の壁を叩いたり蹴ったり押したりしている。


 更に直樹がその場で左のジャブを二回打つ。後ろを振り返った体格の良いヤギの頭と体が揺れた。少し離れた場所にいる直樹に気づいたのか、体格の良いヤギが光の壁から離れて直樹に向かて行った。


 他のヤギ達は光の壁を壊そうとしているのか、とにかく必死に壁を叩いている。


 必死過ぎて周りが見えていない様子なので、俺は建物から離れてヤギ達の斜め後ろから近づいて行く。


 千春が近づいて来る俺に気づくと


「遅いよお」


「すまん、でも問題なさそうじゃんか」


 千春は腰に手を当て胸を張りながら


「僕の魔法障壁は鉄壁だからね」


「なら、その勢いで残りのヤギを何とかしちゃえよ」


「それはムリー、壁に意識を集中しとかないと突破されそうで怖いもん」


 俺は千春の足元で倒れている人を見て


「その人は大丈夫なのか」


「気を失ってるみたいなんだよね。でも、一応ヒールはしといたから、たぶん大丈夫だと思うよ」


「そっか、ならもう少し頑張ってくれ。後は俺と直樹で何とかする」


「はーい、よろしくね~」


 俺は手前のヤギに向かって試しにその場からジャブを二回放つ。ヤギの動きが止まってこっちを向いた。やった事はなかったけど意外と出来るもんだ。


 もう一度、こっちを向いているヤギに対してジャブを放ち、衝撃波をぶつける。ヤギの頭が揺れて離れた所に立っている俺に気づいた。ヤギが障壁から離れてこっちに向かって来た。


 俺は向かって来るヤギの顔を狙って左右のジャブを放ちまくる。後ろに下がりながらヤギとの距離を保ちつつ、何度も左右のジャブを衝撃波を放ちまくる。


 う~ん。もしかすると衝撃波ってジャブよりも、相手に与えるダメージが低いのかもしれないなあ。ヤギの顔に衝撃波を打ち込むと、多少は嫌がっているみたいだけど、そんなにダメージを喰らっているようには見えなかった。


 ヤギは衝撃波が顔に被弾していても、ズンズン向かって来ていた。


 何度も練習すれば威力も変わって来るのかもだけど、今のところは牽制攻撃に使うくらいしか使い道がなさそうだな。ってな感じで衝撃波の検証をしていたら、ヤギが膝から崩れてその場に倒れ込むと消滅した。


 顎に良いのが入って意識が飛んだ時みたいな動きだった。


 ヒトデナシは、ある程度の打撃や衝撃で消滅する場合もあるって聞いていたけど、今の感じだと、意識が飛んで気を失うと消滅する場合もあるみたいだな。


 とりあえずヤギを駆除したので千春の方を見ると、障壁を叩いているヤギは二体になっていて、直樹がさっきと違う別のヤギと戦っていた。


 衝撃波でまた一体こっちに引っ張って来るかなって思っていると、千春が大きな声で


「うっちー、ヒトデナシだ」


 千春は引きつった表情で、遠くの方を見ていた。


 千春の視線を追うと、剣型シャベルと金属バットを持ったヒトデナシが、こっちに近づいて来ていた。違うのが来たのか面倒くさいなあ。って思いながら俺はヤギで衝撃波の練習をしているうちに、けっこう距離の離れてしまった千春に向かって


「あっちに行っても大丈夫かー」


「こっちは全然大丈夫だよ~」


 千春は問題なさそうだから、俺は凶器を持ったヒトデナシに向かって行く。


 ん~、学校で待機していた時はまさか外にこんな変なヤツがいるとは思わなかったもんな。知っていたら攻撃魔法とか練習していたのになあ。小学校に戻ったら戦闘に便利な魔法を考えないとだな。ってな事を考えながらヒトデナシの方に向かって歩いて行く。


 俺から見てシャベルを持っているヒトデナシが手前。その後ろにバットを持っているヒトデナシだ。


 相手が横に並んで広がると、俺は二体のヒトデナシを同時に相手をする必要になる。でも、縦に並んだ状態ならば、俺が相手にするのは一体だけになる。だから立ち位置を調整しながら歩いて行く。


 手前のシャベルを持ったヒトデナシを、俺と奥のバットを持ったヒトデナで挟む感じの立ち位置だ。


 手前のヒトデナシは右手でシャベルの取っ手を握って、左手で柄を掴んでシャベルの先端を俺に向けている。そして、シャベルの先端で突く動作をしながら近づいて来ている。後ろのバットを持ったヒトデナシは、バットを使って俺を殴りたいんだろうけど、目の前のヒトデナシが邪魔で、右へ移動したり左に移動したりしていた。


 俺はバットのヒトデナシの動作に合わせて、右へ左へ移動しながら後ろに下がり、常にシャベルのヒトデナシがバットのヒトデナシの目の前に来る様に、立ち位置をキープしている。


 すると突然バットを持っているヒトデナシが、胸から上を何かに弾かれたみたいに、後ろにのけぞりながら動きを止めた。俺は素早く後ろに下がる。目の前にいたシャベルを持っているヒトデナシが、つられて勢いよく突っ込んで来た。


 突っ込んで来てたヒトデナシのシャベルを、左足で左下方向に払う。ヒトデナシはシャベルの先が地面に突っ掛かって、体が前のめりになり動きが止まった。俺は前のめりになって丁度良い高さになったヒトデナシの頭部に、右肘を思いっ切り叩きつけた。


 ヒトデナシは倒れながらシャベルと衣類を残して消滅した。


 俺の後ろの方から凄い勢いで何かが近づいて来たと思ったら、直樹が俺の横を通過した。


 バットを持っているヒトデナシが、直樹の飛び蹴りを胸のあたりに喰らって吹っ飛んでった。


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