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第1話 停電

 今日は朝から雨が降っているので、特にする事がない。なので、俺は机に頬杖をつき、どんよりとした雨雲を眺めていた。すると、後ろの席の森下直樹が話しかけてきた。


「今日は下校する生徒が少ないな」


「雨が降ってるからなあ」


「かっちゃんはまだ帰らないのか」


「バスか電車が動けば帰るんだけど、直樹はどうすんの」


「帰るつもりだったが雨だからな」


「雨の中を歩いて帰るのは面倒くさいって感じか」


「そんな感じだ、電車が駄目でもバスが使えればバスで帰るんだが」


「バスも動いてないもんな。電気が復旧すれば電車は動き出すと思うんだけど、なんでバスが動かないんだろうな」


「だな、車やバスが停電で使えなくなるってのは謎だ」


 直樹は学校から支給された乾パンを、カバンから取り出しかじりだすと


「非常食だけだと俺の腹が満たされない」


 直樹は身長が高くて横幅が広い、つまり体がでかい。大盛のカレーライスを三人前くらいなら、余裕で完食出来る胃袋の持ち主だ。直樹は子供の頃から空手を習っていて、その頃から既に体格は良かったんだそうだ。高校に入学してからはキックボクシングを習い始め、元々体格の良かった直樹の体は更にでかくなった。性格は感情的で攻撃的ではなく、理性的で守備的な性格だ。


 ちなみに、俺の名前が克也なので、直樹からは「かっちゃん」と呼ばれている。


「直樹には量が全然足りないだろうな。俺は大丈夫なんだけど、そろそろ背脂たっぷりで味の濃いラーメンが食べたいなあ」


 電気が使えなくなって今日で三日目になる。


 停電が発生してすぐに、全ての授業が中止となったので生徒達は大喜び。もちろん俺も喜んだ。先生達は、テレビやラジオは使えないし電話も使えないので、事態の把握が出来なくて、物凄く困っている様子だった。


 生徒達はスマホを使って情報収集を試みようとしたけど、何故か電源を押してもスマホは起動しなかった。そして、先生達の車やバイク、更には学校から駅までを直通で運行する、生徒専用のスクールバスも何故か動かなかった。


「生徒は状況の確認が出来るまで学校にとどまるように。勝手に下校はしないようにして下さい」と先生から言われた。


 学校周辺の住宅や学校から離れた場所にあるコンビニも停電していた。先生達は車やバイクが動かないので、自転車を使って情報収集をしていた。駅周辺も停電していて電車は止まっていたそうだ。道路には動かなくなった車やトラック、路線バスやタクシーが乗り捨てられた状態で、道路に停まっていたそうだ。

 

 そして、停電の原因は夕方になっても分からなかったし、電気も復旧しなかった。


「停電中なので夜間の下校は大変危険です。本日、全校生徒は学校に泊まる事になりました」と先生から言われた。突然発生したお泊りイベントで生徒達は大喜び。もちろん俺も喜んだ。


 防災備蓄倉庫にある発電機が故障しているらしく動かなかった。懐中電灯も電池を取り替えたり色々と試してみたけど、何故か使えなかった。電気が使えないので、夜になったら真っ暗闇になると思っていたけど、日が暮れ始めると空いっぱいに、緑白色や黄緑や緑色、ピンクや赤色といった、不思議な光るカーテンみたいな物が発生した。


 光るカーテンのおかげで、明かりが無くても夜の校舎内が真っ暗闇になることはなかった。でも、学校からは一応アルコールランプとロウソクが、クラスごとに支給された。


 夜空を見上げながら「あれってオーロラじゃない」って言ってる生徒がいたり、恋人同士の生徒は肩を寄せ合い夜空を眺めていた。スマホが使えないので、幻想的な夜空の画像が撮れなくて怒っている生徒もいたし、「はじまったのか」って言っている生徒がいたり「まだ早すぎるぞ」と言っている生徒もいた。


 俺は今までオーロラを見たことがなかったし、オーロラについての知識もない。だから、夜空に広がっている光るカーテンみたいな物が、本当にオーロラなのかは分からない。でも、単純に「綺麗だな」って思った。


 停電発生から二日目、朝になっても電気は復旧しなかったし、車もスクールバスも動かなかった。


「本日の授業は中止とします。生徒は帰宅しても構いませし、電気が復旧するまで学校で待機してても構いません」と先生から言われた。


 普段から自転車で通学している生徒が、真っ先に下校し始めた。バスや電車で通学している生徒も徒歩で下校し始めた。俺は何の根拠も無いが、今日には電気が復旧してスクールバスも動き出すと思ったので学校に残る事にした。でも、電気は夕方になっても復旧しなかった。


 相変わらず駅周辺も電気は復旧していなかったし、電車も運休していたそうで、駅を目指して下校した生徒達は、電車が動いていなかったので学校に戻ってきた。


「今日も夜間の下校は大変危険です。校舎に残っている生徒は学校に泊まりなさい」と先生から言われた。


 ほとんどの生徒が、普段の生活で外泊する機会はそんなに多くはない。なので、連日のお泊りイベントに大喜びだった。もちろん俺も、家族で旅行とか学校行事でもない限りは、外泊とかはしないのでちょっとテンションが上がった。


 夜になるとまた光るカーテンのように見える、オーロラっぽい現象が発生した。なので、俺は眠くなるまでずっと幻想的な夜空を眺めていた。


 そして、停電発生から三日目、今日も朝から電気は使えなかった。

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