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ボクからキミへ伝えたいこと

作者: 多々良汰々

 今、ボクの目の前に大好きなキミがいてくれる。

 けれどもキミは、いつもと違って……その茶色の瞳に涙を湛え、とても悲しげな表情をしている。

 ねぇ、教えて欲しいんだ。

 キミはボクのことを、どう思ってくれていたのかを。

 そしてボクが……キミにいったい何を残せたのかを――

 初めてボクがキミに出会ったとき、キミはまだママの腕の中にいた。

 とても小さくって、とても泣き虫で。

 ボクがキミに近づくと、キミはその顔をくしゃくしゃにしてきた。

 少しムッとしたんだ。

 大好きなパパとママが、キミにご執心でボクに構ってくれなくなったからね。

 でもね、パパがボクに言ってきたんだ。

 ボクに弟が出来たんだって。

 だからボクは、キミのお兄さんになろうと頑張ったんだよ?

 キミが泣いたときはその涙をすくってあげて。

 キミが震えていたときは、キミにぬくもりをわけてあげて。

 キミはあっいう間に大きくなった。

 ボクと同じくらいにね。

 ボクはそれまでパパと一緒に散歩をしていたけれど……いつからだったっけ、キミも一緒に付いてきてくれるようになったのは?

 本当に楽しかったよ、あの頃。

 キミとボクとのかけっこ。

 ごめんね、手加減なんて出来なかったよ。

 キミの兄として、キミに負けたくは無かったから。

 キミがボールを投げて、ボクがそれをキャッチする。

 キミは最初の頃、ほんの少しの距離しかボールを飛ばせなかったというのに……どうして、そんなに遠くへ飛ばせるようになったんだろうね。

 キミの成長は続いていく。

 キミはいつしか、ボクの2倍くらいに成長していた。

 そしてキミは忙しくなって、ボクに構ってくれる時間が減っていった。

 でもね、ボクもわかっていたんだ。

 あの頃は、キミにとって一番大事な時期だったんだって。

 だからボクは、キミにちょっかいを出すのを控えるようにした。

 影ながらキミのことを応援していたつもりだったんだけれど……気が付いてくれていたかな?

 そしてキミは……この家から出て行ってしまった。

 パパとママとはキミが何処へ行ったのか知っていたのかもしれなかったけれど……ボクには、キミがどんな所で暮らして、いったい何をしているのかさえもわからなかった。

 寂しかった。

 とっても寂しかった。

 キミが、ボクのことを嫌いになってしまったのかって。

 キミはもう、ボクのことなんてどうでもよくなってしまったのかなって。

 でもね、いつかキミが帰ってきてくれるってボクは信じていたんだ。

 きっと昔のように、ボクと遊んでくれるって。

 でも……ごめんね、待てなかったのはボクの方だった。

 ボクは……結構歳をとってしまったみたいなんだ。

 散歩をするだけでも息が上がってしまって。

 食べ物も喉を通りにくくなってしまった。

 この日だまりで寝ている時間も、ずっと長くなってしまって……

 でもキミは、大事な時に帰ってきてくれた。

 とても嬉しいよ。

 その顔を見ることが出来て。

 キミに頭を撫でてもらえて。

 やっぱりボクは……家族の中で、一番キミのことが好きみたいだ。

 キミの温かい掌が好き、キミがボクの名前を呼ぶその声が好き。

 だから、最期にキミに会えて…ボクは、満足……いや――


 ごめんね、もうボクは…その涙をすくってあげることが出来ない。

 ごめんね、もうボクは…キミと一緒に散歩をすることが出来ない。

 ごめんね、もうボクは………キミと同じ時間を生きることが出来ないみたいだ。


 ボクの声は、キミには届かない。

 ボクとキミとでは種族が違うみたいだから。

 でも、それでも……叶うのなら――この言葉だけはキミに伝えたい。

 「ありがとう、ボクを愛してくれて」って。


 ああ、もう時間みたいだ。


 どうか、ボクのことを忘れないで。


 ボクは、きっと天国でもキミのことを見守っていてあげるから。


 それと、このことだけはどうか覚えておいて欲しいんだ――


 ボクは、キミのことが大好きでした……さようなら――

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― 新着の感想 ―
[一言] 昔、好きだった映画を思い出しました。「マイドックスキップ」というのですが、また見たくなりました。ありがとうございます。
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