表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

 短編 ケンちゃんと小さな拳銃

作者: 佐事宮 猛哲



 ケンちゃんは九才。友達はいない。


 いつもの森の公園で、誰もいない場所まで歩き、ひとりぼっちで虫探し。


 いつもと少し違ったのは、小さな拳銃が落ちていた。ケンちゃんはそれを拾って、大急ぎで家に帰る。


「今日は早いのね」


 ママの言葉に返事もしないで、自分の部屋に閉じこもる。小さな拳銃をランドセルに隠して、嬉しそうに笑ってる。


「何かあったの?」


 夜ご飯、ママの言葉に首を横に振って、ドキドキしながらその日は終わる。 


 朝起きたケンちゃんは、すぐにランドセルを開ける。キラリと光る小さな拳銃を眺めて、嬉しくなった。


「健一、早く起きなさい」


 ママの声に驚いて、慌ててランドセルに戻す。


 ケンちゃんは、小さな拳銃を学校に持って行く。ドキドキ、ドキドキ、止まらない。


 いつものようにケンちゃんは、同級生に殴られる。いろんな悪口を言われる。恐がりだから、泣いてばかり。


 帰り道でもケンちゃんは、悪い奴らに捕まった。いつもの森の公園に、いつもの誰もいない場所まで、今日は無理矢理、連れて行かれる。


 ごめんなさい、と謝った。


「うるせえな」


 ケンちゃんの足に痛みが走る。何で怒ってるのか訊いてみた。


「うるせえな」


 ケンちゃんのお腹に痛みが走る。何で殴るのか訊いてみた。


「うるせえな」


 ケンちゃんの鼻に痛みが走る。止めるようにお願いした。


「うるせえな」


 ケンちゃんの頭に痛みが走る。どうしたらいいのか訊いてみた。


「うるせえな」


 ケンちゃんの服は、あっという間にはぎ取られる。返してと泣いてみる。


「うるせえな」


 体中に痛みが走る。いつもはこのまま泣いている。だけど、今日のケンちゃんは少し違う。だって小さな拳銃を持っている。


 悪い奴らが服を投げつけ、笑いながら帰ってく。ケンちゃんを、いつものようにひとりぼっちにして。


 服も着ずに、急いでランドセルから小さな拳銃を取り出した。テレビでやってるヒーローのように、父さんが大好きな、大人の映画に出てくる正義の味方のマネをして、小さな拳銃を構える。狙いを定めて、引き金を引いた。

 

 悪い奴らの怯えた顔に、ケンちゃんは嬉しそうに笑う。一人、一人と倒れていく。ごめなさいと謝ったって、許さない。


 また一人、また一人と倒れてく。最後の一人に引き金を引いて、ケンちゃんは、テレビに出てくるヒーローのマネをして、格好良くポーズを決めた。


 服を着て、スキップ混じりに家に帰る。


「今日も早いのね」


 ママに飛びつき、満面の笑みを浮かべる。


「聞いてママ、今日僕はヒーローになったんだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 数で勝る敵を倒す力を得て反撃されないよう、殲滅する。 戦場を生き抜くために必要な正義。 戦場を知らない者が半端な対応をすれば、逃げ道すら断たれ死を望む。 いじめは過酷な戦場です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ