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2杯目 上地さんの居場所

ようやく2話目です。今回はおじさんメインの話です。

その日、喫茶ヴィーナスに、新たな客が来た。


「いらっしゃいませ」


と店主が言うと、太った壮年の男は、窓枠を指でなぞり、


自分の指を見て、


「掃除がなってねえなあ」


とぼやいた。


常連客の小池は、この時もカウンター席にいて、この一言で、


彼はこの客のことが嫌いになった。


「コーヒーと、サンドイッチ、2人前」


「かしこまりました」


おっさん、よく食うな、と小池は思った。



2時間後。男は、新聞をまだ読みふけっていた。


「ずっといるな、あのおっさん」


と小池が店主に言うと、店主は、


「お客様なので、文句は言えませんよ」


とひそひそ声で返した。小池は顔をしかめ、


「落ち着かねえ。競馬行ってくる」


と言い、店主はその常連客に、


「気を付けて」


と笑顔で見送った。


ちなみに、小池は大体朝から店じまいの時間までいる男であった。



さらに3時間後。


「まだいんのか、あのおっさん!?」


帰ってきた小池が、小声で驚きの声を上げた。


「ええ。もう、3千円分ぐらいご注文なさってます」


と、店主も声を潜めて言った。


さすがに、二人の声が大きすぎたのか、男は、


二人をギロリとにらむと、立ち上がり、


スラックスのポケットを探った。


「わりい。5百円しかねえ。ツケといてくれ」


と、自分の手のひらの中の硬貨を見て、男は堂々と言い放った。


ここで、小池がキレた。


「あのな、おっさん、ここは酒飲み場でも何でもねえんだよ。長々と居座りやがって。


やることねえなら仕事にでもいきやがれ!」


「小池さん、言いすぎです。それに、うちはお客様にくつろいでいただきたいと思っていますし」


男は黙って小池の言い分を聞いていたが、静かに口を開いた。


「……お前にはわからんよ。二か月に一度の少ねえ収入で、細々と生きるオレの気持ちは」


小池は黙り込んだ。


店主は、居心地が悪そうに、下を向いた。


その時、店の扉が開き、カララン、と鐘が鳴った。


「あー! おじいちゃん、ここにいたー!」


入ってきたのは、5歳ぐらいの男の子だった。


「お義父さん!! ここにいらしたんですか!」


あとから、30代ぐらいの女も店内に入ってきた。


小池は、あっけにとられて、言った。


「おっさん、独身じゃなかったのかよ!?」


男は、孫の相手をしながら言った。


「そんなことは一言も言ってねえ」


その男の幸せそうな光景に、店主は、写真を撮りたいな、とのんきに感想を抱いていた。


都会の裏通りの小さな店は、今日も平和であった。



<2杯目・終>

ちなみに私はお店に長居するのは苦手です。いらない情報でした。

お読みいただきありがとうございました。

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