第5話 犬とソーセージとブルスト
*警告
この小説内で行われている行為は大変危険です。絶対にマネしないでください。
他人の飼い犬に勝手にエサを与えないで下さい。特に女体盛り的なやり方で。
「四天王ヘカトスだと…貴様一人で彼らを倒したというのか?」
「ああ。感謝しろよ、勇者のパーティーメンバー選考ってのを俺様が代わりにしてやったんだからよお。
ただし基準が高すぎて、ご覧のとおり全員不合格になっちまったがな。グァッハッハッ!」
本日のお楽しみを奪われヘコんでいるオレの代わりにアルテミジアさんが敵と対峙していた。まるで彼女が主人公のようである。
「で?後からノコノコ現れた、テメエが勇者ってことで間違いねえんだな」
「…なに?」
…は?
「報告じゃあ、あのいけ好かねえキリアルケスの魔剣を砕いたっていうから、どんな強力な防具を装備してるのかと期待して来てみりゃあ、胸の谷間や太ももを見せびらかしてるような軽装じゃねえか…
聞いてた防具を噛み砕けばアイツの魔剣より俺様の牙の方が上だっつう証明になると思ってんだが…まあいい、覚悟しな!勇者‼︎」
と言ってアルテミジアさんを指差す獅子獣人。それ勇者違う。
「え?いや私は勇者ではないぞ獣人」
「はあ?だが他にいるのは巫女の小娘とほぼ全裸の男だけじゃねえか?」
「…ああ私たちとしても非常に不本意だが、そのほぼ全裸の男が勇者なのだ」
「はあ?だがコイツ防具なんて装備して…」
とまで言いかけたところで、オレがファールカップを指差しアピールしている事に気付く獣人。
「…マジか」
マジだ。
「お前、今ファールカップを噛み砕くみたいなこと言ったな?」
「…いや、さすがの俺様も男の股間に噛みつくのはちょっと…」
俺様キャラの獣人がドン引きしていた。オレの楽しみを奪った罰だ、このネタでもっと攻めよう。
「フッ、警察犬の訓練師がなぜファールカップを履いているのか、オレが身をもって証明してやるぜ!」
「あなたやられる側なのに、何故そんなに勇ましいのですか?」
「でも<狂乱の蹂躙者>の異名を持つ、あのヘカトスを戦う前から戦意喪失させるなんて。さすがはムサシさま!それでこそ勇者として召喚した甲斐があったというものです!」
「…姫?どうなされたのですか?急に、この変態を持ち上げたりして?」
アルテミジアさん?仮にも婿入りさせようとしている男に超失礼ですよ!
でもたしかに姫さまの発言はおかしい。
「だって仕方がないじゃないですか!
別の勇者を召喚しようにも、女神が答えてくれないのです。
たぶんわたしは洞窟での一件で穢れ、巫女としての資格を失ってしまったんです!
だからもう残された道は、問題がある方だとしても、ムサシさまを勇者として盛り立てていくしかないのです!
…自分でもおかしいのは解ってますよ…でも…うう、ひっ、ぐす」
一気にまくしたてた後、泣きだした姫さま。
「…変態に生まれてすいません」
「…責任を取って魔王さえ倒していただければ、もうどうでもいいです。好きにしてください」
!銀髪美少女に涙目で「責任取って」と言われてしまった!しかも「好きにしていい」だと⁈
「フッフッフッ。じゃあ早速好きにさせてもらうぜ!
まずは…あのライオン野郎にオレの股間を噛みつかせるとしようか!」
「…言い方が悪かったので誤解してハレンチなことをするのかと思いましたが…」
「そのときは無礼打ちにするつもりでしたが…」
「「やっぱりそういうのが優先なんですね…」」
理解が早くて助かります。
しかし獣人の方にその気は無いようで、
「だから俺様はやらねえって言ってんだろうが!
誰が好き好んでそんなモンに噛みつかなきゃならねえんだ!」
「じゃあ全身にソーセージを巻きつけてくるから、それを食ってたら「間違えて男に生えてるソーセージにまで噛みついてしまった」というのはどうだろう?」
昔、近所の豪邸で飼っていたドーベルマンに使ったネタである。発情期だったせいか、ソーセージには目もくれずオレのケツばかり狙ってきて大失敗だったが、今回リベンジできるかもしれん。
「間違うかーーーー!
つうか、食べ物を粗末にすんな!」
「使われた食材は、何も知らないヤツラを騙して食べさせました」
「お前最悪だな!それでも勇者か‼︎
おかげでしばらくソーセージ食いたくなくなったわ!」
獣人のくせに神経細いヤツ。
「じゃあブルストで」
「同じだろ、それ!」
「…あなた、人の体に食べ物を盛り付けるなんて、よく思いつきますね」
「いや?オレの国には普通にあるけど?」
女体盛りとか。性別は違うけど。
ちなみに女体盛りは今ではラスベガスとかでもやっており、バチュラーパーティーなどでストリップの代わりに頼んだりしているらしい。
「…食い物と性器を間違うか?」
「いや、割と定番だろ?」
エロゲとかで。間違えた「フリ」だけど。
「だとしても、普通は異性のだろ?」
そういえば、このセクハラライオン略してセクハライオン、アルテミジアさんの鎧をいやらしい目で見ていたな。
「まあ俺様としちゃあ、そっちのろくに毛も生えそろってない女剣士にだって、たいして興味無いがな」
ん?
「な、ななななぜ貴様そのことを知っている‼︎」
アルテミジアさんが大事な所を両手で隠しながら、真っ赤な顔でセクハライオンを睨みつける。
え?…アルテミジアさんって、生えてないの?
「あ、ち、違うちがう!俺様が言ったのは全身、全身の毛の話‼︎獣人だから毛深い女が好みだと言いたかっただけだ‼︎」
慌てて説明を付け足すセクハライオン。いやもう遅いし。
「…婿どのこの不埒者さっさと殺ってしまいましょう」
怖い!アルテミジアさん怖い‼︎
「まって、セクハライオンに怒るのは解るけど、このまま戦うと倒れている人達が巻き添え喰らう!」
「そ、そうだぞ、コイツらまだ全員生きているからな!早まるんじゃねえ!」
いいニュースだが、それはそれでおかしくね?
「なぜなら最初に全員地獄に送ると宣言したからなあ!
魔族と戦って普通に死んでも天国行きだから、あえて半殺しにして後で拷問する予定だったんだぜ!」
以外と律儀なヤツだ。バカなの?
「だから一旦落ち着いて、」
「オレのファールカップに噛みつかせる話に戻しましょう」
「それはもういいわーー‼︎」
ゴバァ!
セクハライオンがツッコミとともに口から火球を吐き出す。
「リフレクト!」
セリフに意味は無いが、叫びながら火球をファールカップで受けると、魔法陣が展開し火球をセクハライオンに弾き返す。
ドゴーン
「ヘッ、やるじゃねえか。魔法系の攻撃を反射するとは…ふざけた見た目に、まんまと騙されたぜ」
爆発の煙から無傷で現れるセクハライオン。まあ同属性が効くとは思ってなかったけど。 ちなみにヤツのそばで倒れていた人達も全員無事のようだ。炎系の吸収能力でもあるのか?
とはいえ、一応場所を変えて戦いたい。
とか考えていると、
「いくぞコラ!」
こちらに突っ込んでくるセクハライオン。都合がいいので倒れている人がいない場所まで誘導する。
「いつまでも逃げてんじゃねえ!」
追いつかれたが、ギリギリ誘導は完了。
魔法が跳ね返されたためか、今度の攻撃は肉弾戦だった。炎に包まれたネコパンチがオレを襲う。
オレは側転で右の一撃を回避、転がる速度を調節し、二撃目の左はファールカップで受け止める。爆発とともに弾かれるセクハライオンの左手。四つ足でバランスがいいためか、体勢は崩れないか。
だが、
「ちい、やるな」
とかいってるセクハライオンの背後から、
「死になさい!この剛毛マニアが!」
アルテミジアさんの怒りの股間攻撃が炸裂。トドメはオレのファールカップをヤツの顔面に…と思ったが、
「いってえなコラ‼︎」
ドゴーン
セクハライオンは自分を中心に爆発を起こし、オレ達を吹き飛ばす。
「なに!オスのくせに股間攻撃で悶絶しなだと!」
「すいません、人間相手の癖で前足の間を狙ってしまいました!」
そうか、下半身四つ足だから、股間は後ろ足の間だったか。
「女!背後から金的攻撃とは卑怯にもほどがあるだろ!」
「…戦いに卑怯も禁じ手もない。それが我が流派の信条」
「そうかい!だったら俺様も卑怯な手を使わせてもらうぜ!」
宣言すると、セクハライオンは背中の炎の翼をはためかせ宙に舞い上がる。そして剣の届かない高さに到達すると、両手と口から無数の火炎弾をオレ達めがけて乱射しはじめた。
「オラオラオラオラオラオラオラ!!!」
「うおー」
さすがにこの数をファールカップで反射するのは無理なので逃げ回るオレ達。
しかしヤツも巧妙で、火炎弾を闇雲に連打していたわけではなかった。
「逃げ場はねえぜ?」
気がつけば壁際に追い詰められていた。右は燃え盛る炎、左は堀のようにえぐれたクレーター。
「今更な話だが、キリアルケスの野郎が四天王のリーダーなのは単なる年功序列、戦闘能力でいえば俺様が上。つまり俺様こそが、四天王の真のリーダー。最初からテメエらに勝ち目なんてねえんだよ」
自慢話をしながら両手で一つの巨大な火球を作り出すセクハライオン。完成したそれは、単なる炎の塊というより小型の太陽のような迫力だった。
しかし、いくら強力でも単発の魔法ならー
「おっと、その変態防具で反射できるなんて、都合よく考えるなよ?
ちゃんとテメエらに届く前に爆発させるからなあ。このサイズなら直撃させなくても骨も残さず焼き尽くせるだろ」
うお、容赦ねえ!
「半殺しにして拷問ってのはナシになるが、元々俺様拷問好きじゃねえし、まあいいか…じゃあアバヨ」
そして、セクハライオンが放った超巨大火球の爆炎がオレとアルテミジアさんを飲み込んだ。
次回はVSセクハライオン後編です。予定では、1話で終わるはずだったのに…