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第三話 勇者の決断、周りの迷惑

*警告

この小説内で行われている行為は大変危険です。絶対にマネしないで下さい。


家族が実家に置きっぱにしているコレクションを勝手にネットオークションに出品とか、マジでヤメテ。

これまでの人生、謝れば大抵のことは許してもらえた。

幼稚園に通っていた頃、毛糸のパンツをヒモに戻すと何メートルになるのか知りたくて、ゆかり先生のパンツを引っ張った時も、

小学生の頃、教頭のカツラに駄菓子のフルーツ味のスプレーを噴射して、カラスに襲わせていたのがバレた時も、

中学生の頃、動画用に作った破城槌の予行練習で寺の鐘を打ったら、凄い音がして鐘がへこんだ時も、許してもらえた。

中にはフォロワーになった大人もいたくらいだ。

だけど、いま目の前にいる四天王のリーダーさんは、どんな謝罪も受け入れてくれそうにない。 ここまで大人にブチ切れられたのは、県外に就職した兄貴が置いていったプラモデルをネットオークションに出品したのがバレて以来だ。

「コレクションの予備の予備が一気に落札できたと思ったら、自分のコレクションだった」と気付いたときの兄貴の怒りは凄まじく、仕返しとばかりにオレのファールカップを全て破壊するため、両手に釘打ち機を持って実家に帰って来た。釘打ち機が弾切れになったあとも、血が出るまでファールカップに頭突きをしていた兄貴。錯乱しすぎである。

いま目の前にいる 四天王のリーダーさんの目つきは、あの時の兄貴にそっくりだ。

欲しい物が手に入らなかった時のコレクター相手に謝罪は通じない。反省するだけ無駄である…ひらきなーおーろ!

「誰だ、どこのどいつが聖剣を折るなどという罰当たりな真似を…」

「それはオレだ!この異世界から召喚された勇者ムサシがやったのさ!

女神の祝福を受けたファールカップでな!」

と言いながら両手の親指でファールカップを指差し、アピール。

「…勇者だと、この露出狂が…しかも聖剣を破壊したのがあの下劣な防具だと…

我を愚弄するか‼︎」

「いいや、本当だぜ!なあ?アルテミジアさん!」

「え?ああ…はい。まあ…」

自分にも責任があるためか、歯切れの悪いアルテミジアさん。だが沸騰中の四天王のリーダーさん的にはそんな返事でも十分だった。

「この愚か者が!自ら聖剣を折るなど勇者失格であろうが‼︎

しかも戦さ場にあって、油断モロ出し…いや、油断丸出しのその姿!戦士としても失格!恥を知れ‼︎ それと人としても恥を知れ‼︎」

「モロ出しなんてしてないだろ!ファールカップちゃんと履いてるし!」

それにこの格好は、オレにとっては隣接体制。油断なんてカケラも無いぜ。

「あと魔王軍四天王が、勇者に常識的な説教すんな‼︎キャラ的におかしいだろうが!」 「うるさい!そもそも貴様が欠片も勇者らしくないのが悪いのだろうが!…もしそうであったなら、我は今頃貴様を殺して念願の聖剣コレクション百本という記録を達成していたというのに…許さん、絶対に許さん!

その下劣な防具ごと中身を串刺しにしたのち、急所を外しながら体に剣を一本一本突き刺してやる。もちろん最後まで死なないよう治癒魔法をかけながらな!ククク」

悪役定番の治癒魔法の使い方を脅しに含ませながら構えをとる四天王リーダーさん。

もちろん、そんな脅しにビビるオレではない。こちらも戦闘体制に…

「またれよ勇者どの!」

「…なんすか」

そこにいたのは、戦う気満々の騎士たちだった。

「我らエアム王国ロイヤルガード、宝石騎士団!

いかに勇者といえど、さすがにその装備で戦うのは不可能。ここは我らにお任せを、ぐわ‼︎」

「なに、大陸最高の防御力を誇る金剛石の騎士(ナイトオブ・アダマス)が、たったの一撃で倒されただと…ぐは!」

「ああ!続いて大陸で最も高潔な聖騎士と言われる我らの団長、青石の騎士(ナイトオブサファイア)まで…ど、どうする」

「…いや、むしろ騎士道がどうとか小煩い二人が早々にやられたのはむしろ好都合!全員でかかるぞ‼︎」

「「「おう‼︎」」」

「あらゆる防御を刺し貫く俺のスピネル・スピアを喰らえ!ぐお!」

「ぼく柘榴石の騎士(ナイトオブガーネット)の騎竜ヴィーヴィルのブレスを受けてみろ!うわー!」

「私の魔法剣エメラルド・タブレットは斬撃と共に魔法を生み出す…ばかなー!」

「ま、まってくれ、俺様血石(ナイトオブ)の騎士(ブラッドストーン)は実は魔王軍のスパイで…ぎゃばー!」

「消えろ!有象無象‼︎」


バババババ


四天王リーダー怒りの魔剣乱射で、宝石騎士団あっさり壊滅。

お前ら行数稼ぎに来ただけか‼︎

まあ、死んではいないようで、一ヶ所に集められ、姫さまに治癒魔法をかけてもらっているが…

「残念ながら、貴様が装備を整える時間稼ぎにもならなかったな露出狂勇者よ。ククク」

「いや、かまわないぜ。

オレは元々この、ほぼ生まれたままの姿で戦うつもりだったからな」

「正気か?」

「…今更な質問だな。教えてやるぜ!RPGには、全裸のほうが強い職業があるってことをな‼︎」

ニンジャとか、スク○ニの一部のモンクとか。

あとオレファールカップ履いているのに、今全裸って言ったのは、比喩的なのだから気にしないで!

「…貴様とは話しているだけで頭痛がしてくる…もういい、死ね」

四天王リーダーが、徒手空拳のまま投擲するように腕を振るうと、空間から魔剣が現れオレの喉元に迫る。

が、


バキーン


「なに⁈」


オレは 一瞬で逆立ちになり、飛んで来た魔剣をファールカップで受け止め、破壊する。

どうやらこのファールカップには武器破壊能力が付与されているらしい。防御面積が超狭いというリスクからくるリターンのためだろう。


「ク、だがそのような変態的な動きが何度も続くものか!喰らえ!」


ヒュン、ヒュン


左右から聞こえる、二本の魔剣が風を 切る音、

ならば、

「はっ、とう」

二本の魔剣の軌道が交差する位置まで後退、二本を同時に受け、迎撃する。

「馬鹿な…」

言葉を発したのは四天王リーダーだが(そういえば、コイツ名前なんだっけ?)呆気にとられていたのは、その場にいる全員。

「…ファールカップに出会ってからの八年間、自分に飛んでくる物全てを股間で受け止める事だけ考えて生きてきた。

そんなオレからすればこの程度、児戯にも等しいぜ」


ブチブチブチ


と、血管が切れる擬音でしか表せないような表情の激変とともに、四天王リーダーが叫ぶ。

「ならば我が魔剣の全てを正面から叩きつけてくれるわー!」

ヤツの周囲から魔剣が現れ、錐型の密集隊形を取る。

「股間に大穴を開けて惨めに死ねー!」


ガガガガガガガガガガガガガガガガ


ガトリングのように射出される魔剣が、ありえない集弾率でファールカップに叩き込まれる。百近い魔力光が尾を引き流れる光景は、もはやビーム兵器!だがそれでも微動だにしないファールカップ。

すごい、すごすぎるよ女神様‼︎


バキーン


そして最期の魔剣が砕け散る。

決着の時だ。

「馬鹿な…認めん!こんなもの、我は認めんぞー‼︎

ち、近寄るなー‼︎」

往生際悪く、折れた魔剣を拾って振り回す四天王リーダー。

「アンタは三つ間違いを犯した…」

オレは世紀末救世主気取りで、バキバキ指を鳴らしながら、四天王リーダーに近づく。手を使う予定はまったく無いけど、一応演出として。

「ま、間違いだと…」

「一つ目は、蒐集家のくせにコレクションを大事に扱わなかったこと」

「ぐ、それは…」

「二つ目は、コレクションの一つひとつに予備と、予備の予備が無かった事」

「し、しかし魔剣とは基本オーダーメイドの一品物。物理的に不可能だ!

貴様、まさかレプリカなどという偽物に手を染めろと⁈」

え?あれ?ダメなの…えーと、スルーして話を進めよう。

「三つ目は、攻撃が整いすぎていた事。

実践経験が少ない…なんてことはありえないだろう。

だが!戦っている時間より、コレクションの魔剣を並べたり動かしたりしてニヤニヤしている時間の方が長かったはず!」

魔剣を一糸乱れず飛ばしてみようとか、幾何学模様に並べて端から順番に動かそうとか。

「き、貴様なぜ我の恥ずかしい趣味を知っているのだ!」

ウチの兄貴がそうだったからだよ。

「最後に四つ目にして最大の過ちは、コレクターのくせに、他人の大切な物へのリスペクトが無いこと!

よくもファールカップをバカにしやがったな‼︎」

「貴様、我の間違いは三つと言わなかったか?それ四つ目…」

「………」

「………」

「うるせえ‼︎ 喰らえ必殺!人間鏡餅、モチ硬いバージョン‼︎」

説明しよう!人間鏡餅とは、正月徹夜で遊んでいるとき寝落ちしたヤツの頭の上にチ○コを乗せて写真を撮ることだ。そしてモチ硬いバージョンは、ファールカップで頭をガンガン叩いて起こすことなのだ!

「だがオマエは永遠の眠りにつけー‼︎」

「馬鹿なーーーーーーーーー‼︎」

オレのファールカップが十字に構えた魔剣を砕き、四天王リーダーの頭部を直撃する。

聖剣も含めて<ファールカップによる魔力剣百本折り>達成‼︎ついでに魔王軍四天王リーダーの頭蓋骨も粉砕。

ヤツの体が床に崩れ落ちる。

オレの勝ちだ!

「…本当にあんな攻撃で倒したのですか?」

近づいてきたアルテミジアさんの問いに、自分の股間をサスサスしながら答える。

「ああ、理科室の人体骨格模型の頭部を破壊したときと同じ感触だったから間違いない」

ゾンビ終末世界(ゾンビ・アポカリプス)をファールカップで生き残れるか?>という議論中に行った実験である。

「…よくわかりませんが、信じましょう……どの…」

「ん?なんか言った?アルテミジアさん?」

「あ、いえ…そんなことより、四天王のリーダー相手とはいえ、たった一人に王宮がここまで破壊されるとは…む?」

砕けた床に突き刺さっていた魔剣から青白い炎が浮かび上がった。

「これは?」

「おそらく魔剣、いえ闇落ちした聖剣の持ち主たちの魂です」

オレの疑問に答えたのは姫さまだった。

「あの魔族はかれらをゴースト化して剣に憑依させ、死霊魔術で操っていたのです。

もう少しだけ待ってください。いま清めますから」

姫さまが歌うような祈りを捧げた。鈴音を思わせる旋律に癒された魂が光となって天に昇る。


ありがとう

ありがとう

ありがとう


全ての魂が去ったあと、気がついたら床の魔剣の色が赤黒いものから、聖剣らしい清浄な色合いに変わっていた。

「おお…姫さまがヒロインっぽい仕事をしている」

「それは、あなたの世界では褒め言葉なのでしょうか?ムサシさま…勇者さま?」

ん?ああ、オレがさっきやる気無くしたから心配してるのか。

「すいません。さっきは帰るなんて言ってしまって。オレ勇者やります!」

「本当ですか、よかった。ありがとうございます」

満面の笑顔で喜ぶ姫さまと、

「…急になぜだ?」

超疑いの視線を向けるアルテミジアさん。

「オレ気づいたんですよ。なぜこの世界でコドピースが流行ってないのか?流行らせるにはどうすればいいか!」

「………」

姫さまが笑顔のまま硬直し、

「………」

アルテミジアさんは頬をヒクつかせながら視線を強める。

「流行ってないのは、股間に防具をつけた傭兵が活躍していないから!

だったらオレがそれになればいい!

つまり、オレがファールカップしか履いてない勇者として魔王を倒せば、この世界でもコドピースが一大ムーブメントとなるはず!

倒すぞ悪の大魔王‼︎」

「…わたしは、なんという方を勇者として召喚してしまったのでしょう…」

「…もっと鍛錬を重ねてあの猥褻防具を破壊できるようにならなくては… 魔王を倒せても、この世界は…」


オレの魔王打倒の掛け声に賛同してくれる人はいなかった。

なぜだ‼︎






次回は戦闘シーンから始まる予定です。

勇者が股間で攻撃魔法千本ノックの予定です。パイルバンカーもあります。

アルテミジアの「ムコ殿」発言に、アルテミパパが「お父さんは許さないぞ!」とか言ったりもする予定もあります。

今回あたりから、予告があてにならなくなります。

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