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煙草星の女侵略者達がやってきたよ! でものんびりゆるゆるだった件について-2

「はい、できましたよ」


 僕はテーブルに二人分のご飯をよそおったお椀を置き、真ん中に大皿に乗せた野菜炒め、その他には味噌汁二人分をテーブルに置く。

 もちろんお茶の入れたグラスもお箸もちゃんと置いてあげる。


「おお、中々うまそうじゃないか――だが、これだけじゃ足りないかもな……」

「まぁ多少なら僕の分の野菜炒めを多めに食べてもいいですよ」

「違う違う、飯の量を言ってるんだ」

「でももうご飯は空ですよ?」

「ちっ、しゃーねぇな。我慢するか」

「いただきます」

「おう、いただくぜ」


 僕とメディウスはご飯を黙々と食べる。

 そして半分程食べた後、僕はテレビを点ける。


「何だいそりゃ……通信機か?」

「え? テレビですけど……」

「てれび?」


 僕は言葉が詰まる。

 てれび? 何て聞かれるとは思わなかったからだ。


「そのてれびというのは通信機器か何かか?」

「いえ……ええと、テレビ局が放送してる娯楽……ですかね」

「なるほどな……娯楽か……」


 メディウスは少しの間、ご飯を食べる手を止めテレビを見つめる。


「ああ、あいつがででるな」

「あいつ?」


 知り合いでもテレビに出ていたんだろうか?

 僕は興味をそそられテレビに視線をやる。

 そこには煙草のCMが流れていた――


「これが?」

「あいつはテンスター……中々強いぜ」

「ちょっと意味が分からないな」


 メディウスはふぅとため息をつき、ご飯を食べながら説明しだす。


「あたい達は煙草星から来た侵略者だ。あたいはメディウス、そうだなマイルドテンと言えばわからないか?」

「そういえばそんな煙草があったような――」

「名前を変えて今はメディウスだ。ちなみにライトとかは姉妹にあたるな。今はどこに落ちたのやら……」

「えっ……ということはあの雷って……」

「そうだ、この惑星に侵略しに来た」

「えええぇぇぇ」

「そんな間抜けな声を出すなよ相棒。何も取って食おうっていうんじゃない。ただこっちの世界では煙草は廃れつつあるだろ?」

「健康に悪いですもんね」

「そうだ、健康に悪い。でもそれは誰が言った? むしろ農薬は健康を害してないのか? それとも今食べてる野菜は無農薬で作ったのか?」

「そう言われると……でも煙草は明確に体に悪いじゃないですか……」

「なら車からでる排ガスは悪くないのか?」

「でも肺がんに――」

「おいおいおい、お前の脳みそは空っぽか? 煙草を吸ってない奴だって肺がんになるだろう?」

「それでもやっぱり吸ってない人より吸ってる人の方が肺がん率は……」

「ならいい所にも目を向けてみたか?」

「いい所?」

「集中しすぎる人にとっちゃ煙草は一区切りするのにいい薬になったりするだろ?」


 僕は父親の事を思い出す――確かに書斎に籠ってる父が休憩にと葉巻を時折背筋を伸ばしながら吸っていた。

 だからと言ってメリット、デメリットを考えるとデメリットの方が多いのではないだろうか?


「まぁなんだ、こっちの世界で廃れてきている煙草を昔のように栄えさせる事が目的の侵略だ。危害を加えるなんて、そんな事するわけないだろ?」

「具体的には?」

「さぁな、あたいには案はないさ――ただ送られてきただけだからな……それより見ろよ」


 メディウスが顎をテレビに向けて軽く突き出す。

 テレビに目線を向けると、緑の髪をしたツインテールのかわいらしい幼女が映し出される。

 新人のアイドルを街頭で探すという無謀な企画が売りの番組だ。


「はーい! わたちの名前はマリボロ! よっろちくねー!」


 その言葉と共にポーズを決める。

 すると周りの大人達が「おおお」と熱狂的な声を上げる。


「何あれ――」

「軽い洗脳だ。マリボロの野郎……やるじゃねぇか」

「いやいや、洗脳って侵略じゃねぇか!」

「だから侵略だっつってんだろ!」

「危害を加えないって言ってたじゃん!」

「危害は加えてないだろ? 少し洗脳して応援してもらえるようにしてるだけだ。むしろこの世界全部を洗脳出来たらどれだけ楽だろうな」


 そんな怖い事を言いながらメディウスは最後の野菜炒めをテレビを見ながら口の中に運ぶ。

 そして味噌汁をズズと音を立てて飲んだ後、ため息をつく。


「美味かったよ……ごっそさん」

「それで……これからどうするんだ?」

「あん? 何がだ?」

「侵略……もう僕は洗脳されているのか?」


 そう、マリボロが洗脳できるという事はこのメディウスもできるのではないかと考えたのだ。


「あたいにそんな力はないよ……むしろ洗脳系はマリボロ一族の特権みたいなもんだ」

「そ……そうなんだ……」

「まぁ今日はもう寝るよ。疲れたしな……それに侵略はあたいは姉妹に任せてるんだ」

「姉妹?」

「メディウス・ライトとかプローム・テックっていう名前の奴がこの街のどこかに落ちてるからそいつらが何とかするさ」

「随分と呑気なんだな」


 メディウスに視線を移すと、いつしかソファーに寝転がりながら何処からともなく出した煙草をふかしていた。

 何だか馬鹿らしくなった僕はメディウスが食べた食器と自分の食器を持っていき洗う。


「おい、明日街に出てみようぜ」

「まぁ講義はないからいいけど……でもなんで?」

「ククッ、今日見ただろ? この街だけであの数の転移が行われたんだ。歩いてるだけで色々な奴らが見れそうだ」

「あの雷ってメディウス達だったんだ……」

「他に何があるってんだ」

「確かに――」


 合点がいった。

 むしろ世界の終わりの前兆ではなさそうなので少し安心する。


「それじゃ、僕はお風呂に入って寝るよ」

「おっ、一緒に入るか? 背中くらい流してやるぞ?」

「結構です!」

「そりゃ残念」


 僕はお風呂に行き、ゆっくりと浸かりながら今日の事を思い出す――

 お風呂を出る頃には眠気が凄くなっていた。

 居間に行くと、メディウスはまだソファーで煙草を吸っている。


「僕はそろそろ寝るよ。お風呂は自由に入っていいよ……ソファーで寝てもいいし、好きな場所で休んでくれ」

「あいよ」


 メディウスが片手をあげ左右に振るのを確認し、僕は自室に戻る。

 そして電気も点けずにベッドに飛び込む。


「ああ、疲れた――」


 それがその日に最後に呟いた一言だった。

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