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狼、ギルド会館へ向かう

 ジークに連れられて城門を越えて街に入るが、俺とティナの周りを騎士団の人たちが囲みながら進む。


 〔なぁ、なんでこんな神経尖らせて囲んでんだ?〕


 「何でって……アル、お前は自分の種族を理解して言っているのか……?」


 〔種族? アルスキラウルフがどうかしたか?〕


 「どうかしたもあるか! 誰のせいでこんな苦労していると思っているんだ!」

 「たっ隊長……? いきなりどうしたんですか……?」

 「すっすまない……。このアルスキラウルフ……アルと会話していたものでつい……」

 「はっはぁ……?」


 騎士団の人たちもよくわからず首を傾げるが、特に問い質すわけでもなく、すぐに気を引き締めてジークの後に続く。

 チラッと周りを見るが、ジークが前を歩いているせいか、思ったよりも騒ぎが少ないように見える。

 魔獣を街で見たら大事になる場合もあるのかもしれないが、テイマーという存在もいるし、ある程度は慣れているのだろう。


 ジークに連れられしばらく歩いていると、ヨーロッパにありそうなレンガ作りの大きな市役所みたいな建物の前へと着いた。


 「ここがギルド会館だ。先に言っておく。絶対に騒ぎは起すなよ!」

 「わかりました!」


 〔そんな子供じゃないんだから騒ぎなんて起こさないわ〕


 ジークは俺の発言に大きなため息をつく。

 そして息を整えてギルド会館の中へと入る。

 俺もティアを背中に乗せたまま後ろについて中へと入る。


 「あらジーク様、ほんじつぅは!?」

 「あわ……あわわ……」


 んっ?

 ジークが入った途端受付っぽい姉ちゃんとかがビビってんな。

 つか周りのいかついおっさんとか兄ちゃんとかも壁際に後退ってんな。

 もしかしてジークってそんなに恐ろしかったやつだった?


 「すまない……何も言わずこの子の話を聞いてもらいたい……」


 ジークが手招きをしたので、俺たちを受け付け前まで移動する。

 っと、ティナはまだ小さいから話し辛いか。

 俺は影を操ってティナをゆっくりと持ち上げて受付の姉ちゃんと目線を合わす。


 「えっと、ティナです! じょーほーがほしくてきました!」

 「じょっ……情報ですか……?」


 〔とりあえずここの事とか地理とか文化とかだな。あと冒険者について聞いておこうか〕


 「えっと、ここの事と、ちり?とかぶんか?ってのを知りたいです! あとぼーけんしゃについて教えてください!」

 「あっあの……ジーク様……もしかしてこの国亡ぼすための情報集めという事でしょうか……?」

 「そういう事では断じてないから安心してくれ……」


 何かジークも受付の姉ちゃんも疲れた顔してんな。

 やっぱ国勤めとかって疲れるんだろうなぁ。

 つか受付の姉ちゃんの内の一人大丈夫か?

 完全に顔青くして固まってるじゃねえか。

 そんなにギルドの受付って忙しいのか。


 「ですがこんなの私で対処できる問題じゃありませんよ!」

 「私も本当は先程の件を陛下に伝えなければいけないところをこうして同行しているのだ……わかってくれ……。本来であれば伝令ではなく私が行くべきにも関わらず……陛下……申し訳ありません……」

 「とっともかく個室で説明した方がよろしいですよね……?」

 「そこは任せる……むしろギルド長に説明してもらえ……もう私は疲れた……」


 んっ?

 個室で説明してくれんのか?

 まぁ一グループであんまり占領しても悪いしな。


 「ということで、個室での説明になるが……いいか……?」

 「ティナはだいじょーぶです!」


 〔俺もいいぞ。てか受付の姉ちゃんの内の一人大丈夫か? 体調めっちゃ悪そうだぞ? ちゃんと休んでるんかな?〕


 「っ……!」


 ジークが何か言いたそうにしてるが、何故か押し込んで息を整える。

 全く、言いたい事があれば言えばいいのにな。


 「でっではこちらの部屋へどうぞ……」

 「はーい」

 「わふぅ」


 さて、ティナを再度乗せてジークと姉ちゃんについていこう。



 ◇



 アルたちが去った後、時を止めたように静かだったギルド会館は阿鼻叫喚の渦へと至った。


 「何でこんなところにアルスキラウルフがいんだよ!?」

 「伝説の狼だろ!? 俺だって文献でしか見たことねえよ!」

 「威圧感凄かったわ……軽く10回は死を覚悟したわ……」

 「それよか背中に乗ってた子供……何者だ……?」

 「あのアルスキラウルフが大人しくしてたってことはテイマーってことだよな……?」

 「アルスキラウルフを使役するとかどこの化け物だよ!?」

 「見た目と実力は別という事がはっきりわかるな……」

 「あの剣帝が直々に案内する程だろ……?」

 「こんな小国が平和なのはあの剣帝がいるからと言っても過言でもないしな……。それがあそこまで気を使う相手って事だ……」

 「ぅゎょぅι゛ょっょぃ……」

 「ともかく誰か似顔絵描けるやついねえか! あの子供に何かあったらこの国亡びるじゃ済まねえぞ! 今いねえ奴ら用に用意しておけ!」

 「っておい! リーザちゃん緊張の糸切れて倒れてんじゃねえか!」

 「衛生兵! 衛生兵!」

 「おいこっちも頼む! 新入りが何人かぶっ倒れやがった!」


 といった騒ぎもアルたちはまさか自分たちが原因とは露とも知らなかった。

こんな可愛い幼女を怖がるとは何事だろうか(真剣)

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