表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/39

狼、幼女と旅をする

〔〕を主人公の念話とします。

 〔えーっと……〕


 「?」


 〔一先ず君の名前は?〕


 「私? ティナっていーます」


 〔俺は……一応アルスキラウルフっていう狼らしいんだけど、まだ名前はない感じだな。なんならティナがつけてくれ〕


 「じゃあ……アルはどーかな?」


 〔まぁそれでいっか〕


 「それでアルはなんで私を助けてくれたの?」


 〔強いて言えば見捨てられなかったからだな。それよりティナこそなんでこんなところにいるんだ?〕


 俺が尋ねると、ティナは俯いてしまった。

 どうやら聞かれたくなかった事のようだ。


 「えっとね、ティナね、おとーさんとおかーさん死んじゃって、一人になっちゃったの。そしたらくちべらし?っていうのでこの森に運ばれたの……」


 くちべらし……口減らしか。

 ボロボロの服を見た感じ、貧しい村とかそういったところに住んでいたんだろう。

 そこで両親が死んだのもあって、村で死なれると評判とかそういうのがあるとかでこの森に捨てられたんだろう。

 確かに綺麗事を言ってられる環境じゃないかもしれないが、こんな小さな子を平気で捨てるとなると憤るものもある。

 ……もしかしたらそういう世界なのかもしれないな……。


 〔それで、ティナはどうする?〕


 「?」


 〔このまま森を彷徨ってただ死ぬかどうかってことだ〕


 「でも私……行く場所……」


 〔いっそ死にたいのなら俺がこの場で噛み殺すが〕


 本当はしたくはないが、放置して変に魔獣に嬲り殺されるよりは一思いに殺してあげた方がいいだろう。

 助けてしまった以上、せめてけじめぐらいは付けるべきだろう。


 「私は……生きたい……です……。おかーさんも……ティナは生きてって……言ってたから……」


 ティナはポロポロと涙を流し、今の気持ちを素直に告げる。

 なら俺はそれの手伝いをしてやるだけだ。


 〔なら俺と旅するか? 行く当てもないけどな〕


 「いいの……?」


 〔まぁその旅の途中でお前を引き取ってくれるやつがいたらそいつに預けるがな〕


 するとティナはとことこと歩いてきて俺の背中を軽く握る。


 「ティナ……アルと一緒にいたい……」


 〔俺と一緒にいたら魔獣と一緒にいるって言われるぞ?〕


 「それでもいいの……」


 どうやらかなり懐かれてしまったようだ。

 まぁ頼る相手がいないのだろう。

 っと、洗ってた毛皮も綺麗になったようだな。


 俺は洗っていた毛皮をティナが包まれるぐらいの大きさにカットする。

 ティナは不思議そうにカットされていく毛皮を見ている。


 さて、あとはこれを乾かしてっと。

 火を吹いてたって事は火にも強いだろ。

 軽く風の球で水気飛ばしてあとは火の玉を周りに展開して少し乾かせばたぶん大丈夫……なはず!


 〔ほら、そのボロボロの服のままだと寒いだろ? これやるよ。獣臭いのは勘弁してくれな〕


 そう言って影で熊の毛皮を持ってティナに渡す。


 「あったかい……」


 どうやら気に入ってくれたようだ。

 さてと、どうやら俺……というかこのアルスキラウルフには物を異次元空間にしまう事ができる能力があるらしい。

 ホント何なんだこの狼……。

 とりあえず空間を開いて残った肉と皮とついでに骨をしまってっと。


 〔じゃあ行くか〕


 「うん……」


 ティナは毛皮を片手に俺の背中を掴む。

 だがこれだとさすがに歩き辛いな……。


 〔ティナ、俺の背中に乗れ。そっちの方がいいだろ〕


 「いいの……?」


 〔子供の足に合わせてたら森抜けるのに時間が掛かりすぎるだろ。いいから乗れ〕


 「うっうんっ!」


 俺はティナが乗りやすいように一度伏せの体勢になる。

 ティナは「よいしょっ!」と言いながら俺の背中に乗り、毛布で身体を包む。


 〔さて、行くとするか。……つってもどっちに行きゃいいんだ?〕


 まぁ気楽旅だ。

 水はまぁ最悪俺の能力で出せばいいから……あとは食料か。

 果物とかあればいいんだが……。

 つってもこんだけ広い森ならある程度食べれる物はあるだろう。

 俺はティナを背中に乗せて森の中を進みだした。


 森といっても、雑草が生い茂って道が見えないというわけでもなく、芝生のように邪魔にならない程度までしか伸びていなかった。

 ここら辺はファンタジーだな……。

 普通森と言ったら人の手が加わってなければ雑草が生い茂って道なんかわかったもんじゃない。


 〔てかティナは俺が怖くないのか? あの熊なんて一回吠えたら固まっちまったぞ〕


 「えーっと、あの熊さんは怖かったけど、アルはなんか怖いと思わなかったの。アルが優しいからかな?」


 〔んーそういうもんなんかね?〕


 もしくはあの熊がこの狼の事を知っていたっていう感じかねぇ?

 だとするとこの狼、この森の中でも割りと有名な分類なのか?

 いや、あの熊がこの森じゃ最底辺で、ただこの狼がその上にいただけなのかもしれない。

 油断は禁物だ。


 「でもアルが伝説のおーかみさんだったらいいなー。そしたらおとーさんに自慢できるもん!」


 〔伝説の狼?〕


 「えっと、おとーさんのお話なんだけど、伝説のおーかみさんは家族を大事にするんだって。それでね、仲良しな家族にはじひっていうのをくれて、仲が悪い家族は子供だけにじひをくれるんだって。だからアルがそのおーかみさんだったら、おとーさんとおかーさんにお話一杯できるの! ティナ、伝説のおーかみさんと一緒に旅したのって!」


 じひ……慈悲か。

 つまり家族を大事にしている者は助けたりするが、子供を蔑ろにするような親は襲うとかそんな感じか。


 〔その狼については何か言ってたのか?〕


 「えっとね、おとーさんのお話だと黒い波で国をほろぼしたって言ってた」


 いやそれただの害獣じゃねえか!?

 にしても黒い波ねぇ……。

 波ってことは水を操るってことか?

 でも黒いってことだから闇魔法的なやつか?

 一応俺も使えるけどそんな波を起こせる程じゃないだろうし、この狼はその伝説の狼とやらではないだろう。


 〔てかティナのお父さんは冒険者とかそういうやつだったのか?〕


 「えっと、いーきゅうぼーけんしゃって言ってたよ?」


 Eって……アルファベットまであんのかよ……。

 それに口減らしっていう言葉もあるって事はある程度文字文化は似てるって事か。

 まぁ変に異世界言語とか出されてもわからないから困るけどな。


 〔まぁそういうのも含めて街とかで色々と聞いておきたいものだな。何しろ情報は大事だ〕


 「おとーさんもじょーほうは大事って言ってたよ? アルと一緒だ!」


 ティナは嬉しそうにぎゅっと俺の背中に身体を倒して抱き締める。

 こんな幼女に抱き着かれるとか事案……って今俺狼だから関係ないか。

 関係ないという事にしておこう、俺の精神衛生上の問題で。

3話目は明日からと言ったな。あれは嘘だ。

というのは冗談で、予想外に反応が多かったので急遽投稿しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ