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狼、怖いもの

 〔フィリアもフィリアのお母さんも、今回は俺のせいで酷い目に遭わせてしまって本当に申し訳ない〕


 王都へ戻った俺はティナを背に乗せてフィリアたちの元へと向かった。

 そして市場の復旧を手伝っている二人を見つけ、謝罪をしている。


 「そっそんな! アルは悪くないよ! ねっ、おかーさん!」

 「そうね。私の傷もアルちゃんが治してくれたんですってね。お礼を言うのは私たちの方よ。アルちゃんのおかげで重症だった人は無事だったんだから」


 〔そうは言ってもなぁ……。そもそも俺がいなかったら二人にも危害が加わる事なかったし……〕


 頭を下げてしゅんとしている俺にフィリアがとことこと近付いてくる。


 「でもアルがいなかったらおかーさん死んじゃったかもしれなかったんだよ? だからお礼するねっ!」


 そう言ってフィリアは俺の顔を両手で押さえて鼻の上ぐらいに軽くキスをする。

 一瞬俺は何が起こったのか理解できなかった。

 えっと……?

 今俺幼女とは言わないが子供にキスされた……?


 「あー! ティナもアルにやるー!」


 そう言ってティナもフィリアと同じところにキスをしてくる。


 「あらあらー。アルちゃんモテモテねー」


 〔えーっと……〕


 やばい。

 今頭の中でパトカーのサイレンの音が鳴り響いている。

 完全にこれ事案確定……だよな……?


 「なら私もお礼をした方がいいかしらねー?」


 そう言ってフィリアのお母さんのニコニコしながらゆっくりと近付いてきた。


 〔だっ……大丈夫でーっす!〕


 いくら何でも人妻はアカーン!

 俺は三人の護衛用の影狼を出してその場から逃げ出した。


 「「アルー!?」」

 「あらあらー」



 「それで、今回の事件の重要人物が何でここに一人でいるんですか?」


 〔頼むロザリア姉ちゃん! 俺を匿ってくれ!〕


 ギルド会館へと逃げ込んだ俺は、受付で頭を悩ましていたロザリア姉ちゃんに匿ってもらえるようにお願いした。


 「まぁ無事ならそれで構いませんが……それで、逃げてきた理由は何ですか?」


 〔……ティナとフィリアにキスされて、フィリアのお母さんにも迫られたから……〕


 「は……?」


 〔子供にキスされて人妻に迫られるとか捕まっちまうじゃねえか!〕


 「えーっと……すいません何言ってるかわかりません」


 ロザリア姉ちゃんは呆れたような顔をして俺を見つめる。


 「子供と人妻に迫られて怯えるアルスキラウルフなんて見たくなかったです……」

 「えーっと先輩……。アルスキラウルフってこんな感じなんですか……?」

 「私が知るわけないでしょ……」


 いやいや!

 おっさんとは言わないが、もう成人越えてるんだよ!?

 いやまぁ気が付いたらって感じだったから死んだのかはわからないし、この身体が何歳なのか知らないけどさ……。


 「アルー!」


 なっ!?

 外からティナの声が聞こえる!?

 何故ここがわかった!


 「あっ! アルいたー!」


 そう言ってティナとフィリアたち三人と……俺が護衛に出した影狼が申し訳なさそうに付き従っていた。

 まさか君たち!


 俺が驚いて影狼の方を向くと、「クゥゥン」と悲しそうな声を出す。

 あぁ……ティナの言う事には逆らえなかったのか……。


 「アルゥー! なんで逃げちゃったの―?」


 ティナはとことこと走って来て俺を捕まえるようにしがみつく。

 ううっ……やめてくれ……その純粋な瞳で俺を見ないでくれっ!


 「アル、お礼嫌だったの……?」


 フィリアも一緒に近付いてくるが、お礼を嫌がられたと思ってしゅんと落ち込んでしまう。


 〔嫌という事じゃないが……えーっとだな……〕


 俺があーでもないこーでもないとあたふたしていると、フィリアのお母さんがふふっと笑いながらティアとフィリアの二人に話しかける。


 「アルちゃんは二人にキスされて照れちゃったのよー。アルちゃんも男の子だもんね」

 「「アル、そーなの?」」


 〔うっ……まぁそんなところだ……〕


 フィリアのお母さんもわかってるのかわかってないかは定かではないが、そういう事にしておこう……。

 いや、そうしてくださいお願いします。


 「でもアルって本当に足早いよねー」

 「アルすごいんだよー! びゅーんってかいどー走るの!」

 「ティナちゃんいいなー……。私もアルに乗ってみたいなー……」


 そんな俺に乗れないぐらいでしょんぼりしなくても……。

 いや待てよ?

 盗賊団のアジトの時みたいに影纏って大きくなれば二人ぐらい乗せられるんじゃね?


 何事も試しだと思い、俺は影を纏って身体を大きく……できた!


 〔フィリア、たぶんこれぐらいの大きさなら二人は乗れると思うぞ。乗ってみるか?〕


 「いいのっ!?」


 俺は頷き、影でティナとフィリアを背中に乗せる。

 あとは影をシートベルトのように身体に巻き付ければっと。


 「おかーさん見て見て! 私アルに乗ったよ!」

 「あらあら良いわねー」


 〔じゃあちょっと街の中散歩してくるわ。フィリアのお母さん、何匹か影狼置いていくんで市場の復興の手伝いにでも使ってくれ〕


 「そんな気を使わなくていいのよ?」


 〔まぁ手は多いに越した事ないし、フィリアのお母さんも傷塞いだって言っても病み上がりだろうし無理しないようの監視役だよ〕


 俺はそう言って上級1匹と中級下級を適当に出してフィリアのお母さんに託す。


 〔ってことで、君たちフィリアのお母さんの言う事とか他の人の言う事を聞くようにな〕


 全員了解とばかりに軽く吠えてくれたので、後は任せて俺はティナとフィリアを乗せてギルド会館を出る。


 「アルはやーい!」

 「はやーい!」


 まぁさすがに街中だからそこまで速度は出してないが、二人が笑顔ならいいだろう。

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