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狼、交渉を終える

 俺と王様がどこか落としどころを考えていると、ティナがゆっくりと俺に近付いて耳打ちする。


 「ねーアル。王様あの石が欲しいなら渡しちゃダメなの?」


 〔そうしたいのは山々なんだが、あれはあくまでティナの物なんだよ〕


 「ならティナは渡してもいーよ?」


 〔ティナがこの国の国民だったらそれでも問題ないかもしれないけど、ティナはあくまでこの国で冒険者登録をしただけだ。だから国としてもそこまで拘束力を持つわけじゃないんだ〕


 「アルの話難しいよぉ……」


 〔要はティナがこの国の国民でもないのに、何の対価もなく渡すのは国の立場からしても少しまずいんだよ。たぶん〕


 簡単に言えば個人が所有してる金山を他国に無料であげるって言ってるようなもんだ。

 所属している国からしたらたまったもんでもないし、貰った国も国で外交上で問題が出てくる。

 そこで何か取引した物があれば、こういう交渉をして得ました的な話ができるが……。


 〔とは言っても、お金貰ってもこれからもダンジョンとかに行って狩りはするからそうそう困る事はないし……。いやまぁティナがお金欲しいっていうならそれでもいいけど……〕


 「ティナあんなにお金見たの初めてだよ? どうやって全部使うの?」


 だよなぁー……。

 さすがにこんな小さな子を豪遊させて将来破産しての破滅なんてしてほしくないし……。

 んー……困った……。


 〔ティナが何か欲しい物があればそれでいいんだけどなぁ……〕


 「ティナはアルと一緒にいればそれだけでいーよ?」


 ホントティナは欲がないからなぁ……。

 普通だったら金とか色々高価な物要求するところなんだろうけど、ティナは生まれや親からの教えもあって欲深い事もないときている。

 これで何を要求しろと……?


 「冒険者ティナよ、何か望みはあるか?」


 王様もティナに尋ねてみるが、解答は俺に言った事同様特に欲しい物がないという。

 さすがに俺も王様も困り果ててしまった。

 とは言っても王様も交渉材料としては権力や権利なんだろうけど、こんな子供にそんなのを渡したら大人のいい餌食だ。

 まぁ俺が防ぐけどな。

 では他に与えられる物と言っても、俺はそんな王権に詳しいわけでもないから何が与えられるかはわからんから何にも言えんし……。


 〔ティナ、家……とかはどうだ?〕


 「でもアルと二人だけなのに大きな家なんていらないよ?」


 〔ですよねー……〕


 何かないのか!

 ティアが喜びつつ国もそこまでダメージを負わない物は!


 「冒険者……様々な場所へ行く……」


 ふとジークの方を見ると、何かぶつぶつと考えている。

 様々な場所へ行く?

 まぁ確かに冒険者は依頼次第では遠くに行ったり……そうか!


 〔ティナ、王様に各国境を通る際の関所とかあるのか聞いてもらえるか?〕


 「えっと、各こっきょーを通る時のせきしょ?ってあるんですか?」

 「うむ、危険な者や品が入らないように見張る意味でも建てており、通るにも少なくない量の通行料が必要となっているな」


 〔ならその関所を無料で通れる通行証を発行してもらおう。俺らは冒険者だし、遠くに行く時にそれを持ってればこの国自体に掛かるお金は無くなるからな!〕


 しかも少なくない量の通行料が掛かるって言ってるし、それが無料になるってだけでも(一人分では国的には全く痛くならないが)大きいはずだ!


 「じゃあ、その関所のむりょーのつーこうしょーを、はっこーしてください!」

 「よかろう。ではついでにこの国御用達という事も付け加えた発行証にしよう。そうすれば他国に入る際にも多少なりとも通行料は減るであろう」


 あーこの国の事だけ考えてたが、他の国に入る時もそういうのは掛かるのか。

 王様あんがとございます。

 ティナはよくわからず首を傾げるが、国御用達って事は、もし俺らに通行料を吹っ掛けたという事はこの国自体に文句を言ったのと同様になる(と思う)ということだろう。

 つまり多少なりとも減額は見込めるということだ。

 ならこっちも王様にそのお礼をしておかないとな。


 〔国御用達の通行証って事は、年毎に維持費とか掛かるんだろ? じゃあその維持費として月一で俺の魔石を一つ渡すわ。それ以上は交渉って事にしてくれ〕


 まぁホントは掛からないだろうけど、面向きの建前ってことで。

 王様は俺の提案に少し驚くが、すぐに表情を戻し軽く微笑む。

 ティナのテイマーの件突っ込まないでくれた礼も兼ねてだ。

 これでお相子って事にしようや。



 俺らは面会を終え、部屋を出るとジークが疲れたような溜め息を吐く。


 〔そんな溜め息つくなって。お前のおかげで良い提案が見つかったんだしな〕


 「だがよかったのか? あの魔石は通行証程度では……」


 〔いいんだって。俺らは冒険者だし、どこに行くかもわからん。それで移動のための金が減るってのなら大歓迎だ。それにこの国の王様と繋がりを持てたしな〕


 「ティナ君は良かったのか?」

 「アルがいーっていうならへーきです!」


 ジークはやれやれといった具合に溜め息をつき、俺らを城の外まで案内する。

 維持費についてはジークに渡す旨を王様に伝えてあるし、王様からその事が伝わるだろう。

 通行証はこれから作るってことだし、俺らは数日この王都内でゆっくりする事にするか。

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