ここは…?
記憶をさかのぼって気がついたことがある。
「俺は……死んでいる?」
もし…仮にそうだとしたら俺は幽霊、という事になるのだろうか。
しかし、俺の頭にはもう一つの仮説が浮かんでいた。
ーーここは異世界なのではないか、と。
こんなことを言うと、頭がおかしいだとか、アニメの見すぎだ、と思う人もいるかもしれない。
しかし俺は、いたって真面目だった。
ここが異世界だとすれば、今広がっている光景も
さっきの仮説にも合点がいく。
要するに、俺は現実世界で死んで、この異世界に来てしまった、ということだろう。
「……アニメでよくある展開だな。」
現実世界で死んだというのに、俺はいたって冷静
だった。
現実世界に思い残すことはしおりんグッズをおいてきてしまったことぐらいだ。
もともと兄弟はいなく、父は日付が変わらないとかえって来なかったし、母はそんな仕事人間の父に嫌気がさして出ていってしまった。
残された父のことが少し気がかりだが、たぶん父なら大丈夫だろう。
とまあこのように、心残りはないのだが、俺は不安な事がいくつかあった。
まず一つ目は、ここでの暮らしだ。
俺にはもちろん、ここに知り合いはいないし、なにより俺は、コミュ障だった。
少々不登校気味でオタクだったため、俺は常に避けられることが多かった。
そのため結果、俺はコミュニケーション障害という病気にかかってしまったのである。
……これについては悲しくなるので後で考えよう。
そして2つ目は、魔法だ。
俺はもちろん魔法なんて使えない。
しかし、先ほどの少女のように、この世界ではおそらく、魔法を使うことが普通なのだろう。
逆をいえば、魔法を使えないと何もできない、ということになる。
「これは困ったな………。」
そう呟き、人々が行き交うこの場所で俺は一人頭を抱えた。
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