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ぞうきばやし


 その日、Aさんは自殺する場所を探していた。

 ネットで「自殺 場所」で検索した結果、有名な自殺スポットがたくさんあることが判明した。


 Aさんは自殺が悪いことだと知っていた。

 たとえ自分の死を悲しむ人がいないとしても、死体が見つかれば警察や消防などに何かしらの迷惑がかかる。

 死体が見つからないのはソレで、なんらかの迷惑を与える。

 そう、自殺は良くない。だけど死にたい。

 生への執着が絶望で上書きされ、死への渇望がモラルを上回った人が、自殺という選択を選ぶ。


「おや?」


 死に場所を検索中のAさんが見つけたのは、近所にあるマイナー自殺スポットだった。

 名称は「ぞうきばやし」と捻りの欠片もない。

 小さな森のなかにある自殺スポットで、そこで死ねば誰にも迷惑をかけないのだという。

 Aさんは「ここしかない!」と決断して、一路「ぞうきばやし」に向かった。


「なんだよコレ……」


 そして、近所のマイナー自殺スポットで見てしまったのだ。

 森の奥深くに生えた古木に、恐ろしいソレが巻き付いている光景を。

 人間のパーツが、

 心臓が、

 肺が、

 肝臓が、

 小腸が、

 大腸が、

 脾臓が、

 腎臓が、

 樹木に飾られている。


 その恐ろしい光景は、まさに――


「臓器林……」


 くだらないオチに、Aさんは笑ってしまった。

 笑うと生きる気力が湧いてきて、もう少しだけ辛い人生を頑張ってみようと思った。


 だが、この自殺スポットは『そこで死ねば誰にも迷惑をかけない』のだ。

 笑いながら生きることを選んだAさんは、その「ぞうきばやし」を管理する幼女に見つかってしまった。

 赤い頭巾を被ったかわいい幼女で、細い腕にはカゴが握られている。


 否、赤い頭巾ではない。

 乾いた返り血と脂肪が絡みついた髪の毛が、Aさんには赤い頭巾に見えたのだ。


 幼女の持つカゴの中身は、赤黒い生肉や臓物。

 この「臓器林」を管理する幼女は、刃物を片手に「くすくす」と笑いながらAさんに語りかけるのだ。


「えへ。あなたもネットを見てここに来たの? あはは、本当に効果抜群。あの自殺スポットの書き込みね、あたしが書いたのよ? あなたも臓器林の一部に――」

「断る!」


 生きることを選んだAさんは、赤い頭巾の猟奇的な幼女にラリアットを食らわした。

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