No.3
「沙織が・・」
私と友達、5人で借りたコテージで殺人事件が起きた。
被害者は私の高校のクラスメイトだった橘沙織。
犯人を見たものはおらず、沙織の悲鳴も特には聞こえなかった。共通して聞いたのは、外からの少し大きめな物音ぐらいだろうか。
当然、一緒にコテージにいた私含め4人に容疑がかかった。
事件が起きたのは夜の22時過ぎ。沙織はその時間に、昼間バーベキューをした時の飲み物の残りがないかを探しに、外に出たところを後ろからナイフで二、三回刺されたらしい。
犯行に使われたナイフは、現場近くで発見された。外は小雨が降っていたため、指紋は検出されなかったようだ。ナイフは至ってシンプルなもので、私達のコテージに備え付けられていた物だった。
第一発見者の貴子は、リビングのソファで寝ていて、外の物音に目を覚まし、様子を見てくるといい外に出て、死体を発見した。その一連の過程は、全員が目撃している。
美沙は、貴子が死体を発見するまで、リビングで恭子と映画の話で盛り上がっていた。また、そのリビングのソファで貴子も寝ていたため、必然的にそれぞれのアリバイは確証されることになる。
同時に、被害者である沙織が家を出た時から、貴子が様子を見に外に出るまでの間、三人はリビングにいたため、犯行は難しいのではと考えられた。
となると、外部の者による犯行が疑われるが、犯行に使われたナイフには私達のいるコテージ3棟の備え付け品、という意味の「No.3」の文字が印刷されていた。つまり、外部の者が犯行を行うには、私達のコテージに侵入して、ナイフを入手しなければならないことになる。私達は基本的にコテージ付近にいたし、全くそのような怪しい人物はいなかった。また、料理などで何度となく使用したが、一度たりともそのナイフが無くなった瞬間はなかった。そう考えると、やはり内部の者の犯行と考えるしかなさそうだ。
犯人はいったい・・。そんな中被害者の携帯から、あるやりとりが見つかる。それは、沙織と貴子が今日まで喧嘩していたという内容である。原因は好きな人が被ってしまった、というもの。貴子は今日コテージに来る前に仲直りしたと主張したが、メールの内容だけ見ると、仲直りに関する内容は見受けられず、沙織の「もういいよ」という文面で終わっていた。美沙と恭子は喧嘩をしていたということすら知らなかったようだ。
この内容は動機として立派に成立することから、容疑は貴子に傾いていった。
「私じゃない!私が沙織を殺すわけないじゃない!」
貴子は必死に否定していたが、一度傾いた全体の意見は、そう簡単には覆りそうにない。貴子が見に行った時点では沙織は生きていて、様子を見に行くと見せかけて、沙織を殺害したのではという捜査に切り替わっていった。
本当に貴子は犯人なのだろうか。この真実は、私だけが知っている。