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Pure Pop 俺、アイドルになります  作者: トムトム
アイドル修行編
9/17

土曜日の今日は、朝から事務所でメンバー全員とボイストレーニングをしてからデビュー曲の音合わせをする事になっている。音合わせの状態が良ければそのままレコーディングするからねと、今日最初に言われていた。

「何回言えば分かるのかな?ねえ、日本語通じている?」

イライラを隠すことなく、陸にぶつけているのはボイストレーニングの先生。

この人……元は世界的に有名なオペラ歌手だった人だ。今は事務所のスタッフと個人レッスンのピアノ教師をしているという。一線を退いた理由は……なんだったか覚えていない。

「まあ、今の状態で次のレッスンは辛いだろうから休憩ね。1時間後には出来なかった所が出来る様に。私は隣のレッスンルームにいるから」

バタンと大きな音を立てて先生は隣のレッスンルームに入っていった。

「あの人、そんなに凄い人なのか?」

「元々は世界的に有名なオペラ歌手だぞ。お前ら知らなかったのか?」

「ってか、伊吹は知ってたのかよ」

散々怒られていた陸が俺に聞いてくる。

「うちにあの人のオペラのCDあるからな」

「俺も知ってた、止めた理由……表向きは結婚して主婦に専念したいだったか?」

そうだ。キャリアを全部投げ出しても好きな人を取ったんだ。

それで、旦那さんは一般人だからって公表はしていない。確かに先生のレッスンは俺達の学校が休みの時だけだ。平日は、他の人のレッスンとかを入れているのだろう。

「隣って誰がレッスンしているのだろう?」

彩人と昴が隣にいる人を気にしている。そんなことをしているのなら練習していた方がいいのにと俺は思う。

誰もピアノを使わないのをいい事に、俺はピアノを使って自分の発声練習を始める。

レッスンを始めて更に音域が広がった。後もう少し広げたい……それにはレッスンしかない。

「俺も一緒にいいか?」

俺に聞いてきたのは奏音(たくと)だった。練習を邪魔する様なヤツじゃないからいいよと言って一緒に練習を始める。奏音の方が、俺より音域が低い方が出やすい様だから奏音の音域を中心に練習をしていく。

やがてその音にもう一人混ざった。さっき散々絞られた陸だ。

「俺だって、このまんまは嫌だしな」

「ああ」

そして、俺達は三人で練習を始めた。


「伊吹は本当に歌が好きなんだな」

「うん。小学校の頃は吹奏楽部と合唱部を掛け持ちしていたけど、中学からはないから吹奏楽部だけに専念していたんだ」

「成程な。だから発声の基礎はできているんだ」

「偶々だよ。その代わりに演技とかダンスの基礎はないから」

「でも、楽器だって……ピアノは弾けるし、クラリネットもオーディションで拭いていた訳だし……ギターとかは?」

「出来なくはないけど、本格的になると話は別だよ」

「俺なんて、演技は出来るけど、歌は苦手だからな」

「俺はダンスがアレだもんな」

奏音は平均的に器用にこなすのだが、リズム感が若干弱いらしくてダンスレッスンが辛い様だ。逆に陸は音程で不安定な箇所が数か所ある。

「音程は慣れじゃないかな。そこはどうにかなるよ。生歌の時に注意すればさ」

「本当か」

「絶対って言い切れないけど、無理じゃないと思う」

「そっか、でもその前に練習だな。伊吹またいいか?」

「ああ」

俺達は、また練習を始めた。昴と彩人がその時何をしているのか全く分からなかった。


「なあ、昴」

「ん?」

ボイストレーニングの休憩時間。俺は彩人と一緒にドリンク休憩をする為にレッスンルームを出ていた。

「お前、レッスンちゃんと受けているか?」

「受けてはいるぜ。どうして?」

彩人の言いたい事も分からない訳じゃない。俺は元々子役として活動していた。中学の部活が面白くて少しだけ活動を自粛していた。学校の方もそろそろ飽きてきた頃に今回のオーディションの話を事務所から聞いて無事に合格して今に至っている。

「なんだ?結構いい子にやってんのか?」

「そういう訳じゃないけど、一人で活動する訳じゃないから多少の調和は必要だろ」

俺は彩人を諌める。彩人は他の事務所の養成所で一通りのレッスンを受けていた。でも事務所でのデビューの可能性がかなり低くって、今回のオーディションを受けた一人。完全な素人な伊吹以外は皆似た様なものだ。陸は劇団員だけども、歌が苦手でぱっとしていなかったと聞いた事があるし、奏音は養成所に入っていてもダンス系が苦手で伸び悩んでいる状態だった。

「そりゃそうだけど。伊吹ってどうなんだ?」

「さあ、俺達よりはびっしりとレッスンを入れてあるってさ。ご愁傷様だよな」

そりゃあ、絶対音感を持っていても素人を2カ月のレッスンでデビューなんて無理にも程がある。

「お前、事務所から何か言われたか?」

「学校の成績だけかな。お前は?」

「似た様な所。他の奴らはどうなんだろうな?」

「さあな。とりあえずデビューして売れないとダメだろう」

「そりゃ、確かに。売れるのかね?」

「やるべきことはやらないとダメだろうな」

「そうだな。レッスンルームに戻るか」

俺は彩人を促してレッスンルームに戻る事にした。


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