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Pure Pop 俺、アイドルになります  作者: トムトム
アイドル修行編
15/17

俺はCMの収録で、もうすぐ梅雨明けという地方都市に来ている。CMロケの為に今日から四日間この土地で撮影を纏めて行う事になっている。

俺のCMの共演者はナツミちゃんではなくて、ナツミちゃんと同じ雑誌モデルを務めている陽菜(ひな)ちゃんが勤めてくれる事になった。

こっちに来る前に事務所でロケの打ち合わせを数回行っている。

陽菜ちゃんも俺と同じ高校2年生。高校入学と同時にこの世界に飛び込んだという。

「伊吹君は、まだ慣れない?」

「慣れないよ。心臓バクバクしているよ」

「でもね、皆が言っていたよ。伊吹君、一番レッスン時間が多かったって」

俺だけが素人だからそこは仕方ないかなって思うけど、俺が不安がって自然とレッスンが増えてしまった事も一因かもしれない。

レッスンのお陰で苦手だったダンスの方も及第点位までは貰えるようになった。

期末テストと同時進行でデビュー曲のレコーディングを終わらせた。

PVの撮影は、今回のCMのメイキングの映像を全面的に使う事になったという。

そんな俺達の映像はまだ見せて貰っていない。このロケが終わったら皆で集合する事があるからその時には見せて貰えるだろう。


今日の僕達のスケジュールは、これから簡単なリハーサルをしてから最終の打ち合わせ。

今日はそれで終わる予定だ。明日はその代わりに朝6時から収録が始まる。

一番暑い時間のロケを避けるために早朝と夕方を中心に収録するそうだ。

で、今回はロケ地にあるコンビニを時間貸し切りにして貰っている。僕達のCMだけは既に最終話(6話完結)までシナリオが出来ていて、ロケの部分だけは全て収録を終わらせるそうだ。僕と陽菜ちゃんのスケジュールを合わせたら今回の日程が一番効率的に終わるということでこうなったそうだ。

俺もそうだけど、陽菜ちゃんも素朴なキャラクターなので、地方都市の高校生編というカテゴリーなのだそうだ。他のメンバーは、幼馴染・部活の先輩・部活の後輩・同じバイト先と関係性が全く違う。相手役が誰かは知っているけれども、メンバーのCMはまだ見ていない。

製品お披露目イベントが前日にあるので、そこで全員のCMを見る事になりそうだ。


「それじゃあ、今日の打ち合わせはこれで終了です。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

スタッフさん達が一斉に立ち上がって、会議室からいなくなる。これからの時間は自由時間なのだが、寝るにはまだ早いから、このまま会議室で夏休みの宿題をやってもいいかと澤田さんに聞いた。

「いいよ。教科によっては僕も見てあげるから。これでも教育免許持っているからね」

「凄く期待してますよ。それじゃあ、部屋に宿題を取りに行ってきますね」

俺は荷物を取りに部屋に戻った。俺の部屋の前では陽菜ちゃんがいた。

「あの……伊吹君。夏休みの宿題教えて貰ってもいい?」

「別にいいよ。俺これから会議室で宿題やるんだけど、一緒にやらない?」

「いいの?一緒にいても」

「大丈夫。澤田さんも同席してくれるから」

俺が陽菜ちゃんに告げると私も宿題持ってくるって言って走って行った。

「澤田さん、陽菜ちゃんが一緒に勉強したいって言うけどいいよね?」

「いいよ。二人とも学生だからね。で、これが全部かい?」

俺は、デイパックを椅子の下にドサリと置いた。

「そうですよ。この中に入っています。皆より早く休みにしてもらったので、課題をこなすことで日数を貰う事になっているんですよ」

「成程、皆より多いってことか。大変だな」

「そうでもないですよ。普通の学校に比べたら難しいかもしれませんけど」

ふうんって言いながら、澤田さんは俺の課題プリントを捲って見ている。

「これ……簡単じゃないよな?普通に入試問題じゃないか」

「誰も優しいなんて言ってませんよ。それと同時進行で通常の授業の予習もページ数まで決められて出てますから」

「それは……どこまで終わったんだ?」

「現代文は、夏休みに入ってからの講習でプリントを貰うので後日貰うんです。他は規定のページ数は終わりましたよ」

「お前……普段から勉強している?」

「それしていないと授業についてはいけないですよ」

「話には聞いていたけど、本当に厳しいんだな」

「ずっとここにいるのでそういうものだと思っていましたし、外部の大学を受験する人は予備校に通う程度ですよ。内部進学では予備校に行く人は少ないですね」

「運動部もお前がいた吹奏楽部もそこそこ強豪校だもんな。内部進学者が多いのか?」

「自然とそうなりますね。運動部だとスポーツ推薦があるので少し代わりますね。文化部も演劇部とか映像部と美術部はそんなことないですよ。」

俺は、課題プリントを説き始める。各教科も両面びっしりと10枚はあるからかなりの問題量だ。

「これって、夏休み前の課題だよな?」

「そうですよ?夏休みは別にありますよ。こっち」

ドサリと音を立てて無造作にテーブルの上に課題のプリントを置く。こっちは一日一枚ペースで全教科出ているから、ありえない位分厚い量だ。

「さっき言っていた、夏季講習は?参加できないだろう?」

「そうですね。だからその分の課題を休み前の課題を出しに行くと貰えるんですよ」

「はあ……。遊んでいる暇ないよな?」

「無くはないですよ。これ全部自力でやると思っています?」

「まさか?」

「情報は皆で共有するものですよ。仲のいいやつのブログを期間限定でクラス全員と共有して課題が出来た順から答えを公開しているんです」

「それって、いいのか?」

「パスワード制なので他のクラスの人間が見られる状態にはしていません。その位は基本でしょう?この方法にしてから宿題にかける時間が減りましたよ」

「お前達本当に頭いいなあ」

「レポート用紙に書き写すにしても一度は自分で解くんですから。それにこの範囲が全部休み明けの実力テストの範囲にもなっているので、早く解く方がメリットが大きいんですよ」

「成程な。それでどうしても分からない時はどうするんだ?」

「俺達は、近くに住んでいるグループごとに集まって教え合っています。いつもはファミレスなんですが、俺のグループだけは、俺の家に集合って事になりましたよ」

「それなら安全だね。でも、君もふうの庇護下に入る事になるからプライバシーはあんまり気にしないでいいと思うよ」

俺が、楓太さんの庇護下?ああ、アレか雅さんカードかな。

「雅さんですか?」

「そう言う事。お前のお袋さん、マジで弟子だろ?だからだ。安心しろ」

「それじゃあ、これから俺は茶道のお稽古が入るんですか?」

「そのうちな。陽菜ちゃんが来たみたいだ。この話はここまで」

「はい。陽菜ちゃん、開いているところで初めて?俺も宿題が多くて本当に大変なんだ」

陽菜ちゃんはマネージャーと共に入って来た。俺が机に積んである宿題の量にぎょっとしている。

「伊吹君……これが全部?」

「まさか。最初の課題を貰ったら、参加できない夏期講習分の課題を全部貰うんだよ」

「そう……なんだ。陽菜、あんまり宿題の無い学校で良かった」

「普通はそうだね。でも俺達これが普通でやってきたから自分が不幸とは思ってないよ」

俺はそう言うと、のんびりと支度をしている陽菜ちゃんを相手にする事を止めて自分の宿題を始めた。


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