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Pure Pop 俺、アイドルになります  作者: トムトム
アイドル修行編
14/17

CM撮影始めます 1

製品お披露目CMの撮影日。あの後、俺と昴はお互いのオフが合うと待ち合わせて打ち合わせをするようになった。互いのCM打ち合わせで太田さんとかと相談して共通ルートの絵コンテは徐々に複数回のストックが出来る様になってシナリオライターさんとも一緒に打ち合わせをしている。昨日も10時まで打ち合わせをしていて、昴の俺の自宅に泊めて今日は一緒に来ている。

「悪いな。周防」

「別に。俺は楽しかったぜ」

「今度は手ぶらで行かない様にしないとな」

「そんなの気にしていないよ。家の親」

「そっか。俺、転校することになりそうだ」

「高校か?やっぱり遠いか?」

「うーん、これから忙しくなると実家は辛いかなって。幸い系列に通信制があるからそっちに転校手続きして今までの単位を継続する事にした」

「それはいいけど、その後の進路はどうするんだ?」

「大学の演劇科に入りたいから勉強は続けるさ。やっぱり舞台役者に最終的にはなりたいって樹さんを見て思ったからさ」

昴の先輩は樹さんだ。子役からアイドルになった昴と同じ経歴であるその人を目標にしてライバルに見たてるのは当然だと思う。

「今度、樹さんのドラマにチョイ役で共演するんだ」

「ああ、2時間ドラマな。いいじゃないか」

「伊吹のお陰さ。自分のままでアイドルになるっていうのが……俺が忘れていたものだなって気が付いた」

ちょっと前に昴にはその話をした事があった。昴なりに考えるところがあったんだろう。

「引っ越すのか?」

「その予定だけど……あんまりいい物件がなくて」

「俺の家来るか?部屋余っているし」

「そこまで甘えていいのかよ?」

「部屋を余らせて両親も困っているからいいと思うぜ。あの部屋は使う人はいないから」

俺の家には客間の他にいくつか部屋がある。一時期は祖父母と同居していたのだが、その祖父母は海が見える穏やかなケアハウスに引っ越してしまって、部屋が余っているのだ。

「まあ、引っ越しは気に入った物件が見つかってからだからすぐじゃないけどな」

「ん?昴。引っ越すのか?」

「陸」

先に個人のアップシーンを取り終えた陸が俺達の会話に入って来た。

「そのうちな。学校も系列の通信に夏休み明けに転校することにしたし」

「お前の家はちょっと遠いからいいんじゃないか。そうそう、俺年末のドラマのオファーが来るかもしれない」

「良かったな。どんなドラマだ?」

「時代劇。着付けの番組を見たスタッフさんが事務所に連絡をくれたって。できないより出来たがいいみたいだな。ちょっと自分を甘やかしていた。これからは人に見られているって事を意識しないとな」

「そうだな」

「それと、これがデビューって言うけど、商品を出さないヤツだから」

「まあな。煽るだけ煽って当日バーンってヤツだ」

俺と昴はそこのところに大いに絡んでいるから知っているのだが、言う訳にはいかないので黙っている。

「個別ルートの打ち合わせって俺これからなんだけど……どうしたらいい?」

「どうもなにも、思った事を言えばいいだけだよ。高校生らしさが欲しいんだって」

「俺もそう言われたぜ。だから陸が思う男子高校生でいいわけ、不器用キャラもありだぞ」

「ふうん。皆がどんなキャラ設定か聞いてもいいってことか」

「ま、そんな所」

「分かったよ。参考になったぜ」

今後の予定は貰っているから陸はこれでここでの撮影は終了なのだろう。

僕達は今日もこの後、自分達の個別ルートをシナリオライターさんと打ち合わせるのだ。

特に俺は、夏休みの間に纏めて収録するって事で話が決まっている。

「昴は、学校を変わるのなら少しは楽になりそうか?」

「さあな。でも3年で卒業したいから変わらないと思うぜ」

「成程。ほらっ、呼ばれているぜ」

昴の収録が始まると言うので昴は俺から離れて行った。


「伊吹。レッスンはどうだ?」

「彩人。それなりだよ。怒られてばかり」

まあ、それでも前よりは怒られなくなったけど。

「ラストはお前なのか?」

「うん。そのまま個別ルートの打ち合わせを続けてする事になっているから」

「大変だな。でも辛くなさそうだな」

「悩んでも始まらないから、悩む事を辞めたんだ」

悩んで一歩が出ないのなら、一歩を出しながら悩む事にした。

もうすぐでデビューだっていうのに、まだ自分がこのポジションにいていいのかとまだ思う。そんな俺に先輩達はそれを暫くは伊吹の個性にしたらいいんじゃないかってアドバイスをしてくれた。今はその言葉に受け入れて、デビュー後の放送予定のトーク番組の収録等では小出しにしている。

こないだ、楓太さんの国営放送の収録現場を見学させて貰った。普段の仕事も忙しいはずなのに、楓太さんはトランペットのレッスンを暇があるとしているという。見学の時に吹いてくれたジャズナンバーも上手に聞こえた。楓太さんはどんな形でも音楽に関わる仕事をしていたんじゃないかな……そんな風に今は思う。


夏休み直前に3者面談があった。期末テストの方は、仕事との両立のペースが自分なりに取れたのもあって、総合12番だった。実力テストも一夜漬けの部分も多かったけど総合8番に入る事が出来た。内部進学も法学部でも問題はないって言って貰えたが、最初から経済学部を志望している俺だからと先生は強引に話を進めはしなかった。

授業もほとんどないので、学校の好意で課題プリントを期日までに提出したらいいという事で、皆より1週間程早めに夏休みに入る事になった。

CMデビューの18日前、天気はどんよりとしているけどこれから訪れる俺の環境の変化を表しているようだった。


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