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Pure Pop 俺、アイドルになります  作者: トムトム
アイドル修行編
13/17

次の週のCMの打ち合わせは最初の1時間は全員で打ち合わせてその後は残るメンバーとそうじゃないメンバーに分かれた。俺が体調を崩してから1週間。偶々メンバーと顔を合わすことはなかった。

「伊吹大丈夫だったか?」

「悪かったな。学校の行事とかあって疲れていただけだから」

俺を送り届けてくれた雅さんとは疲れがピークだったということにしてある。

「なあんだ。びっくりした。で、学校の方は大丈夫なのか?」

「ああ。文化祭も無事に昨日で終わったしな」

「それって早くないか?6月だろ?」

「それで今週のレッスンで会う事がなかったのか」

「今週は学校を優先させて貰ったから、でも明日はテスト勉強しないといけないんだ」

「なんだよ、それ?」

「文化祭が終わった後は実力テストって決まっているんだ」

「それはまたそれで、ハードなことだ」

「それも慣れたから大したことじゃないよ」

そういえば、メンバーと学校の話をきちんと話した事はない。

けれどもネットでは俺の学校内での状況が漏えいしているらしい。誰だよ、俺の中間テストの点数と順位を流出させた奴。これは事務所から報告を貰って学校に生徒に個人情報の重要性を説いて貰う事にして、個人的に流出者を割り出して警告を出したという。

今回の順位……学年総合15番。今までより少しだけ悪くなっている。内部進学の経済学部志望だから、このままの成績でも問題はない。経済学部のデッドラインは学年総合60番って言われているから問題はない。2年生までは文系も理系もなくて、総合成績順となっている。だから学年順位の上位は少なくても中学の頃から変化はない。

「周防、大丈夫か?」

「大丈夫って、俺法学部志望じゃないし、外部受験もしないから」

「そうだったか?」

「そうだよ。だから俺はこれでも大丈夫。ある意味で実力テストがピンチかも」

「安心しろよ。過去問は入手してあるから後で渡してやる」

部活をやっているとそういうノートとか過去問が出回るからそれを上手く活用すればそれなりの成績は取れる。

「ありがとう、助かるよ」

「お互い様だ。俺に古典を教えてくれよ」

石川はバレー部のエースアタッカーだ。今年のインハイの予選は結構いい所まで残れたらしい。

「そしたら……日曜日の夕方に泊まり道具持って来いよ。火曜日は俺の家から学校に行けばいいだろう?」

「助かる。お前月曜って仕事か?」

「流石にオフにして貰った。その代わり文化祭の準備で分担が終わってからは朝のホームルームだけでて、レッスン漬けの日があったからな」

「そういえば、大道具は最初に準備終了になるからな。いいぜ。当日はどうなってる?」

「金曜日は午前の公演だから午後からレッスンで、土曜は午後の公演だから13時には学校にくるよ」

そんな話を石川と木曜日に電話をしたばかりだ。金曜日の朝には俺の手元には過去問がやって来て、石川には俺の古典のノートがコピーされて渡されている。

「それじゃあ、日曜日な」

と会話をしたのが最後で、そこからはメールで報告が合った位だ。

本部への問い合わせは、お前はどこにいるかばかりだったぞ。俺も教えはしなかったけどな。デビュー前なのに、よく追っかけられるな。そのガッツは俺もあってもいいのかもしれないなと素直に思った。


「こないだのアイデアは全部形にしてみようって話になって今各部署に企画を持ち帰って考えて貰っているから、来週には皆に試作品を見せてあげられるかも」

打ち合わせの最初に太田さんから言われた言葉はそれだった。俺とかが冷凍で運搬したらどうだ?とか、オリジナルほ保冷バッグをつくるのはどうだ?とか言ったアレだ。

「で、今日の打ち合わせは、最初のCM撮影の日程が決まったから皆に集まって貰ったんだ」

そう言って、資料を渡される。全員で収録する日は……俺の学校の期末テストが終わった次の日になっていた。それって、俺の学校が一番遅いって事なのだろうか?

「当日進行等は資料に書いてあるからちゃんと各自把握しておくように。じゃあ全体の打ち合わせは終了ね」

太田さんはあっさりと告げると、俺と奏音だけが残された。他のメンバーはこれからレッスンなのだろう。

俺と奏音はこれからどうなるだろうと二人で顔を見合わせた。

「ごめんね。これからCMの本格的な打ち合わせをしたいんだ」

「本格的な?」

「打ち合わせ?」

俺達は言われている意味が更に分からなくなる。さっき貰ったのが最初のCMじゃないの?

「ごめん、あのCMは発売前に放映されるんだ。収録したらすぐの放送になるんだよ」

今、何か爆弾投下しましたか?この人……呆気にとられて目が点になる。

「先輩、そう言ったら不安になります。ごめんね、この人感覚で生きてるからさ」

「高山、先輩は敬えって教えただろうが?」

「それだけの事を僕にしてくれましたっけ?先輩の尻拭いは結構です。えっとね、皆の新曲のPVも兼ねたカウントダウン用のCMの資料をさっき皆に渡した。これから考えて貰うのは、発売初日からオンエアされるCM。簡単な設定は申し訳ないけど、ふう君と決めてある。それを見て君達がアレンジを加えたいなら加えて貰おうと思ってね」

楓太さん……あなたはどこまで面倒見がいいんですか?

「あっ、これふう君がこんな感じってコンテを作ってくれたのを俺達が肉付けしただけね」

そう言われてゆっくりと作って貰ったコンテを見ていく。それなりに俺達の性格を反映されたキャラクターでいいようだ。けれども少しだけキャラ設定が甘いのは仕方ない様な気がする。

一通り見終わった俺と奏音は顔を見合わせてから同時に頷いた。

「「すみません。少しだけ時間を下さい」」

「いいよ。君たちは想像力がありそうだからお手伝いを頼もうと思って。昴君は人見知りが激しそうだから今回はお休みにして貰ったんだ」

「確かに昴はそうかもしれません」

昴は人懐っこい笑顔を浮かべるのに、中々打ち解けてはくれない。俺たちとの雑談もようやく加わる様になった位だ。

「それじゃあ、ここは暫く二人になるから、何でもいいからアイデア出していいよ」

「はい、分かりました」

そうして俺達は会議室に取り残された。


「伊吹……こないだのどうしたんだ?」

「アレか。怖くなったんだ。アイドルになるって事に」

「成程な。自分なりに解決したか」

「ああ。今の場所に甘えてはいけないけど、今のままでいいって思う事にした」

「それでいいさ。俺さ、子役でやってた時にさ、仕事が来なくなったんだ」

「えっ?」

「声変わりでイメージが変わったって。あの時は辛かったな。事務所もフォローしてくれなくて。籍だけを置いている状態だったんだけど、オーディション見て、ビビッドみたく自然たいなアイドルになれるのならって思って申し込んだのが俺。残りの奴らの経緯は分からなくもないが、俺も本音は分からないが、申し込んだという意思は本気だったと思いたい。あいつ等はお前の事を見下しても馬鹿にもしていないさ。潰れないか心配はしている。プライドが高いから口には出さないけどな」

「そうだったんだ。ずっと俺は素人だしって思われていると思っていた」

「そこは俺から何となく言っておいてやるよ。さて、俺達らしいCMになる様に手を加えますか」

そうして、二人で、あっちだこっちだと言いながら最初のCMの絵コンテに修正を加えていった。

お昼が終わると今度は個別ルートの絵コンテを見せられる。ここも俺たちなりに修正を加えた。今回は初回のCMのシチュエーションは皆同じだ。皆コンビニのアルバイト君のようだ。ただしセリフを言う状況が違う。同じバイト仲間の女の子だったり、常連のOLさんだったり、部活仲間だったり、幼馴染だったり……独り言を呟くと5パターンがあった。メンバーに合いそうなシチュエーションを選んで、名前をあてはめていく。

「伊吹は……どれがいい?」

「そうだな……独り言って面白そうだけど、俺に出来るか自信はないな」

「成程。まだ部活仲間の方がイメージできそうだな。じゃあそっちにするか。俺が独り言にするよ。でもこの後って……俺達が考えるのか?」

「多分……楓太さんがバックにいるって事を考えると。楓太さんにメールしてみる」

俺は、楓太さんにジュレの企画について聞いてみる。暫くすると呆気ない返事が帰って来た。

「俺でも出来たから皆もできるって……奏音……どうする?」

「どうするもこうするも、知ってしまったんだ。今から考えるしかないだろう」

俺達は最初に貰った資料を確認する。えっと……個別ルートは毎月内容が変わる予定ってなっていた。それって君想いマカロンと同じじゃないか。

「奏音……一緒に頑張ろうな」

「そうだな。あいつらより先に知れただけラッキーって思おうな」

アイドルになるという事は、いろんな覚悟をして背負って行く事のようです。

大丈夫か?俺?


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